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研究リポート
物流経営研究会
”物流は世の中を支えている”にもかかわらず、他業種と比較して長時間労働、低賃金です。第7期は高収益ビジネスモデル、人財確保・デジタル化への取組を全6社と参加企業から学びます。
研究リポート 2024.10.16

2024年を「物流革新元年」に 国土交通省 物流・自動車局 物流政策課

【第1回の趣旨】
物流は世の中を支える社会インフラにも関わらず、位置づけが高まらないことで、物流事業従事者の不足により“運べなくなる”と取り上げられている。さらに、カーボンニュートラルへの対応・自然災害を含めたBCP対応・原料高騰などの経営課題の解決にも、物流は大きく関わっている。しかし、物流機能・物流事業者のみでは単独改善に限界がある。そのため、物的流通 < ロジスティクス < サプライチェーンと視点を拡げ、着荷主を含む荷主や荷主も一緒になって、それぞれの立場で担うべき役割を再考し、過去からの商慣習を見直すことが、持続可能な物流の実現に必要不可欠である。
第9期物流経営研究会は「サプライチェーン最適化を支援しよう~商習慣の見直しは“待ったなし”~」をテーマに、視察企業や講義を元に“ビジネスモデルの変革”に対するヒントを提供する。また、“デジタル化”“環境対応”“採用”“育成”などの課題に対する解決の糸口になるよう参加企業の皆様が学び、高め合う場としている。
第1回は国土交通省様より改正物流法の内容を含めた最近の物流施策の概要、NX総合研究所様より実際の海外事例を用いた日本の物流が抱える本質的課題についてご講演いただいた。

開催日時:2024年9月26・27日(大阪開催)

国土交通省物流・自動車局 物流政策課 宮沢 由香合 氏

国土交通省物流・自動車局 物流政策課
宮沢 由香合 氏

 

 

はじめに

 

国土交通省 物流・自動車局 物流政策課は物流分野の基本政策の企画・立案や政策の実施を行っている。

 

2024年5月に公布された改正物流法においては 、物流の持続的成長を図るため、荷主・物流事業者に対する規制的措置及びトラック事業者の取引に対する規制的措置が設けられるとともに、軽トラック事業者に対する規制的措置が定められた 。

 

加えて、トラックGメンによる悪質な荷主・元請事業者への監視・指導、①荷主等への適正な転嫁(運賃引上げ、荷待ち・荷役等の対価の水準提示等)②多重下請構造の是正等(「下請け手数料」の設定等)③多様な運賃・料金設定等(「個建運賃」の設定等)の標準的運賃の見直し等も行っている。

 

今回は改正物流法の内容を含めた最近の物流施策の概要についてご講演いただいた。

 

国土交通省講演資料 物流危機に対して問題意識をもつ事業者、物流危機対策の取り組みを実施する事業者
問題意識を持っている企業に対して対象の部門を聞き取りした結果
問題意識を持っている企業に対して対象の部門を聞き取りした結果

出所:講演資料

 


 

まなびのポイント1:物流危機に対する問題意識は業界でバラつきが見られる

 

1,707社(製造業438社/運輸業876社/卸・小売業208社/その他185社)へ物流危機に対する問題意識についてアンケートを行った結果、各業界7割以上が物流危機に問題意識を持つが、取り組みを推進できている割合は低い結果となった。

 

また、運輸業は他業界に比べ最多の9割が問題意識を持つ一方、製造業・卸小売業では問題意識を持つ割合は7割程度、取り組みを推進する割合は4~5割にとどまり、特に卸小売では割合が低い(取り組みを推進するのは4割のみ)。さらに物流部では問題意識が高い一方、人事、総務、経営企画などの管理・企画部門をはじめとする他の部門は認識が低いなど、同一企業の中でも部門により認識のバラつきが見られる。

 

物流危機に対して具体的な対応を行わなかった場合、2024年度には輸送能力が約14%(4億トン相当)、2030年度には輸送能力が約34%(9億トン相当)不足する可能性が指摘されている中、業界の垣根を越えて対応を進めていかなければならない。

 

国土交通省物流・自動車局 物流政策課 宮沢由香合氏
国土交通省物流・自動車局 物流政策課 宮沢由香合氏

 

 

まなびのポイント2:改正物流法による荷主-物流事業者間の商習慣の見直し

 

改正物流法では、荷主、物流事業者に対し、物流効率化のために取り組むべき措置について努力義務を課し、当該措置について国が判断基準を策定。さらに一定規模以上の事業者(特定事業者)に対しては中長期計画の作成や定期報告等を義務付け、不十分な場合、国が勧告・命令を実施。特定事業者のうち荷主には物流統括管理者の選任を義務付けた。

 

また、運送契約の締結等に際して、提供する役務の内容やその対価等について記載した書面交付等の義務付けや元請事業者に対し、実運送事業者の名称等を記載した実運送体制管理簿の作成を義務付け等、物流業界の多重下請構造の是正、実運送事業者の適正運賃収受を図っている。

 

荷主・物流事業者に対する規制的措置

出所:講演資料

 

まなびのポイント3:「標準化」が物流危機の突破口に

 

パレットにおいては業界単位あるいは同一業界内においてさまざまなサイズ・仕様の物が使用されている状況である。それにより、トラック等への積載効率および倉庫での保管効率の低下、積み替え作業の発生、自動化機器の導入阻害、着荷主側での管理コストの増加等が生じている。

 

パレット以外にも伝票や外装、データの標準化を進めていき、物流の効率化に向けた荷主・物流事業者等の関係者の連携・協働を円滑化するための環境整備をすることが重要である。

 

「標準化」が物流危機の突破口に

出所:講演資料