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コンサルティングメソッド

コンサルティング メソッド

タナベコンサルティンググループの各分野のプロフェッショナル・コンサルタントが、経営戦略・事業戦略・組織戦略などの経営メソッドを解説・提言します。
コンサルティングメソッド 2024.09.02

企業価値を正しく伝え、ビジョン実現を目指すコミュニケーション

松岡 彩

企業価値を伝えるコミュニケーション実装

 

企業のブランディング施策において、ビジョン(在るべき姿)の実現に向け、企業価値(ブランド価値)をターゲットへいかに正しく伝え、浸透させていくかが重要である。11~16ページの分析、戦略策定を経て、具体的に形にするステップと言える。コミュニケーション実装については、主に社内向けの「インナーコミュニケーション」と、社外向けの「アウターコミュニケーション」の2つに分かれる。

 

また、ブランドの位置付けにより、企業そのもののブランディング活動である「コーポレートコミュニケーション」と、対象サービスブランドのブランディング活動である「サービスコミュニケーション」を行う場合があり、実行すべき施策は異なる。(【図表1】)

 

【図表1】ブランドコミュニケーションの施策

出所 : タナベコンサルティング戦略総合研究所作成

 

本稿では、インナーコミュニケーションによる価値創造プロセスと、ブランド構築のためのアウターコミュニケーションについて解説する。

 

 

インナーコミュニケーションによる価値創造プロセス

 

アウターコミュニケーション施策に意識が向きがちな企業が多いが、まずは、ブランドの根幹を支えるインナーコミュニケーションを進め、ある程度社内にブランド価値が浸透した段階でアウターコミュニケーション施策を進めるのが理想である。

 

ブランド価値が社内に浸透しないうちに、社外にコミュニケーションを行っても一貫性がなく、ブランドイメージにギャップが生まれる可能性が高い。まずは、社員一人一人に対する自社のブランド価値の統一が重要だ。

 

インナーコミュニケーション施策においては、【図表2】のように、認知・理解・共感・実践・評価・定着の流れで進めていただきたい。

 

【図表2】インナーコミュニケーション施策の流れ

出所 : タナベコンサルティング戦略総合研究所作成

 

帰属意識や愛着心の醸成、モチベーションを向上させる活動が不可欠であり、社内の心理・行動面の変容に見合う施策を実行する。

 

認知・理解フェーズでは、目指すべきブランドビジョンを社内全体に知ってもらうことが最優先事項であり、頭の中で理解する状態をつくる。主な施策として、ブランディング動画の公開、研修会などが挙げられる。

 

共感・実践フェーズでは、ブランドブックや社内報、社内ワークショップを通じて経営層の思いやメッセージを発信し、“心から”の理解、共感へのステップを踏めるよう、ブランドとして在るべき姿を自分事化させ社内イントラネットなどで行動を見える化する仕組みづくりが重要だ。最終的には定着を目指して、社員自らの宣言や行動に移すことで互いに認め合う風土づくり、目指すべきブランドの在るべき姿を体質化させる。

 

この取り組みをサステナブルに実行し、人事評価制度と連動させたインセンティブ評価や、表彰制度、コンテストなどを通して、社員にとっても誇らしく、自ら能動的に取り組みが生まれる活動を目指していただきたい。

 

 

ブランド構築のためのアウターコミュニケーション

 

アウターコミュニケーションは、一般的に社外のステークホルダーに対する自社ブランドの訴求活動である。ブランディングとは、「相手に独自のイメージを持ってもらう活動」であり、具体的な手段がコミュニケーション施策に落とし込まれる。

 

インナーコミュニケーションが、「イメージを持ってもらうための準備活動」であるとすれば、アウターコミュニケーションは、「社外に対して社内で準備したイメージを持ってもらう活動」であり、その本質は、「自社とステークホルダーの双方が思い描くブランドイメージを一致させる活動」だ。目的のフェーズに応じた双方向のコミュニケーション施策が非常に重要である。

 

ブランド価値はタッチポイントで醸成されるため、一貫性のあるブランド体験を実行する必要がある。そして、ブランドビジョン実現に向け、策定したアクションプランに基づき、コミュニケーション施策を遂行する。施策は、ブランドを想起させるロゴの策定から、ウェブサイト作成、広告運用、PR、イベント運営など多岐にわたる。

 

施策を社外に向けて実行することで、ターゲットに対して独自のブランドイメージ・ポジションを形成できる。そして、施策に明確な目的と役割を持たせることで、より効果が高まる。

 

例えば、まずはブランドを広く知ってもらう認知拡大ということであれば、広告運用やPR施策を優先し、リピーターやファンを育成するということであれば、SNS活用やイベント運営などを行う。

 

インナーコミュニケーションにおいては、アンケートなどを通じて自社のブランド理解・浸透・自分事化のレベルを確認し、常に状況を把握した上で、浸透施策を打つことが重要である。アウターコミュニケーションにおいては、常にブランドの位置付けなどを見直しながら、ターゲットとの双方向コミュニケーションによるイメージの一致活動を行う。いずれにしても、アップデートを繰り返しながら企業価値向上を図ることが重要である。

 

 

PROFILE
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松岡 彩
Aya Matsuoka
タナベコンサルティング ブランド&PR 執行役員

外資系ラグジュアリーブランド、化粧品業界、飲料・食品業界、教育出版業界、出版業界、コーヒーショップ、ペットショップなど多岐にわたる大手企業のセールスプロモーション支援に従事。ブランドストーリーに沿ったデザインによるオリジナルのプレミアムグッズ制作を得意とし、企業の売り上げ促進やファンづくりに貢献している。