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【企業事例】優れた経営戦略を実践する企業の成功ストーリーを紹介します。
モデル企業 2024.08.01

JALフィロソフィの浸透が企業再生、飛躍に大きく貢献 日本航空

経営破綻からわずか2年で史上最高の営業利益を計上し、再上場を果たした。企業理念・JALフィロソフィの社内浸透が果たした役割は大きい
経営破綻からわずか2年で史上最高の営業利益を計上し、再上場を果たした。企業理念・JALフィロソフィの社内浸透が果たした役割は大きい

 

 

 

発表や選考プロセスを学びや共有の機会に

 

JALフィロソフィの勉強会が始まって約13年が経過したが、この間も状況の変化を踏まえ、社員の行動変容につながるよう、工夫を凝らしてきた。コロナ禍ではいち早くオンライン開催にシフトし、世界中の仲間がつながれる場をつくった。現在は、社員同士の対話を重視し、テーマについても当初とは変化させている。

 

「かつてはJALフィロソフィに書かれている項目を1つ取り上げ、そのテーマに沿った事例を紹介していくという勉強会でした。近年は、一人一人のJALフィロソフィの学びと実践が、中期経営計画の実現につながることを理解できるようなテーマを選定し、テーマと自身の業務を結び付けて対話しています。

 

企業理念や中期経営計画を実現するためにJALフィロソフィがあるわけですが、一人一人が日々の仕事にどう向き合っていくか、より具体的な対話を行っています」

 

JALフィロソフィ勉強会の進化について説明するのは、人財本部意識改革推進部の寺井美紀氏である。

 

また、日本航空ではJALフィロソフィの実践事例を発表する「JALフィロソフィ発表会」を2011年から毎年開催している。社員が各自の取り組みを応募し、その中から選考された事例を全社に向けて発表する会である。しかし、2023年からその選考プロセスが変化している。人財本部意識改革推進部主任の鈴木駿氏は、狙いを次のように説明する。

 

「各職場で事例を選考してもらった後に、人財本部意識改革推進部に推薦してもらう形式に変更しました。選考プロセスも含めて全社の学びの場にしたいという思いがあったからです。これまでは自分の部署がどんな事例をエントリーしたのかが見えづらく、せっかく良い取り組みをしているのに部門内に広がらないというケースもあったので、そこを改善したかった。つまり、選考プロセスを部門内での学びの共有の機会につなげるため、応募者には自身が感じた困難や達成に至った理由などを中心に共有してもらい、より良い仕事をするためのヒントを各部から全社に広げていく発表会にしたいと考えています」

 

浸透のポイントは「継続すること」

 

JALフィロソフィ発表会の選考プロセス改善のように、企業理念やJALフィロソフィが浸透するためには、何が必要なのかを検討・実践してきた日本航空。同社のこうした丁寧な取り組みが、JALフィロソフィが多くの社員に浸透している秘訣(ひけつ)といえる。

 

「JALフィロソフィの本質である人間として何が正しいかで考える軸を育むためには、継続性が大切だと考えています。一方で施策については周囲の声や状況を取り入れて、変化させることを心がけています。今年度は自身の体験や考えを自分の言葉として発することで、自分にも周りにも気付きや刺激を与えることに力を入れています」(清水氏)

 

例えば、2024年度もいくつか新しい施策に取り組んでいる。「JET CAFE」と名付け、社員が自身の取り組みを自分の言葉で全社に向けて語る施策の初回では、退役機のラストフライトにお客さまに搭乗していただくという「伝説のツアー」を実現した若手社員が登壇した。同世代の社員に対しては、「業務で抱く理想や疑問、不満は金の卵。それに気づいているのはあなただけ」と語りかけ、自身の上司に対しては、前代未聞かつ所属の業務と無縁の企画を最初から否定せず、どうしたら実現できるかを一緒に考えてくれたことに感謝を述べた。

 

また、国内外のJALグループ各組織からの代表者約80名の集まりである「PHILOOP(ふぃろるーぷ)」も立ち上げた。この名前には“仲間をつなげる、輪を広げる”という思いが込められている。

 

破綻後、上位層から始まった横連携の場作りを組織単位まで落とし込んでいくための「草の根活動」。今年度は各組織の良いところをキーワード化する活動を通じて、まずは自分の組織や仲間を知ることから始めている。こうした取り組みが実り、社員を対象にしたES(従業員満足度)調査の結果では、JALフィロソフィに関する浸透度の項目は、確実にポイントが上がっている。

 

さらに社外との交流にも積極的だ。パーパス経営を実践する同社には、さまざまな業種の企業から見学や交流のための打診が多くあるが、こうした機会をありがたく受け止め、互いが意見交換や取り組みを共有することで学び合う機会を創出。JALフィロソフィ勉強会で定着した学び合う文化は、今では社外へと広がり、他企業にも大きな影響力を及ぼすまでになっている。

 

 

日本航空(株)

  • 所在地 : 東京都品川区東品川2-4-11 野村不動産天王洲ビル
  • 設立 : 1951年
  • 代表者 : 代表取締役社長執行役員 鳥取 三津子
  • 売上高 : 1兆6518億円(連結、2024年3月期)
  • 従業員数 : 3万7869名(連結、2024年3月現在)

 

 

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