その他 2025.02.03

次世代の幹部候補を育成し、人的資本経営の充実へ オイレス工業


オイルレスベアリングで世界トップシェアのオイレス工業。長期ビジョン「OILES 2030 VISION」では「サステナブルな社会の実現を、摩擦・摩耗・振動の技術+X で貢献する」と掲げている
オイルレスベアリングで世界トップシェアのオイレス工業。長期ビジョン「OILES 2030 VISION」では「サステナブルな社会の実現を、摩擦・摩耗・振動の技術+X で貢献する」と掲げている

 

「従業員は会社の大切な財産である」と人事基本方針で明確に掲げるオイレス工業は、従来から豊富な教育研修制度を整備・実施し、人材育成に力を入れてきた。人的資本経営の推進を経営方針として掲げる中、将来の経営幹部候補となる若手(非管理職)人材にフォーカスした研修で、ハイポテンシャル人材の早期発掘・育成に取り組んでいる。

 

人的資本経営を加速させる新研修をスタート

 

多様な機械装置の回転・往復運動に不可欠なオイルレスベアリングで世界シェアトップメーカーのオイレス工業。「多様な能力や個性を充分に発揮できるよう成長を支援」する独自の人事基本方針を2021年、さらにブラッシュアップ(改定)した。

「従業員のスキルアップはもとより、各人の自発的なキャリアデザインを支援すべく、マネジメント研修、職能教育、自己啓発、ライフプランに関する研修など多彩な研修制度を整備しています。また、管理職候補者の総合研修の場として『オイレススクール』という将来の幹部候補者の選抜教育を1997年から実施しています。

ただ、近年は人材育成をコストではなく投資として捉え、将来的に必要となる人材を育てていく考え方が強まりました。加えて、コロナ禍を経て従来以上に多様性が求められるようになり、会社としての人材への考え方が変化していきました」

同社の企画管理本部人事部の佐藤正伸氏はそう語る。

オイレススクールの他にも、幹部候補を選抜する「経営幹部養成研修」など、他社と比べて豊富な人材育成体系を確立していたが、人的資本経営をさらに推進すべく、2023年度から「他社留学研修」、さらに2024年度には「プレマネジメント研修」を、新たに開講している。

他社留学研修は、多様な業態・職種・年齢の他企業の代表社員と数名のチームを構成し、スタートアップ企業の課題解決をテーマに3カ月で成果を出すプロジェクト研修だ。すべてオンラインミーティングで進行し、2023年度は5名、2024年度は2名を選抜した。

「多様な視点や発想に触れ、他社の経験やエッセンスを持ち帰って、幅広く社内に取り入れてもらいたいと考えています」

プレマネジメント研修は、非管理職の若手人材を抜擢し、「業績向上のための問題解決力」や「自職場の活性化に向けたコミュニケーションや育成スキル」を身に付けてもらう内容で、次世代の経営幹部育成の入り口と位置付ける。構成や個別カリキュラムの作成、講師派遣をタナベコンサルティングが支援した。企画から導入まで一貫して手掛けるのが、企画管理本部人事部企画課の川口大志氏だ。

「2024年に坂入良和が新社長として就任する際、より若手のうちから経営に関する知識をインプットする場を設けてほしいとの要望がありました。部長に昇格するまで、マネジメントや会計知識を教わったり、経営課題の解決アプローチを策定したりする機会がなかったという実体験を振り返ってのリクエストです。

職場の中心人物として活躍する有能な若手が対象になるので、業務を圧迫せず、幹部に必要な知識をしっかりインプットできるカリキュラム設計を考えました」(川口氏)

 

【図表】オイレス工業の経営幹部育成に向けた全体像
【図表】オイレス工業の経営幹部育成に向けた全体像
出所 : タナベコンサルティング戦略総合研究所作成