【第3回の趣旨】
当研究会では、報道する立場であるメディア目線からクロスメディア時代の経営モデルに不可欠な本質的価値と最先端事例を学び、メディア・ステークホルダーを戦略的に動かして物やサービスを売る方法や、自社の魅力を最大限に発信する広報・PRのメソッドを提供する。
第3回は、「全国レベルで第一想起ブランドへ成長した地方企業のPRとは」と題して、ゲスト2社(オタフクホールディングス様・三島食品様)からPR・広報について講演。地方に愛される企業の戦略構築について深く考察した。
開催日時:2024年6月28日(広島開催)
広報兼直販事業マネージャー 佐伯 俊彦 氏
はじめに
三島食品は「楠」をシンボルマークに掲げ、互いを支え合いながらともに喜べるようなヒューマンリレーションシップを目指して事業展開を行っている。現在は、同社の代表的商品であるふりかけ「ゆかり」シリーズのボトルパッケージをオリジナルデザインで印刷できる敬老の日限定キャンペーンを行ったりなど、さまざまな施策を実施している。また、直近では夏休み親子食育工場見学ツアーを行うなど、顧客と社員の良好な関係性を一番に考えて価値提供を続けている。
今回は、食品メーカーにおける広報・PRの取り組みと戦略について、広報兼直販事業マネージャーの佐伯俊彦氏よりご講演いただいた。
まなびのポイント1:時代の変遷に伴うコミュニケーション戦術の変化
これまで、広告を用いて企業が一方的に自社の情報を発信し、消費者はその情報やサービスを受けるだけにとどまり、サービスの提供から提供後の消費者の反応は企業に届きにくかった。
しかし、昨今のデジタル化に伴うSNSの普及により、消費者は企業の情報やサービスに関する反応をリアルタイムでSNSに発信するようになった。その結果、企業がSNSに発信された消費者の声を確認することにより、消費者と企業は双方による発信のもとコミュニケーションが取れる時代に突入した。
同社では、そういった消費者のリアルな声を最も大切にしており、その声から生まれたサービスや商品がさらに消費者の発信を促すというサイクルを生んでいる。
マーケティングフレームワークの変化
まなびのポイント2:広告宣伝費をかけない広報戦略
⑴広告費をかけない理由(創業者の思い)
同社創業者の三島哲男氏は、消費者の声を最も大切にしており、「その声は実際に消費者の手元に渡る商品に反映させるべきだ」という思いは、現在でも同社に引き継がれている。「消費者の声が最大限に反映された商品は勝手に知れ渡っていく」という考えのもと、商品開発に投資するため、広告宣伝費は最小限に抑えている。
⑵オリジナリティが生むパブリシティ
パブリシティ化に最も重要な要素は消費者の感動であり、消費者の期待を上回ることである。「人は初めて見るものに共感と感動を抱く」という考えのもと、どのような企画においても二番煎じにならないよう、先駆者を目指して日々知恵を出し合い内容を設計している。
パブリシティ化の流れ
まなびのポイント3:「感動」を生んだコミュニケーション事例
⑴敬老の日キャンペーン
「ゆかり=縁」というテーマのもと、ボトルにオリジナルデザインを反映できるキャンペーンを展開した。送り主と受け取り主の関係を強固にしたほか、通常であればゴミになるボトルが特別な贈り物(宝物)に変化する新しい企画だった。結果として、サーバーがダウンするほどの大反響を呼び各種メディアにも取り上げられた。
⑵24時間緊急キャンペーン
新商品は、リリースを出してから消費者の手元に届くまで約1カ月の時間差が生まれる。その間に消費者の興味関心が薄れてしまうと考えた結果、当たれば新商品が店頭に並ぶ前に届くという抽選キャンぺーンを実施した。応募から24時間以内に結果が分かるシステムにしたことで、数多くの応募が集まるキャンペーンとなった。