その他 2019.10.31

社会の公器を追求し続けて事業転換に成功。経営再建から東証1 部上場への飛躍:スマートバリュー

シェアリングという発想が新規事業の原点

 

事業転換を可能にするためには、経営者自身の発想の転換が欠かせず、それを促す原体験が大切だ。渋谷氏の場合、「1990年代半ばにインターネットに触れたことで、価値観が大きく変わり、経営に対する新たな視点を得ることができた」ことだった。

 

「インターネットが社会を変えていくはずという大局的な視点を得たとともに、シェアリングという発想が素晴らしいと思いました。当時、インターネット上でさまざまなニュースグループが立ち上がり、メンバー同士がコミュニティーをつくっては知識の共有を当たり前のように行っていました。私自身、サーバーの監視業務を行うことがあったのですが、理系ではなかったので操作に行き詰まることがたびたび生じたのです。そうした際に、コミュニティーの誰かに聞くと、瞬時に回答してくれたことが印象に残っています。こうしたコミュニティーとシェアの発想に基づくビジネスが時代の主流になるはずと考えたことが、現在のスマートバリューにおけるビジネスの原点となっています」(渋谷氏)

 

一方、事業転換を進める上では、従来から培ってきた経営資源を可能な限り活用してきた。

 

「例えば、中核事業の一つであるモビリティ・サービスでは、電装品を扱っていた時代の取引先との関係を今なお大切にしています」(渋谷氏)

10年先を見据えた長期プランで成長を目指す

 

スマートバリューの新たな中期経営計画では、長期プランのスローガンとして「Moonshot Vision 2028」を掲げている。ムーンショット(イノベーションを生み出す壮大な挑戦)を通じて、21世紀における社会課題の解決を目指していく。

 

「ミッションとして、歴史に残る社会システムを創ると掲げていますが、実現していくのはこれから先のこと。今後の10年間、本気で挑戦していく覚悟です」(渋谷氏)

 

デジタル・ガバメント事業においては、行政サービスをデジタル化する住民ID基盤「GaaS(Government as a Service)」の稼働を開始した。政府が推進するデジタル・ガバメントの実現に向け日本初のプラットフォームとして全国展開を模索している。2019年5月には、その第1弾として行政サービスをオンライン上で適切に提供するためのポータルサイト「加賀POTAL(ポータル)」を石川県加賀市と共同で公開した。

 

また、モビリティ・サービス事業では、ソフトバンクやトヨタ自動車などの共同出資会社であるモネ・テクノロジーズが設立した「MONETコンソーシアム」に参画。同コンソーシアムの目的である「移動における社会課題の解決や新たな価値創造」の実現に貢献していく考えだ。

 

四半世紀にわたって事業転換への挑戦に成功したスマートバリュー。今また、第3創業期として新たな飛躍に向けた挑戦が始まっている。

 

 

Column

経営者と従業員、理念の共有でさらなる飛躍へ

事業転換というと、経営者の目は新たなビジネスモデルの創出に向きがちだ。もちろんそれも重要ではあるものの、加えて欠かせないのは、新しいことに挑戦する意義を従業員に分かりやすく伝える努力である。

新しいことへの挑戦に組織全体が容易になじむとは限らない。今まで取り組んだことのない挑戦への不安や疑念をどう払拭していくか、この点を安易に捉えてしまうと事業転換は成功しない。

事業を変えれば、当然ながら従業員の働き方も変わる。その意味や将来に向けた夢と希望、さらには変わることでのリスクを含めて、経営者と従業員が意見を率直に交えることが必要だ。

そこを踏まえ、スマートバリューでは第2次中期経営計画の基本方針「Enjoy Job ! Enjoy Life !」の具体的戦略として、ヒトを中心に置いた経営を徹底。従業員の安全と健康の確保を目的とした「SMART WORK」の実践、経営者と従業員が同じ価値観を共有する風土の醸成を目標に掲げ、計画達成に向けて取り組んでいる。

 

スマートバリュー 代表取締役社長 渋谷 順氏

 

PROFILE

  • ㈱スマートバリュー
  • 所在地:大阪府大阪市西区靱本町2-3-2なにわ筋本町MIDビル4F
  • 創業 :1928年
  • 代表者:代表取締役社長 渋谷 順
  • 売上高:77億4300万円(連結、2019年6月期)
  • 従業員数:388名(連結、正社員のみ、2019年6月現在)