組織変革の進め方
vol.15で述べたように、組織変革や良い社風づくりは、プロ役員の仕事です。ここでは組織変革の進め方について解説していきます。
組織変革を行うには、プロジェクトによる推進が効果的です。
組織の課題抽出や改善策の立案においては、各部門の利害(既得権)が働くことに加え、もともと人は変化を嫌う傾向があるため、役員と人事部門だけでは調整に難航し対策が行き詰まるか、声の大きい役員の意向が強く反映されてしまう可能性が高いものです。
部門間の利害を考慮せずに改革案を立案するためには、異なる部門から集めたプロジェクトメンバーに、外部の専門家などを加えたプロジェクトチームを結成することも1つの方法です。
プロジェクトの役割は、現状の組織を分析し、戦略推進に適した新組織の形を考案することです。現組織の問題点を改善する新組織とするため、全社から情報を収集できる権限を、プロジェクトに与える必要があります。
組織変革は次の手順で進めます。いくつかのステップを踏み、6カ月から1年をかけての移行となります。移行後には再び課題の整理と調整を行います。
チームビルディングの技術
ファーストコールカンパニーは「顧客価値を追求するチーム」を持たなければなりません。その上で「自由闊達に顧客価値を追求するチームをいかに築くか」、その技術が求められます。これが「チームビルディング」です。
チームビルディングで重要なことは、年齢や役職に関係なく、生かしたい優秀な人材を思い浮かべ、評価し、彼らを中核としたチームをつくることです。
「組織内にいる優秀そうな人材」「自社で最高の人材」という観点でチームを編成してから、実施事項を決めてもよいでしょう。現有戦力で最高のパフォーマンスを発揮できるチームビルディングを優先するのです。戦略は「何をやるのか」と同じくらいに「誰がやるのか」が大切です。
中堅・中小企業組織の弱点の1つに、取締役会や経営企画室といった戦略・経営機能が不十分であることが挙げられます。組織のチームビルディングを「経営諮問機関」と位置付け、ビジョンや新規事業の推進・実現、経営課題を解決できるチームへと育てる継続力が必要となります。
「多様性」で組織を斜めに切る
チームビルディングは次の条件に従って行われるべきです。
1.できる人、やりたい人を優先して集める
2.何をやるのか以上に、「誰をリーダーにするか」を中心に資源配分する
3.多様性を重視し、異なる経験や立場の人を集める
4.階層や部門のバラつきを意図(意識)した3 名以上でチームを編成する
5.顧客価値に対する提供価値(ブランド)の原則を決めると同時に、チームがやらないこと(トレードオフ)も決めておく
MBA(経営学修士)の取得を目指すビジネススクールの価値は、入社1年目の社会人や社長経験者が一緒に学び、研究する多様性にあります。戦略やマネジメントを学ぶタイミングは、年齢や経験ではなく、その人のセンスや思いで決まります。この多様性の創造をタナベ経営は「組織を斜めに切るチームビルディング」と呼んでいます。
以上を踏まえ、自社の組織をもう一度眺め、チーム編成の概念を見直してみてはいかがでしょうか。