多くの物流会社が抱える課題をAI画像・動画解析によって解決してきたAutomagiのソリューションは、ヒアリング、解決方法の提案、実証実験、導入という流れでつくられる。その際、同社が最も配慮しているのがスピードだ。プロジェクトによって多少の差はあるものの、2019年に行った約40プロジェクトの実証実験期間は平均すると約2.4カ月。他社と比べると半分程度だという。
「3カ月以内に一通りのAIをつくり上げるというスピード感が、顧客から高い評価を受けています。これが半年もかかれば、『今すぐ標準化したい』と考えている顧客からすると長すぎますし、仮にうまくいかなかった場合は費用が無駄になります。そのため当社では、いち早くAIを開発して方向性を示すことが重要だと考えています」(和田氏)
多くのプロジェクトを立ち上げてきた同社は、物流会社に共通する課題の抽出にも取り組んできた。浮かび上がったのは荷姿の自動計測だった。荷物を撮影するだけで大きさを自動計測するAI画像解析システムがあれば業務は大幅に軽減され、業界への貢献度も高い。しかし、かなりの開発コストがかかるという課題もあった。
そこで和田氏は、2019年に内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム「SIP」※の第2期スマート物流サービスに応募。見事採択され、プロジェクトとして本格的に動き出した。
このAI画像解析システムは、荷物の縦・横・幅の3点を測定することでサイズを計測。トラックなどの貨物車への積載量をスピーディーに把握し、倉庫からの出荷や積み込み作業を効率化するのが狙いである。
「荷姿の自動計測システムの開発により、当初の事業戦略で掲げた汎用性の高いソリューションサービスに本格的に取り組むことができました。業界全体の課題解決に役立つシステムになると確信しています」(和田氏)
AI画像解析システムのアプリは、多くの物流会社や運輸会社のスタッフ、ドライバーが活用できるように、専用タブレットではなくスマホで計測できるアプリとして開発した。計測精度も数センチメートル単位の誤差までクリアしており、2021年の夏までにはさらに精度を引き上げて実用化する予定だという。
Automagiは今後、冷凍・冷蔵倉庫の運営などの過酷な条件下での作業や、重い荷物の運搬業務など、体に大きな負担がかかる仕事の軽減も視野に入れている。冷凍・冷蔵倉庫での作業短縮のためにAIの画像解析で素早く荷物を確認できるサービスや、フォークリフトとシステムを連動させ、重い荷物の移動を人が介在しないで自動的に作業するサービスも展開予定だ。
「物流業界には人的作業をAIで代用できる部分がまだ多いと感じています。また、これまでAMYのAI画像・動画解析ソリューションは、大手宅配事業者や航空貨物会社などの大企業が中心でした。しかし、物流業界には倉庫業や運輸業を営む中小企業が全国に数多くあり、こうした中小企業の生産性向上にも寄与したいと考えています。廉価で汎用性の高いパッケージソフトを提供し、物流業界全体の課題を解決していきます」(和田氏)
これが同社の掲げる物流業界のAIソリューションであり、物流業界でトップを狙う戦略でもある。もちろんAIも万能ではない。完全な無人化を図れるわけでもない。しかし、人が携わる単純作業はAIが代行し、人はよりクリエーティブな仕事にシフトして業務全体を見直すことで、効率的な業務フローが生まれる。その点を認識すれば、中小の物流業界はもっと成長できるに違いない。
※Strategic Innovation Promotion Program:科学技術イノベーション実現のために創設された国家プロジェクト
3カ月以内に一通りのAIをつくり上げるという
スピード感が、高い評価を受けています
PROFILE
- Automagi (株)
- 所在地: 東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー28F
- 設立: 2010年
- 代表者: 代表取締役社長 櫻井 将彦
- 従業員数:77名(2020年6月現在)