メインビジュアルの画像
モデル企業
モデル企業
【企業事例】優れた経営戦略を実践する企業の成功ストーリーを紹介します。
モデル企業 2020.07.22

人手不足や煩雑な業務を改善する物流業界のAIソリューション Automagi(オートマギ)

消費社会を下支えする物流業界は、コロナ禍においても正常に機能することで人々の生活を守っている。サステナブルな物流を支えるAIソリューションの在り方を探る。

 

 

電力・物流業界にAI画像解析技術を提供

 

新型コロナウイルスの感染拡大により観光、飲食、航空業界などの業界がひっ迫する中、物流業界は一部の工場停止などでBtoB物流がやや停滞傾向にあったものの、巣ごもり需要などのネット通販の利用増加で、BtoC物流は拡大傾向にある。そんな物流業界に対して、AIを活用したソリューションを提供しているのがAutomagiだ。同社はもともと、通信キャリア事業者の受託開発業務を行っていたが、AIの登場により自社サービスの開発に着手し、AIを活用したビジネスに乗り出した。そして開発されたのが、「AMY(エイミー)」と呼ばれるAIソリューションサービスである。

 

AMYは、「自然言語の解析」「データの解析」「画像・動画の解析」という3分野の技術が活用されている。自然言語の解析では、チャットボット(対話を行うロボット)の自動応答サービスなどに活用され、主に金融機関のコンタクトセンターなどが挙げられる。データ解析では膨大な情報を解析、活用して製造業におけるカビや腐食防止の早期発見などに役立てている。そして、同社が最も力を注いでいるのがAI画像・動画解析ソリューションシステム「AMY INSIGHT(インサイト)」だ。

 

「画像・動画を解析し人的作業をAIが行うシステムで、現在は電力業界と物流業界を対象にしています。実は当社がAI開発に乗り出した当時、金融やサービスなど多くの業界ではすでにAIソリューションが実施されていましたが、電力業界と物流業界はインフラを支える重要な業界であるにもかかわらず、まだITやAIによって自動化されている部分が極めて少ない領域でした。そこで、二つの業界に絞りAIによってどんなソリューションが可能なのかをリサーチし、サービスを開発してきました」

 

そうAI画像・動画解析ソリューション事業の背景を説明するのは、AutomagiのAIビジネス部副部長でAMY INSIGHTの責任者である和田龍氏である。

 

電力業界向けとしては、まず、送電線の鉄塔や橋脚などのさびの状況を写真や動画から把握する技術を開発。現在は徐々に実導入も増えており、有資格者が目視で行っていた検査を自動化することで大幅な業務効率化に貢献している。

 

 

AI画像・動画解析
ソリューションシステム活用事例

 

冷蔵倉庫でのカメラ映像分析

冷蔵倉庫内の監視カメラの映像をもとに、カゴ車・パレット・フォークリフト・段ボールを個別に認識。動きを追跡・分析できる

 

 

荷姿のサイズを簡単に測定

スマートフォンやタブレット端末で荷物を撮影するだけで、対象物の輪郭を自動的に取得。現在は直方体の定型荷物に限り90%以上の精度での測定を実現

 

 

さびの発生を画像から検知

塔や橋梁などを撮影した画像、監視カメラの映像から、さびの発生検知と領域特定を判定。また、さびの領域ごとに細かく腐食の度合いの判定も数値化できるため、ある程度の腐食が進んだ段階で検知することも可能

 

 

 

荷物確認や注文票の確認にAIを活用

 

一方、物流業界向けとしてはAMY INSIGHTを用いて多彩なソリューションを展開している。例えば、物流センターでの入出荷業務時の段ボールの傷を確認するシステムや、海外から航空貨物を輸入する際の荷物数を画像でチェックするシステムを開発。これらの業務は、以前は担当者が目視で行っていた作業だが、画像解析システムにより自動で確認できるようになった。すでに前者が物流倉庫、後者は航空貨物会社などで採用されている。

 

「各社の課題を個別にヒアリングしていくと、置かれた環境や優先すべき課題が異なることが分かりました。そのため現在は、それぞれのお客さまの課題に応じたソリューションをカスタマイズ提供しています。

 

今後は、これまで蓄積した物流業界におけるAIノウハウを生かし、多くの物流会社で導入できる汎用性の高いパッケージソリューションを展開していきます」(和田氏)

 

和田氏が率いる物流チームは、一人一人が50社を超える物流施設に足を運び、それぞれの課題をヒアリングして解決策を提案してきた。荷物の入出荷作業に関わることだけでなく、バックオフィス業務のソリューションも複数含まれる。

 

例えば、全国展開する学習塾に教科書を配送する宅配会社に対しては、教科書を画像認識して各拠点に必要な教科書を届けるシステムを開発している。

 

一般に販売されている書籍や雑誌はバーコードを読み取り本を認識するが、学習塾の教科書にはバーコードがない。そのため表紙のタイトルを1冊ずつ確認して配送しなければならず、作業に時間がかかっていた。このタイトル確認を目視に頼らずにAMY INSIGHTで読み取ることで、10分の1程度の時間で発送できるようになったという。

 

また、ある運輸会社では顧客からファクスで送られてくる注文書のフォーマットが各社バラバラだったため、フォーマットにデータを手入力していた。すると、担当者によって入力の仕方が異なる上、手間やミス、漏れが発生してしまっていた。

 

この課題を解決するために、各社から送られてくるファクスに記載の企業名、日時、商品などの文字情報を画像データとして認識。その後、自動で抽出・入力することで業務を省力化し、システムへの入力ミスや漏れを防げるようになった。それまで5事業所25名で行っていた受注専門業務を8名に減らし、作業工数も約70%削減できたという。人手不足の解消にも役立ったことは言うまでもない。