【第5回の趣旨】
当研究会の今期のテーマは「-ライフスタイルカンパニー100社の創造-10年後のビジネスモデルをデザインしよう」である。第5回は「新規事業開発への挑戦」を研究するため、3社のゲストにご講演いただいた。社会や顧客の変化をいち早くキャッチアップし、自社の成長のために組織に取り入れるとともに、新規事業開発への投資を積極的に行い続ける3社のゲスト研究を通じて、取り組むべき3点のテーマを掘り下げた。
開催日時:2024年5月24日(大阪開催)
代表取締役 坂梨 亜里咲 氏
はじめに
mederiは代表の坂梨氏が自身の経験から起業したスタートアップ企業である。女性が抱える健康の課題をテクノロジーで解決できる商品(製品)やサービスを提供するフェムテック市場(Female(女性)+Technology(テクノロジー))へ参入し、現在は5期目を迎えた。
立ち上げ以降、順風満帆に成長してきたわけではなく、さまざまな失敗を繰り返しながら現在に至っている。今回は過去の経験も踏まえて新規事業開発における提供価値設計のポイントを講演いただいた。
坂梨氏講演の様子
まなびのポイント1:圧倒的な熱量を持った責任者の必要性
新規事業開発において最も重要なのは圧倒的な熱量を持ち続けられる責任者がいるか否かである。なぜこの事業を手掛けるのかというビジョンを常に訴え続け、ブレずに前に進むことができるか、スピーディーにPDCAを回していくことができるか― ― 。
責任者は経営者でも事業責任者でも構わないが、責任者はこの新規事業に関わるステークホルダーが全てWinになるかを考えなければいけない。関わる人全てにメリットがなければ、各人がモチベーション高く価値を提供し続けられないからだ。これは、新規事業開発の前提条件だと言えよう。
出所:講演資料「mederi 新規事業開発における提供価値設計のポイントとは」より
まなびのポイント2:PMF期間を設けてスモールスタートする
「良いサービスなので、必ず競合他社に勝てる」と思っていても、顧客へ価値を十分に伝えられず失敗することは少なくない。新規事業を始める際は、本格的にスタートする前に半年間ほどユーザーの行動をテストマーケティングし、新規事業の実現可能性をチェックする必要があるだろう。
坂梨氏は事業開始後3カ月間、ピル代・診療代を0円にすることでユーザーの反応を確認したという。また、「スピーディーな価値提供で顧客の感動が生まれる」という考えのもと、他社よりも早く商品が届くように工夫を凝らし、この特性で差別化に成功した。
出所:講演資料「mederi 新規事業開発における提供価値設計のポイントとは」より
まなびのポイント3:後発サービスでもプロモーション次第で勝てるチャンスはある。ビジネスモデルを決め付けない
同社はサービス体験やサービスの質で他社と差別化を図ることを目的に、プロモーションはターゲット毎にメッセージを変えることを重要視している。また、お金をかけないプロモーションによってユーザー数及び認知度アップを図っている。
今後の展開としては、オンライン診療で出来る領域をさらに増やす(FemtechからHealth Techへと広げる)予定だ。mederiピルのような成功モデルから新たな新規事業を常に考え、開発し続けていくことが次の新たな価値提供へとつながる。