タナベコンサルティング主催の外部派遣型セミナー「幹部候補生スクール」は、経営者人材候補を対象に1972年に開校した。現在全国10拠点で毎年開催しており、開校から53年を経て、その修了生は実に3万人を超える。
同スクールでは経営者人材候補としての適性を測るためのアセスメント(適性検査)として「Leader KARTE(リーダーカルテ)」を採用している。【図表2】は同スクールの参加者が受験したLeader KARTEの一部である性格特性の平均値である。性格特性は「態度・行動」「ものの見方・考え方」の2つの側面から捉え、計12の要素より判定する。
【図表2】経営者人材候補の性格特性の平均値
出所 : タナベコンサルティング戦略総合研究所作成
理想値と実態値のギャップが押さえるべき課題項目となるが、タナベコンサルティングでは性格特性の結果より、「成果志向」と「関係志向」の2つの視点から見たリーダーシップの4つのタイプを導いている(【図表3】)。成果志向・関係志向ともに高い右上の領域が理想のリーダーシップ特性であり、自分自身で重点を判断し、メンバーを巻き込みながら成果につなげていくことができる傾向にある。
【図表3】リーダーシップの特性
出所 : タナベコンサルティング戦略総合研究所作成
性格特性とリーダーシップ特性は、自律性・活動性・成就性が成果志向、自律性・主張性・社交性が関係志向に関連付けられる。【図表2】から、自律性・活動性・主張性・社交性・成就性はいずれも理想値と受験者平均値にギャップがあり、中でも自律性・主張性はそのギャップが顕著であることが分かる。
以上より、タナベコンサルティングでは経営者人材が発揮すべきリーダーシップを「経営者リーダーシップ」と定義し、その要件を次のように定義している。(【図表4】)
【図表4】経営者リーダーシップの要件
出所 : タナベコンサルティング戦略総合研究所作成
❶ 未来志向
長期的な環境変化に対する洞察力があり、未来の視点から現在とるべき最善策を導く
❷ 戦略的意思決定
事業変革や新規事業の創出、組織事業変革や新規事業の創出、組織変革、買収、統合などの経営における最上位の事項に関する意思決定
❸ 影響力
自らの言動が周囲、社内外に影響を与え、他者を強く突き動かすことができる
これらのリーダーシップ要件は、先述の自律性や主張性との関連性が高い。リーダーシップ要件は日常業務やOJTでは決して具備できるものではなく、中長期ビジョンの構築や中期経営計画の策定、新規事業の開発など、通常は経営層が検討する事項を通じてのみ養うことができる。したがって、企業が経営者人材を輩出するには、リーダーシップ要件をインプットするための人材育成と、さらには経営に参画するための機会創出が極めて大切になる。

ストラテジー&ドメイン エグゼクティブパートナー
大手アパレルSPA企業を経てタナベコンサルティング入社。ライフスタイル産業の発展を使命とし、アパレル分野をはじめとする対消費者ビジネスの事業戦略構築、新規事業開発を得意とする。理論だけでなく、現場の意見に基づく戦略構築から実行まで、クライアントと一体となった実践的なコンサルティングにより、成果に導くと共に経営者人材を創生していくことを信条とする。