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モデル企業
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【企業事例】優れた経営戦略を実践する企業の成功ストーリーを紹介します。
モデル企業 2025.01.06

グローバル人財マネジメントで「One Hitachi」を実現 日立製作所

 


出所 : 日立製作所コーポレートサイトを基にタナベコンサルティング戦略総合研究所作成

 

 

「地球規模の環境課題」から地球環境を守り、自分らしく幸せを追求するウェルビーイングを両立し、サステナブル経営を推進する日立製作所。グループ売上収益は前年度比112%の8兆5643億円(2024年3月期)と好業績を続ける。同社はリーマン・ショック後の2009年3月期、7873億円の巨額最終赤字で経営危機に直面したことが転機となり、以来、軌道修正を図ってきた。

 

日立製作所は、国内中心の製品・システム事業による「コングロマリット経営」から脱却し、グローバルに社会・顧客課題を解決する「社会イノベーション企業」を目指している。それを実現するのが、独自に培ってきた「IT×OT(制御・運用技術)×プロダクト」を組み合わせるLumada事業だ。データサイエンスや生成AIなど最先端のデジタル技術を用い、多様な顧客・パートナーとの協創フレームワークで社会課題を解決し、「顧客の先にいる顧客」の新たな体験価値も創出している。

 

代表例として、海外ではイタリア・ジェノバの都市交通網をデジタルでつなぐスマートモビリティ統合ソリューション「Lumada Intelligent Mobility Management」、国内では決済に生体認証を活用する「SAKULaLa」の社会実装を推進している。

 

Lumada事業の進展へ向け、強化を図るのが人的資本経営だ。社会貢献を志向する「人財」がいきいきと活躍する組織としてDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)を重視し、1つのチーム「One Hitachi」となり、時流の変化に適応することで競合他社と差別化している。

 

経営戦略に連動する「2024人財戦略」も策定。また、グローバル共通の人財マネジメント基盤を構築し、最新の人財情報データをクラウドシステムで共有。人財検索やチームマネジメントへの活用、パフォーマンス管理や育成計画・キャリア開発など、イノベーションを起こすプロセスのグローバルな一元管理を実現している。

 

グループ企業は574社、従業員数約27万人、海外従業員と海外売上収益の比率は60%に上る。グローバル市場で「選ばれる会社」になるため、「2024人財戦略」では3つの目標を、人的資本経営の主要KPI(重要業績評価指標)に掲げる。

 

第一のKPI「デジタル人財の確保・育成」については、世界的な成長市場であるデジタルエンジニアリングサービスの大手・GlobalLogic(GL社)をM&Aし、デジタル人財を獲得。企業内大学を中心にDX研修体系を構築し、GL社と日立製作所のデジタル人財育成プログラムを融合した人財投資も推進している。

 

経営リーダー層をグローバル化する第二のKPI「役員層における女性と外国人の比率」に関しては、2024年4月から執行役副社長の半数、全執行役の22.9%が外国籍になった。

 

また、変化に適応し変革をけん引するグローバルな経営リーダー育成策として、数百人の経営リーダー候補者を世界中で選抜し、高度なマネジメント手法のOn・Off-JT、コーチングなどを実施。選抜メンバーの女性・外国人比率を高め、将来の幹部候補者となる若手対象の「Future 50」プログラムも実施している。

 

第三のKPI「従業員エンゲージメントの向上」は、目標値68.0%を達成。従業員サーベイによるモニタリングも行い、エンゲージメント向上のアクションプランに生かしている。

 

また、大型M&Aによりグループインした社員向けに、グループのMISSION・VALUES(創業の精神)・アイデンティティーを共有し、One Hitachiカルチャーを浸透・醸成するミーティングも継続的に実施。共通のマインドと行動目標を持ってもらうことで、One Hitachiのシナジー創出と最大化につなげている。

 

同社のグローバル人財戦略には、国・地域の連携を可能にする特徴もある。各地域統括会社の責任者に現地人財を抜てきし、事業や地域の文化的な背景を踏まえた独自の能力開発プログラムを実践しているのだ。

 

米国ではDE&I の理解向上トレーニングを全社員に実施し、ヨーロッパではEMEA地域(ヨーロッパ、中東、アフリカ)のリーダー層のグループ内ネットワークづくりを支援。アジアでも未来のリーダー層がASEAN(東南アジア諸国連合)や東アジアの社会課題の発掘とソリューションについて、政府関係者やグループ幹部と議論するプログラムを実施。中国やインドでは、階層別教育体系を整備し育成ロードマップ・プログラムによる効率的な学習を促進している。

 

グループ全体では、ジョブ型人財マネジメントへの転換を推進。職務と必要なスキル・経験を明確化し、意欲・能力に応じて人材を登用することで、社員の働きがいや会社との一体感を高め、共に成長する姿を目指す。

 

職務と人財の見える化には「ジョブディスクリプション」(職務記述書)を導入し、社員の適性やキャリア志向を踏まえた機会創出と適所適財へ「タレントレビュー」を実施。各地域のビジネスを横断したグローバルな人財配置を進める。「Inspire the Next」をスローガンに、「社会イノベーション事業のグローバルリーダーをめざす、トランスフォーメーション・ジャーニー(変革の旅)」はこれからも続いていく。

 

※ 顧客データから価値を創出し、デジタルイノベーションを加速するための日立のデジタル技術を活用したソリューション・サービス・テクノロジーの総称

 

 

(株)日立製作所

  • 所在地 : 東京都千代田区丸の内1-6-6
  • 設立 : 1920年(1910年創業)
  • 代表者 : 取締役 代表執行役 執行役社長兼CEO 小島 啓二
  • 売上高 : 8兆5643億円(連結、2024年3月期)
  • 従業員数 : 26万8655名(連結、2024年3月末現在)