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【特集】

グループ経営システム

M&Aや分社化などを戦略的に進める企業が増える中、形成した企業グループの経営をどのように進めるかが大きな経営課題となっている。グループシナジーを発揮し、効果的なマネジメントシステムやガバナンスを構築するメソッドを提言する。
メソッド2021.08.02

今なぜ、成長を実現するグループ経営を目指すべきなのか:福元 章士

構築すべき経営システム

 

グループ利益を最大化するためには、どのような体制が整っていないといけないのだろうか。タナベ経営では、グループシナジーの発揮を支える経営システム構築を提言している。

 

経営システム構築を考える上で大切なことは、5つのテーマを機能させ、経営のPDCAサイクルを回すことにある。5つのテーマとPDCAサイクルは【図表3】の通りである。

 

【図表3】グループシナジー発揮を支える経営システム

出所:タナベ経営作成

 

まず大切なのは、グループが向かう方向性を合わせることである。次に挙げる5つのテーマに沿って、あるべきグループ経営を実現させる。目指すべきグループ経営とは、この5テーマがしっかりと確立している経営体制である。

 

〈目指すべきグループ経営〉

 

①グループ経営としての共通した価値判断基準が存在している

 

②各事業会社よりグループ全体の最適化を優先する(シナジー・事業ポートフォリオによる全体最適化)

 

③グループ本社によるグループ全体におけるガバナンス構造

 

④グループ本社によるグループ全体のマネジメントシステム

 

⑤グループのオペレーションコストを最小化する仕組み

 

 

【図表4】目指すべきグループ経営

出所:タナベ経営作成

 

 

5つのテーマを機能させ、経営のPDCAサイクルを回す

 

1つ目のテーマは、「グループ理念の確立」である。各事業会社の事業理念などはすでに存在している場合が多いが、グループとしてのミッション、ビジョン、バリュー(価値観)を明確にする必要がある。また、そのグループアイデンティティーを策定するだけではなく、社内外にどのように発信し、浸透させるかも決めることが大切である。

 

2つ目のテーマは、グループ企業価値(シナジーとポートフォリオ)の最大化を実現する戦略・方針・計画を立案する「グループ経営企画機能」の設計である。具体的には、グループビジョンマネジメント、事業ポートフォリオ(資源配分)の決定、グループ事業計画(予算)の策定、グループブランディングをどのように実施・運用していくかのルールを設計し、仕組みを構築することである。

 

3つ目のテーマは、グループとしてのルール・意思決定プロセス・権限と責任を明確化する「グループガバナンス機能」の設計である。

 

具体的には、ホールディングカンパニーとグループ企業(事業会社)のどちらにどこまでの責任と権限を持たせるのか、その意思決定プロセスをどうするのか、会議体も含めて設計する。それ以外にも、コンプライアンス、リスク管理や事業会社の監査制度なども含めたグループ諸規定の整備が必要である。

 

4つ目は、グループ全体を管理・評価するマネジメントシステムで、特に事業会社の業績向上を実現する「グループマネジメント機能」の設計である。

 

具体的には、グループ管理会計システム、グループ業績マネジメント、グループ人材マネジメント、グループCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)の設計である。仕組み自体の構築になるが、この部分はどこまでシステム化するかも見据えた設計が不可欠だ。

 

5つ目は、共通オペレーションの集中処理を実現する「シェアードサービス機能」の設計である。グループ全体におけるオペレーション業務の集中化と効率化が目的だが、当然事業会社で実施したほうが良い業務もあり、一概に全てを集中化する必要はない。どこまでの業務をホールディングカンパニーが実施するかを判断する。一般的には財務会計、財務、債権回収管理、労務管理、給料関係、ITインフラなどを集中化することが多い。

 

 

あるべきグループ経営実現のために

 

グループ経営における「グループシナジーの最大化」を考える上で大切なことは、「事業部門における戦略立案・人事施策・財務施策などに、コーポレート部門がどこまで関与し、『求心力』を発揮するのか?」、もしくは「事業部門に大きく自由度を与え、『遠心力』を効かせるのか?」というさじ加減を規定していくことである。

 

このバランスを考えるフレームワークとして、【図表5】を参考にしていただきたい。縦軸で「コーポレート部門の求心力の強さ」、横軸で「事業同士の関連性の高さ」を表し、ともに「強い(高い)」ポジションである左下部分ほど、事業間シナジーが発揮されることを示す。【図表5】を基に、自社のコーポレート部門の求心力と事業同士の関連性から、事業とグループ各社がどこにプロットされ、どの方向を目指すのかを検討していくと良いだろう。

 

 

【図表5】グループシナジー最大化のためのフレームワーク

出所:タナベ経営作成

 

 

 

今後、企業の組織再編に伴う分社化やM&Aの増加により、グループ全体での企業経営が求められる。グループ経営の実現に向け、前述した5つのテーマを、全体の整合性を取りながら、スケジュールに沿って確実に推進していくことである。その意味では、部門横断での推進体制の確保が不可欠であり、全社での取り組みと協力が必要となる。

 

 

グループ経営の課題へトータルに対応

 

優先順位の高い経営課題とそれに対するソリューション、そしてソリューションを実現するタナベ経営のメソッドを【図表6】に記載する。タナベ経営は、グループ経営に関する課題へトータルに対応できるメソッドをそろえている。本特集では、グループ経営システム構築コンサルティングに関して、オタフクホールディングスとコジマホールディングスの事例を掲載した。自社の今後の成長戦略の参考にしていただきたい。

 

 

【図表6】タナベ経営のグループ経営メソッド

出所:タナベ経営作成

 

 

今なぜ、成長を実現するグループ経営を目指すべきなのか:福元 章士

 

 

グループ経営システム構築コンサルティング

グループ共通の価値判断基準に沿ったビジョンマネジメントシステムを確立し、経営機能全体のバランスを考慮した経営インフラを構築します。

 

 

 

 

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Profile
福元 章士Shoji Fukumoto
タナベ経営 執行役員 経営コンサルティング本部 ファンクションコンサルティング大阪本部長、グループ経営システム構築コンサルティング ブランドマネージャー。2007年タナベ経営入社。2020年執行役員ファンクションコンサルティング大阪本部長。収益・財務戦略を専門分野として、建設・住宅・小売・自動車部品製造業など幅広い業界でコンサルティングを展開。中堅・中小企業において、企業再生、事業承継、組織再編などを手掛けた経験を持つ。モットーは「現場で把握する“生きた数字"の背景を理解し物事を考えること」「1社でも多く企業の成長を誠心誠意サポートすること」。
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