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【研究リポート】

住まいと暮らしビジネス成長戦略研究会

人口減・高齢化・住宅への価値観の変化など「住まいと暮らし」領域を取り巻く環境は著しく変化しています。強みを明確にし勝ち続けるためのヒントを事例企業より学んで頂きます。
研究リポート2023.03.28

住宅デザインネットワークを構築:サンワカンパニー


 

【第3回の趣旨】
当研究会では、「住まい」というハードに、「暮らし」というソフトを付加し、商品・サービスの価値を高めること、1人の顧客と末永く繋がり続けること、周辺分野への進出、コミュニティーづくりなどを、事例企業から学びながら、業界全体を成長させる【共創】の視点で、業界の継続発展を目指す。
第3回は、住まいと暮らし業界と親和性の高いライフスタイルビジネス研究会との共同開催により、業界を越えて新たな価値創造を学んだ。経営理念を刷新するなど常に変化し続けるサンワカンパニーと、純利益31%増と業績好調のLib Workに自社の強みを発揮する秘訣を学んだ。
開催日時:2023年1月19日、20日(大阪開催)

 
 

 

株式会社サンワカンパニー
取締役副社長  津﨑 宏一 氏

 

はじめに

「くらしを楽しく、美しく。」――。世界の人々の「くらし」で最も必要とされる企業集団を目指すサンワカンパニーは、コロナ禍においても業績を伸ばし続けた。住宅設備メーカーはTOTOやLIXIL、パナソニックなど大手企業が大きなシェアを持つが、サンワカンパニーは「ミニマリズム」や「ワンプライズ」などシンプルなコンセプトとEC事業を武器にその存在感を放つ。2022年9月期には、キッチン・水回り商品を取り扱う業界として初となる、完全無人の「スマートショールーム®」を横浜に出店。上場後は約2.5倍になった売上高は、16期連続で成長し、順調に推移している。進化し続ける住設メーカーの成功の秘訣を学ぶ。

 

業界初の完全無人の横浜のスマートショールーム®。最新アイテムなどをコンパクトに展示している
 


 

まなびのポイント 1:誰でも同一条件同一価格で購入できる「ワンプライス」

 

サンワカンパニーは流通プロセスを簡素化することで、設計事務所やゼネコン、工務店といった建築のプロと、施主である一般消費者に対し、同一条件、同一価格で購入できる「ワンプライス」のビジネスモデルを構築した。従来の流通では、大手商社や代理店などの中間業者が介在するため、流通間で価格差が生じていた。それに伴い、ショールームで商品の価格を正確に伝えられないという問題があった。そこで同社は、メーカーや協力工場から直接仕入れを行うよう流通プロセスを変更。そうすることで、高品質な商品を適正価格で提供でき、ショールームにおいても価格を正確に提示できるという強みを持つことができた。自社開発商品は、国内外の多数のデザイン賞を受賞しており、2018年のミラノサローネ国際家具見本市では、アジア企業初となる「ミラノサローネ・アワード」を受賞するなど、そのデザイン力は世界から高い評価を得ている。

 

流通プロセスの簡素化。高コストの原因となる中間業者を経由せずに直接仕入れる。
 
 

まなびのポイント 2:業界の常識を覆す「ワンプライス」とシナジーするEC事業の強さ

 

EC事業者が増加の一途をたどる今、エンドユーザーにとってサービスの分かり易さは非常に重要な要素となる。2000年にEC事業を始めたサンワカンパニーは、分かりやすい販売価格をサイトに掲載。ここでも「ワンプライス」の強みを活かしている。また、膨大な数のエンドユーザーとの接点を持ちながら、顧客一人一人の意識や行動、ニーズを把握してアプローチをする。コロナ禍によりリアルからオンラインへ顧客接点が変化した中で、販売商品においても変化があった。それまではキッチンが主力の売上比率を占めていたが、2022年は洗面が首位に上り、建具やタイル、収納、壁材などネット販売との相性の良い商品が売上を伸ばしている。EC事業だけでなく、実店舗での顧客体験向上にもさまざまな仕掛けを行い、手数を増やしながら、ユーザーを獲得している。

 

複雑な流通経路を簡素化することにより「ワンプライス」を実現した
 
 

まなびのポイント 3:新体制と同じくして経営理念を刷新。企業集団としての価値判断を。

 

「Change the Values」という経営理念を掲げ、創業時より業界の慣習をくつがえすインターネット販売というビジネスモデルを展開してきた同社。「ワンプライス」のビジネスモデルで、顧客の理想的な空間づくりを支援してきた。しかし、事業規模が拡大していく中で多様化する価値観に対応するためにも、より確固たる企業としての指針を示す必要性を感じ、創業40周年を機に経営理念を刷新した。新たな経営理念は「くらしを楽しく、美しく。」である。経営陣が一から検討して決めたものだ。この経営理念をバリューや行動指針にまで落とし込むことで、「企業集団」として共通した事業選択基準や価値判断基準を持つことができる。経営理念は企業の根である。VUCAの時代を生き延びるには、しっかりとした根の存在が重要である。

 

空間に関わる全ての物やサービスを提供し、世界中の人々の「くらし」を楽しく豊かにしたいという思いを経営理念に込めた

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