メインビジュアルの画像
モデル企業
モデル企業
【企業事例】優れた経営戦略を実践する企業の成功ストーリーを紹介します。
モデル企業 2025.05.30

循環型の価値創造モデルで14期連続増収するエフピコ エフピコ

 

「現場主義」と「顧客第一主義」で安定供給や開発を強化

 

生鮮食料品や総菜・弁当などに使われる食品トレー容器の製造・販売を手掛けるエフピコ。スーパーマーケットやコンビニエンスストアで使用される食品用トレーの国内シェア約30%を占める業界トップメーカーとして圧倒的な存在感を示す企業だ。創業以来62年間、赤字を出したことがなく、売上高は1980年に100億円、2000年に1000億円を突破。2024年3月期は2221億円と、14期連続で過去最高を更新し、継続的な成長を続けている。

同社の設立は1962年。広島県福山市霞町に福山パール紙工として設立し、PSP(発泡スチレンシート)成形加工を開始した。1980年代には物流網を整備し、1985年に関東工場を作って一貫生産体制を確立。1989年にエフピコへと社名変更した。

全国の市町村でトレー容器のごみ処理問題が大きな社会的課題となった1980年代、同社はいち早く使用済みトレーの回収を開始。1990年には使用済み食品容器を回収・再生する「エフピコ方式リサイクル」をスタートした。1991年には再生食品容器で初めて日本環境協会から「エコマーク表示」の認定を取得。全国に配送センターを拡充し、1992年にはリサイクル製品「エコトレー®」の販売を開始した。

2000年に「エコトレー®」、2004年に「トレーtoトレー®」を商標登録。2010年代にはPETリサイクル技術を強化し、2011年にFDA(アメリカ食品医薬品局)認証を取得した。さらに、2014年には西日本ペットボトルリサイクルを子会社化し、循環型ビジネスを拡大した。

2022年にはマレーシア企業に出資するなど海外展開を加速。2023年には、関西圏の大型拠点「関西工場・関西ハブセンター」の設立により安定供給の強化を図り、物流の「2024年問題(トラックドライバーの時間外労働上限規制によって生じる物流の停滞や輸送力不足などの諸問題)」へのスムーズな対応につなげた。

同社は常に食文化・食生活の変化を先取りし、高品質な製品・サービスを提供。「現場主義」と「顧客第一主義」を徹底し、「もっとも高品質で環境に配慮した製品」を「どこよりも競争力のある価格」で「必要なときに確実にお届けする」という基本姿勢を掲げ、追求し続けている。

エフピコの強みの一つは、約1万2000種類の圧倒的な製品ラインナップだ。顧客ニーズを形にする製品開発力で、年間約1500アイテムの新製品開発を実現している。例えば、プラスチック使用量の削減ニーズが高まる中、エフピコは約60%の軽量化を実現する「低発泡PSP素材」を使った製品を新開発。これにより、従来は不可能とされてきたシャープな形状を実現した。これまでに培ってきた成形技術により、容器のリブ(凹み)の形や位置を工夫し、薄肉化と強度を両立させている。

製品開発の中枢であり、開発力の源泉となっているのが「エフピコ総合研究所」である。2014年、容器の製造と販売のさらなる発展を遂げるための拠点として、福山本社の正面に竣工した。金型の設計を担う製品開発部や素材開発を担う基礎技術研究室をはじめ、生産技術部、品質管理部、品質保証部など、製品開発を担う部門が一体となっていることが特長だ。ささいな相談でもすぐに集まって話ができるなど、日々の密な情報共有によって開発スピードを上げている。総合研究所の4階は全て人材育成のための施設となっており、ものづくりを推進する人づくりの拠点としての役割も果たしている。

エフピコの基礎技術研究室では、研究者たちが新たな素材の開発に取り組んでいる。中でも、2024年に開発した新素材「耐寒PPiP-タルク」は耐寒性に優れており、需要が増す冷凍市場に対応できる製品として高く評価されている。

2024年4月に発表した世界初の超高剛性2軸延伸ポリプロピレンシートの開発も、エフピコ総合研究所から生まれた。基礎技術研究室の合言葉は「技術の前では皆、平等」。年齢・経験を問わず、研究室の誰もが自由に意見を言い合える環境で、エフピコにしかつくれないオリジナル素材を研究・開発している。

 

環境対応型製造業のモデルケースとして

 

食品トレーは1枚数円という薄利多売の製品であるにもかかわらず、エフピコの2024年3月期の連結売上高は前期比5.1%増の2221億円、経常利益は167億8000万円、売上高経常利益率7.6%と堅調だ。

この高収益を支えているのは、材料調達から生産、配送までの全てで無駄を省く、エフピコ独自のサプライチェーン全体での効率化だ(【図表】)。販売計画と在庫量を基に、どの製品を、どのタイミングで、どこの工場でどれくらい製造し、どこの配送センターへ運ぶかなどの計画策定と実行指示を行っている。さらに、その実績を検証・分析。近年では、需要や天候などのAI予測も活用して在庫水準を下げ、さらなる生産・物流の効率化を図っている。

 

【図表】価値を創造し続けるエフピコのバリューチェーン

出所 : エフピコ『エフピコレポート2024』よりタナベコンサルティング戦略総合研究所作成

 

また、持続的な成長に必要な最大の資産は人材であると考える同社は、人材育成にも力を入れている。働きやすい会社や働きがいのある会社といった「いい会社」を目指し、組織の整備を図りながら、全ての社員がそれぞれの人生を豊かにできるよう、さまざまなプログラムを実施。そのほか、人材の採用から教育、活用、そして退職に至るまで、一人一人が個性を発揮できる「人づくり」の仕組みの強化を通じて、やりがいと充実感ある職業人生の実現と組織のいっそうの活性化を推進し、企業グループ全体の価値向上を目指すという。

顧客の声に耳を傾け、「いい会社」にするために社員が自ら行動していくことで、さらなる成長を目指すエフピコ。食品トレー・容器の製造、販売やリサイクルなど一連の事業がつながるバリューチェーンを通じた価値創造は、中堅企業の枠を超え、環境対応型製造業の新しいモデルケースとして期待される。

 

(株)エフピコ

  • 所在地 : 広島県福山市曙町1-13-15
  • 設立 : 1962年
  • 代表者 : 代表取締役会長 佐藤 守正 代表取締役社長 安田 和之
  • 売上高 : 2221億円(連結、2024年3月期)
  • 従業員数 : 5104名(連結、2024年3月期)