3カ月間の短期集中でプロトタイプまで完成
―― 100DIVEは、日本全国の市区町村から寄せられた課題をプロジェクト化して、メンバーを公募。互いを知らない多様な顔ぶれの複数のチームを立ち上げて、事業提案のみならず、その先の事業化、地域への定着まで全面的にサポートしています。決められた事業に対して自治体が人材を募集するケースはよく見受けますが、まず先に「人」を集めてから事業を共に練り上げていく点がとても画期的です。
庄司 ありがとうございます。事業開発とチームビルディングの両方に取り組んでいるという点が、当社の独自性だと思います。自分と仲間のチームで考えた事業であれば、本気でやり続けたいという思いが入りますし、本気でやりたい事業を考え抜く中で本当の仲間ができると思っています。
―― 具体的には、どのようなステップでプロジェクト化していくのですか。
庄司 まず、全国から集まった有志と自治体の担当職員が選んだ地域人材が、5、6名程度のチームを複数組み、重点施策を策定します。「地域との接点をつくりたい」「自分で仕事をつくりたい」「地域で一緒に頑張る仲間を探したい」という意志があれば、年齢や職業を問わずプロジェクトに参加できますが、責任感を持って取り組む姿勢があるか否かを確認するため、エントリーする際には参加費用をお支払いいただいています。
メンバーが決まったら、対話を重ねてつくりたい未来や事業アイデアを磨き込み、目的、スタンス、進め方を決定します。情報収集、考察、フィールドワークなど、一般的なビジネスと同様のプロセスを踏んでプロトタイプをリリースし、並行してリフレクション(内省)やメンバー間による本気のフィードバックを通じてチームビルディングを行います。
―― チームビルディングからプロトタイプのリリースまでを、3カ月間の短期集中で行うのも特長ですね。
庄司 そうですね。その後、地方自治体がチームの提案を採択して応援するチームに選ばれれば、いわゆるフィジビリティーステージ(新規事業やプロジェクトを事業化できるか調査・検討する段階)に上がり、事業化に向けた取り組みが具体的にスタートします。
2021年に当社を設立して以来、これまでの3年間で、長野県小海町、山形県河北町、東京都奥多摩町、新潟県三条市など、全国16地域で累計参加者249名、48のプロジェクトチームが立ち上がりました。そのうち、31チームが提案で終わらずにプロジェクトを継続しており、うち7事業が法人化しています。
―― そこが特筆すべきところです。これまでにも民間から自治体に対して数多くの提案があったと思いますが、なぜ、ほとんどが事業化に至らないのでしょうか。
庄司 地域に人がいないということは、需要(マーケット)も小さいので大きなビジネスになる見込みは少ないかもしれません。すぐに採算がとれる保証もない。ですから、効率を大前提とする一般的な民間企業は、なかなか手を出しにくい。
100DIVEのプロジェクトが事業化に成功している要因は、経済効率だけを考えるのではなく、チームメンバーの「熱量」による他の報酬も掛け合わせながら、思いのあるメンバーの多様なスキルを掛け合わせているからです。
―― 初めて顔を合わせた生まれたてのチームが、なぜそこまで熱量を高めることができるのでしょうか。
庄司 最大のポイントは、「人をかき混ぜること」です。私は以前、サントリーのグローバル人事マネジャーとして、多様性の中でのリーダーシップ開発プログラムを立ち上げ、異業種混合で次世代リーダーの育成に取り組んでいました。
その中で、効率性やリソースの有無にかかわらず、ただ「熱い思い」をもって地域に根を張り、課題に立ち向かっている自治体やNPO(非営利団体)の方々と、多様なビジネススキルは持ちつつも効率化に捕らわれていたビジネスパーソンが出会って、適切にリフレクションやフィードバックによって、本気のチームが出来上がったとき、互いが刺激を受けて学び合っていたのを目の当たりにしました。その時の驚きと感動が、担い手不足の地域において地域内外の人を混ぜ合わせ、「夢中になって社会課題の解決に挑戦するチームの構築支援」「学び合いの場」を提供する100DIVEの設立につながっています。熱は伝播するのだと確信しました。
出所 : 100DIVEホームページ