【第3回の趣旨】
『成長M&A』実践研究会では、M&Aのモデルを確立している企業から独自のM&Aノウハウと業種の特徴を取り入れた事例を学ぶ場を提供。M&Aを活用した成長戦略を実現し、自社の企業価値を向上させるための道しるべを提示する。
第3回のテーマは「財務戦略」。ゲスト2社(株式会社エミヤホールディングス様、株式会社クロスティホールディングス様)による「M&A戦略」についての講演を配信。M&Aを積極的に推進する企業の戦略構築について深く考察した。
開催日時:2024年6月20日~21日(北海道開催)
代表取締役社長 三神 司 氏
はじめに
株式会社エミヤホールディングスは、1926年に「エミヤ菓子店」として創業後、1946年に電気設備資材販売へ事業転換を行い、翌1947年「株式会社エミヤ商会」を設立。その後、1991年に「株式会社エミヤ」に社名変更を行い、2020年「株式会社エミヤホールディングス」に社名変更を行って生まれた持株会社である。
創業98年、電材創業としては78年になり、現在は「電気設備資材(電材)の卸売、電気工事、住宅リフォーム他」「介護事業」の2本立ての事業構成となる。
グループ年商は100億円を超えており、「ビジョン2030 ~2030年に向けた企業価値の追求~」を全社員一丸となり目指している企業である。
まなびのポイント1:ホールディングス体制からのM&A戦略のポイント
同社のビジョン2030には、エミヤグループの永続発展へ向けて下記を明記している。
1.企業は社会の公器である
(社員、関係する企業、地域社会と共に永続発展することが使命である)
2.企業の永続発展の条件
企業価値の追求(必要とされる企業のみが生き残れる)
経営者の円滑な承継(社長の候補者は社員。社員が引き継ぐ組織にする)
株主の円滑な承継(社員が参画する組織にする)
上記を実現するため2020年、ホールディング経営に移行し、次の2点を実行している。
(1)会社を分割し顧客密着の組織で企業価値を追求する。同時に経営者の育成を図る。
(2)資本(株主)と経営を分離(同族株式の整理と役員持株会・社員持株会を発足)
企業価値、地域社会とともに永続発展するためにM&Aを実施(グループ内、事業の確立)し、経営人材育成を図ることで経営人材の強化を実現している。
まなびのポイント2:事例を通じて感じたM&Aのポイント
講演では複数のM&A事例についてお話いただいた。その中でも三神社長がM&Aを実施された際に気づかれたポイントは下記の通りだ。
1.どの会社も困っているのは「人」:幹部社員、採用、特に後継経営者。
2.PMIで困るのも「人」:当社内部幹部・人員の不足、ノウハウ不足。
事前に先方人材に関するDDができない点は譲受企業は注意しなければならない。
3.譲渡企業は、お金(株式の処理)にも困っている。
4.譲受企業は親身になること
(1)トップ面談では目線を合わせる。
(2)買い取る側と買われる側という差を埋めてあげないといけない。
(3)社員は「家族」ではなく「仲間」。グループも「仲間」と考えている。
5.嘘は言わない
(1)当社にできることは堂々と。
(2)できないことはできないとはっきり言う。
6.資金:突発的な投資については、じっくり検討して進める。
7.M&A戦略どおりに進まないことも多い
望むジャンルの業種・業界の譲渡案件が常にあるわけではない。
戦略上のシナジー以外にも、譲渡側企業に自社のビジョンに関心を持ってもらい、ご一緒に目指せる仲間になれるかが、M&A成功の非常に大きなポイントとなる。