•  
モデル企業のメインビジュアル
モデル企業
モデル企業
【企業事例】優れた経営戦略を実践する企業の成功ストーリーを紹介します。
モデル企業 2019.12.16

全員活躍で生活文化創造企業を実現:トップ産業

強い者しか生き残れない環境は、社員をじわりじわりと痛めつける。 たとえ成長スピードが鈍っても、全員が笑顔で活躍できる会社になろうと決断したトップ産業の代表取締役社長・松岡康博氏は、アカデミー(企業内大学)を開校した。

   
「生活文化創造企業」を目指し、右肩上がりの成長
  トップ産業グループは、トップ産業、優生活、トップラボ、トップファクトリー今治で構成されている。中核となるトップ産業は1970年の設立で、家庭用品や繊維製品をはじめとするオリジナル生活用品の企画開発から製造、販売、広告の企画・制作までを手掛けるという、メーカー機能を有する総合商社。全国の生活協同組合(以降、生協)に向けて、「主婦モニター」の声を反映させた数々のヒット商品を供給している。2020年には設立50周年という大きな節目を迎える。   優生活は2006年の設立で、一般消費者へ向けた通信販売とECを展開。食料品を中心に家電・家庭用品、自動車関連用品など多彩な商品を取り扱う。近年人気の「訳あり商品」の火付け役でもある。   トップラボは2007年の設立で、主婦モニター制度の運営や商品企画に関わる撮影などのディレクションを行っている。最近は海外向けの商品販売も始めた。   トップファクトリー今治は、2014年にM&Aで傘下に収めた愛媛県今治市のタオル製造工場。空気と水を利用する日本古来の空調の仕組みを備え、独特の風合いを持った高級タオルが製造できる。生協はもちろん、ドラッグストアやホームセンターへと販路を拡大している。   グループ共通の基本理念は「生活文化創造企業を目指して」。生活文化創造企業の具体像として「今日よりも明日、明日よりも明後日、毎日をもっと便利に楽しくするものを、私たちが考え出し、世の中に提案し続ける」を掲げている。   グループ化が始まる前年のトップ産業の売上高は約52億円(2006年9月期)だった。以降は順調に売り上げを伸ばし、直近のグループ全体の売上高は約107億円(2019年9月期、見込み)に達する。    
教育の仕組みを刷新し、苦しむ社員を救いたい
  「このような急成長が、深刻なひずみを生んでいたのです」と語るのは、トップ産業の代表取締役社長・松岡康博氏だ。常に高みを目指すが故、社員により高いレベルの仕事を望むようになる。その結果、「努力して期待に応える社員」と「努力してもついていけず脱落する社員」の二極化が進んでいたのだ。   「当時は『強い者しか生き残れない。それが会社というものだ』と割り切っていました。しかし、せっかく入社してくれた若者たちが夢半ばで会社を去る無念さ、それによって会社全体のモチベーションがしぼんでいく状況を目の当たりにすると、『強い社員が引っ張っていくだけの会社では駄目だ。たとえ成長スピードが鈍ってもいいから、全員が笑顔で活躍できる会社になろう』と思うようになりました。そして、『全員が活躍できる土壌をつくるには、早い段階での教育が必要不可欠』という結論に達したのです」(松岡氏)   社員教育を見直した松岡氏は、若手社員との意識の差異に直面した。ここ10年ほど、トップ産業の人材採用は基本的に新卒のみで、新入社員教育の主体は旧来のOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)だった。ひと昔前の新入社員は、「分からないことは先輩に聞け」「技は盗むもの」といった暗黙のルールの中で仕事を覚えた。ところが、最近の若手社員は「学ぶ意欲」や「成長する意欲」が非常に高いのに、先輩へ質問することに相当なストレスを覚える傾向があるという。   「当初は『人に質問することが、そんなにストレスなのか』と驚きましたが、OJTは担当業務やサポートする先輩によって成長スピードにばらつきが出るのは事実。また、その瞬間ごとの断片的な経験しかできませんから、仕事の全体像を描くのは至難の業です。教育の仕組みを刷新し、社員を救う方策を模索していました」(松岡氏)   そんな折に、松岡氏はタナベ経営からこんな提案を受けた。「学校をつくりませんか」      
社内の暗黙知を明文化し独自のカリキュラムが完成
  「この提案は心に響きましたね。『最終的には、会社のブランドになり得ます』と聞いて、導入すべきと判断しました」と松岡氏は当時を振り返る。   タナベ経営が推奨するアカデミー(企業内大学)は、社内講師によるクラウドシステム型の教育が特徴。これが、「若手社員を守り、先輩社員を救いたい」「若手の成長スピードを上げたい」「どこでも学べる環境を整備したい」といったトップ産業グループのニーズにマッチし、2017年、開校準備が始まった。   開校準備を担当したのは、「TOPアカデミー委員会」。トップ産業グループには全社的な業務を担う委員会制度があり、四つの委員会に全社員が属することになっていた。その中の人材育成委員会をベースに、選抜した社員を集めてTOPアカデミー委員会を結成。メンバーは日常業務と並行し、開校準備に当たった。   まず、グループ全社員へのアンケートを実施し、社員の特性や課題などを調査。続いて、職種別能力・スキルの掘り起こしと部署連携、用語の共通化を実施し、業務ごとに必要な能力とスキル、社内用語の共通化などを図った。「社内の暗黙知を整理して明文化する作業は、全社的な仕事の棚卸しにつながりました」と松岡氏は言う。   それからカリキュラムの策定に取り組んだ。大きな特色は、まずトップ産業グループが重要視する2大能力、「人間力」と「判断力」について学ぶことだ。「トップ産業グループが実績を築いてきた原動力を私なりにまとめました」と松岡氏は述べる。その後、業務について学んでいく。   続いてウェブ用動画を撮影。TOPアカデミー委員会のメンバーが講師を務め、販促デザインなどに関わるスタッフの協力を得て自社内で撮影を行った。     各方面から注目を集め、ブランディングにも貢献 そして2019年4月、念願の「TOPアカデミー」が開校。「全社員活躍による生活文化創造企業の実現」をコンセプトに、新たな教育がスタートした。   入社4年目までを対象としたウェブ講座は40を超える。ほとんどの講座には理解度確認のためのチェック(テスト式・レポート式)があり、結果は社内データとして社内カルテに登録され、全カリキュラムの履修を終えるとリーダー職に昇格する仕組みだ。     201912_01_case1_01     「今年の新入社員と話をすると、理念や仕事に関する理解度が前年までの新入社員とはまったく違うと実感できます」と松岡氏は満足げに語る。   社外からの注目度も高い。「取引先の経営層もTOPアカデミーの話をすると大変興味を持ってくれます。新聞広告にTOPアカデミーのことを掲載すると、詳しく知りたいとか見学したいといった声が数多く寄せられました。また、大学の就職関連部署も『安心して成長できるシステム』として注目しているようです。ブランディングとしても大きな成果が期待できます」(松岡氏)   アカデミーを実現するポイントについて、松岡氏は次のように言う。   「アカデミーの開校と運営は、現場に大きな負担がかかります。『お客さまは大事だけど、社員はもっと大事。その社員のためにアカデミーがある』という熱い思いを社員に伝え、総務部門や人事部門に押し付けずに、全社から選抜したメンバーが結集したチームで取り組むのがベストだと思います。また、『ウェブを使うことで事業ノウハウが流出する』との心配も湧いてきます。これに関しては、『その程度の情報が流出してピンチに陥るなら、しょせんはその程度の会社。情報をオープンにして若い社員にしっかりと学んでもらう方がよっぽど価値がある』と開き直りました」   新たな生活文化の創造を目指すトップ産業グループ。設立50周年を超えた未来へ向け、同社の最前線で活躍するのが、TOPアカデミーで理念や考え方、実務スキルを習得した社員であることは間違いない。    
Column

多角的な学びを提供

  ウェブによる教育にスポットが当たりがちなTOPアカデミーだが、「ウェブ受講」の他にも「集合型」「体験型」「外部派遣型」という多角的なアプローチで学びの場を提供している。集合型は社内講師による集合研修だ。体験型は生協配達車両への同乗体験など、実体験が必要なカリキュラムについて目で見て体で覚えるリアルな研修スタイルを採用。外部派遣型は外部研修で、タナベ経営のセミナーなどに参加している。   集合型では、松岡氏が2カ月に1度のペースで、ルーキー(1・2年次)、メンバー、リーダー、幹部(課長、部長、執行役員、取締役)といった階層ごとに社員へ語り掛ける「TOPゼミ」を開催している。2019年度のテーマは「わが社の存在価値と現状」「人事労務ビジョンと可愛がられるもの」「職種別求める人材像と人事考課表」「新しい職種と働き方、自己申告書」などで、ワークとしてリポート作成やグループディスカッション、プレゼンテーションなどを行う。   「幹部以外の社員とは十分なコミュニケーションが取れていないので、体系立ったスケジュールを組んで語り掛けるTOPゼミは、私にとって貴重な時間。アカデミーの主力になると期待しています」(松岡氏)   ウェブ受講なら、いつでもどこでも学習が可能

ウェブ受講なら、いつでもどこでも学習が可能

  社内講師による集合研修も実施

社内講師による集合研修も実施

 
  トップ産業 代表取締役社長 松岡 康博氏 トップ産業 代表取締役社長 松岡 康博氏  

PROFILE

  • トップ産業㈱
  • 所在地 :大阪府吹田市豊津町12-43 トップ産業ビル
  • 創業 : 1966年
  • 代表者 : 代表取締役社長 松岡 康博
  • 売上高 : 107億円(グループ計、2019年9月期 見込み)
  • 従業員数: 200名(グループ計、2019年9月現在)