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【企業事例】優れた経営戦略を実践する企業の成功ストーリーを紹介します。
モデル企業 2025.04.30

これからの経営人財は「SDGs」の自分事化が必須 リコージャパン

SDGsが業績向上に直結

 

SDGsは2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標」である。SDGsを身近に感じてもらうため、2つの事例を紹介する。

1例目は、2019年にヘルスケア事業などを展開するユーグレナと高級寿司店の銀座久兵衛が組んで行った「寿司が消える日」というイベントである。皿いっぱいに盛られた寿司のネタが次第に減少し、2098年には最後に残ったズワイガニが消滅するというショッキングなビジュアルを制作。身近な“食”を通して、温暖化の影響によって日本近海の魚介が深刻な状況にあることを伝え、地球の未来を考えるきっかけを提供している。

2例目は、プラスチックごみ。WEF(世界経済フォーラム)によれば、世界で排出されるプラスチックごみの約9割がリサイクルされず、毎年800万t以上が海に流れ込んでおり、2050年には海洋のプラスチック総重量が全魚類の総重量を上回るという。プラスチックは波や風にさらされて5mm以下のマイクロプラスチックとなり、それが有害化学物質と結び付いて海洋生物に悪影響を及ぼす可能性がある。さらに、食物連鎖によって人体に影響を及ぼすことも懸念されている。

ちなみに豪・ニューカッスル大学の研究によると、人間が1週間に体内へ取り込むマイクロプラスチックの量は5.0gに達するとのこと。これはクレジットカード1枚分に匹敵する。

こうした地球が直面する危機的状況に対処するため、企業にはSDGsへの積極的な取り組みが求められている。それによって、①自社の強みを再認識(社会課題解決につながる自社の潜在能力に気付く)、②企業イメージの向上(顧客から信頼できる会社として選ばれる、投資家から選ばれる、優秀な人財が集まる)、③新たなビジネスが生まれる(地域との連携、新しい顧客・パートナー・市場の獲得)、④投融資が有利になる(金融機関は非財務情報も重視する方向)といった大きなメリットを得ることが期待される。

SDGsを全社的に根付かせて事業活動に反映させるためには、SDGsの意識と知識を身に付けた「経営人財」の育成が必須になる。

事業とSDGsを同軸化

 

リコーグループは世の中にイノベーションをもたらす製品やサービスを提供し、顧客とともに成長し続けることを目指している。事務機器や光学機器などを扱い、世界約200の国と地域で事業を展開しており、連結売上高は2兆3489億円(2024年3月期)。A3レーザーMFP・コピー機のシェアは世界第1位である(2021年)。リコージャパンは日本の販売会社としてリコーを中心とした製品やサービスを提供し、最近では顧客の業務改善やシステム構築などに関する提案も積極的に行っている。

リコーグループは企業理念において、「世の中の役に立つ新しい価値を生み出し、生活の質の向上と持続可能な社会づくりに責任を果たす」を“私たちの使命”と定めており、事業の成功と社会の発展は同軸であるべきとしている。それに基づき、本業を通してSDGsへの貢献を果たすべく「事業とSDGsの同軸化」を推進。グループ一丸となって“社会課題起点”で事業に取り組み、成果を上げることで社会課題解決を加速させたいと考えている。

事業とSDGsの同軸化の例として、優れた省エネ性能を持つ複合機を1台販売するごとに、インドネシアやフィリピンで、大量のCO₂(二酸化炭素)を吸収するマングローブ1本を植林する活動を展開。2020年2月から2023年3月までに植林したマングローブは21万本に達する。

 

SDGsワークショップを体験した成果

 

リコージャパンが体験型SDGsワークショップを始めるきっかけとなったのは、クライアント企業の経営者から「会社としてSDGsを重視し、ホームページにも掲載しているが、従業員はどこまで理解して行動できているのか分からない」と相談されたこと。「私たちが行っているSDGsへの取り組みを伝えるだけでなく、お客さまが自社に即した内容を考える時間を設けることが、SDGsを“自分事”として考えることにつながるのでは」とひらめき、ワークショップの活動をスタートさせたという。

今までに実施したワークショップの構成は、まず、リコージャパンからのセミナーが20分間、その後、リコージャパンの社員がガイドとして加わった4〜5名ごとのグループに分かれて「My SDGs宣言」を作成する作業が30分間。コアになるMy SDGs宣言の作成では、「自分の主な業務」や「自分の仕事は誰のどんな役に立っているか」などを記入してから、「自分の仕事はSDGsの何番につながっていると思うか」を考え、オンリーワンのMy SDGs宣言を完成させる。

このワークショップを体験した会社の経営者からは「自社のことを真剣に考える時間を意図的につくることで“会社愛”が高まった」「立場や部門を超えたコミュニティーが生まれて企業内が活発化した」といった声をいただいた。

ワークショップを体験した方々へのアンケートを集計すると、体験前はSDGsを「なんとなく意識していた」が最も多かったが、体験後はSDGsに「自分も取り組み、周りにも発信していきたい」「積極的に取り組みたい」が60.7%に達し、意欲の高まりが見られた。また、「さらにどんなことに取り組みたいか」という質問には「部門を超えたコミュニケーションを取れる場がもっとほしい」「年に1回『SDGs表彰』をするともっと盛り上がるのでは」「自社商品を何個か売るたびに木を1本植え、社名を冠した森ができたら夢がある」といった回答があった。

 

ワークショップ全体の感想としては「会社の良いところをあらためて見直すきっかけになった」「自分の仕事と社会・経済・環境との関わりを意識するきっかけになった」といった声もあった。

近年はESG(環境・社会・ガバナンス)も注目されているが、「SDGsを達成するプロセスにおいて、企業の配慮すべき観点がESG」と認識してもらいたい。

これからの企業活動には、経済活動と社会貢献(SDGs)の“二刀流”が求められる。どちらも手を抜かず、全力で取り組んでいただきたい。

 

リコージャパン 新潟支社 古川健志 氏
営業、マネージャー、商品担当区を経て、2024年4月より新潟営業部部長に就任。新潟支社内、組織横断の人財育成Project Group オーナーも兼務。次期リーダーへの成長支援や環境経営、SDGsへの感度を武器にした顧客との接点づくりを得意としている。

リコージャパン(株)

  • 所在地 : 東京都港区芝3-8-2 芝公園ファーストビル
  • 創立 : 1959年
  • 代表者 : 代表取締役 社長執行役員 CEO 笠井 徹
  • 売上高 : 2兆3489億円(連結、2024年3月期)
  • 従業員数 : 7万9544名(連結、2024年4月現在)