その他 2024.02.28

DXフォーラム2024(キタムラ、リコージャパン、リーディング・ソリューションのデジタルトランスフォーメーション)

リーディング・ソリューション:デジタルマーケティングで「新規開拓力」を向上させた5つの事例

 

リーディング・ソリューション:デジタルマーケティングで「新規開拓力」を向上させた5つの事例

 

株式会社リーディング・ソリューション(タナベコンサルティンググループ)

代表取締役
中田 義将 氏

経営コンサルティング会社入社後、グループ会社設立に参画。グループ会社役員を経て、2004年に株式会社リーディング・ソリューションを設立。BtoB企業を中心にマーケティング活動全般の支援を行い、案件発掘力向上のための戦略立案、マーケティングモデル設計、Webサイト設計を得意とする。上場企業・有名企業を中心に、多数のコンサルティング実績、マーケティング支援実績がある。

 

 

BtoBデジタルマーケティングは本当に成果が出るのか?

 

今回の講演では、次の3つについて説明したい。

 

1. BtoBのデジタルマーケティングは本当に成果が出るのか?

2. BtoBデジタルマーケティングで成功している5つのケースの考え方と事例

3. BtoBマーケティングの成功要因

 

 

まず、「BtoBのデジタルマーケティングは本当に成果が出るのか」について、支援先であるA社は、BtoBデジタルマーケティングにこれまで取り組んでいなかったが、4年前から1つの事業分野だけ取り組み、年間約13億円の新規売り上げを創出している。またB社は、約6年間、全事業分野でデジタルマーケティングを取り入れ、年間約7億円を売り上げている。

 

成果を上げる企業が増えた要因として、的確なデジタルマーケティングを実施している、という企業側の要因のほか、「コロナ禍による買い手企業の情報収集のオンライン化加速」「ITリテラシーの高いミレニアム世代の台頭」といった環境変化が挙げられる。

 

注目すべきは、デジタルマーケティングによる売り上げの大半が新規顧客からだということ。一般的にBtoBの新規開拓は難しいが、デジタルマーケティングでは顧客と新しい接点をつくり、そこから売り上げを創っていくことができる。

 

 

成功するBtoBデジタルマーケティングの5つのポイント

 

次に、実際にBtoBデジタルマーケティングで成果を上げるポイントについて、5つのケースから考察する。

 

ケース1:営業力が強い企業のデジタルマーケティング

ケース2:成長期商材のデジタルマーケティング

ケース3:成熟業界におけるデジタルマーケティング

ケース4:高額商材のデジタルマーケティング

ケース5:デジタルマーケティングでビジネスインパクトを出す

 

 

ケース1:営業力が強い企業のデジタルマーケティング

 

前提として、見込み客がウェブに来てから受注につながるまでの確率を押さえておきたい。業界や商材特性などによって数字は変わるが、目安としてウェブサイトに来訪し、個人情報などを入力してもらってCV(コンバージョン)を獲得できるのは0.5~1.5%。ここから商談につながる確率は、問い合わせの場合60~80%、サービス資料のダウンロードの場合は5~20%程度。そこからさらに受注につながるのは10~20%程度という狭き門である。

 

BtoB企業のWebサイト・リード獲得率の実態

BtoB企業のWebサイト・リード獲得率の実態

 

つまり費用をかけて集客しても、全体の98.5%~99.5%は問い合わせをせず、ウェブサイトから離脱してしまっているのが現状である。しかし、打ち手がないわけではない。当社も活用しているのが、企業のIPアドレスから、サイトに来訪した企業と閲覧履歴を割り出すという手法である。

 

例えば、A社から複数名が見に来ている、B社からは2回以上来訪があった、C社からは最近急にアクセスが増えている、D社は価格表をたびたび閲覧している、などを把握することができる。

 

匿名見込み客が可視化されることで、興味や関心の高い新規企業に絞った電話やDMでのアプローチ、案件化のタイミングやニーズの把握、特定規模・業種企業に対する再来訪の広告配信など、打つ手が広がり、プロモーション活動の効率化、成果向上を図ることができる。こうした手法は特に、営業力の強い企業において有効となる。

 

 

ケース2:成長期商材のデジタルマーケティング

 

自社の事業や商品が、製品ライフサイクルのどのあたりに位置付けられているかを把握することは、デジタルマーケティングで成果を出すために非常に重要である。特に、市場ニーズが伸びている「成長期」の商材はデジタルマーケティングと相性が良い。成長期の商材を探す見込み客は検索で情報収集を行う。既存取引先もいないのでウェブ上で取引企業を選定するケースが多く、アプローチしやすい。

 

 

製品ライフサイクルとデジタルマーケティング

製品ライフサイクルとデジタルマーケティング

 

成長期商材にはいくつかの特徴がある。1つは「検索ボリュームが多い」こと。まだ世の中に浸透していない商材のため、買い手側が情報収集の目的でネットを活用することが多く、検索数が増える。

 

2つ目は「情報収集意欲が高い」こと。自ら情報収集し、判断する層を「アーリーアダプター(早期採用者)」と呼ぶが、そうした学習意欲の高い人たちが購買の決裁権を持っていたり、社内で意見が重視される立場にあることも多い。こうした層にリーチができるのも、デジタルマーケティングで成果が出る要因の一つである。

 

さらに、競合企業・製品が急増し、各社が見込み客との接点づくりへ投資する段階であるため、見込み客へのリーチをいかに高め、自社や自社製品を知ってもらうかが鍵となる。この段階ではウェブコンテンツのクオリティー以上に、検索ユーザーにいかにリーチし、見込み客の学習ニーズに応えるさまざまな情報発信を行えるかが、成果創出の重要ポイントになる。

 

また、成長期のデジタルマーケティングでは「キーワード戦略」も重要になる。さまざまな検索をしながら情報収集を行う見込み客の検索行動中に、何度も自社のサイトを表示し、来訪してもらえるようにすることで、信頼を獲得できる。デジタルマーケティングの観点では「検索攻略」が成長期の重要テーマであり、そのためには、検索キーワードに応じたコンテンツを準備することが重要になる。

 

 

ケース3:成熟業界におけるデジタルマーケティング

 

成熟期商材のデジタルマーケティングは、成長期より難しくなる。より保守的で慎重な購買行動を行う「マジョリティー層」が対象になるためだ。社内説明が必要で、問題があったら責任問題になるからである。

 

そうした人たちに購買行動を起こしてもらうには、「実績」や「事例」の訴求が適している。とにかく実績を出し、安心感や信頼を伝えていく。また、アーリーアダプター層ほど情報収集力が高くないので、分かりやすくピンポイントで情報を伝えることも大切。「業種別」「課題別」などに情報を細分化し、「あなたの会社にぴったり」であるというメッセージを伝える必要がある。

 

さらに、他社との差別化を訴求すること。比較・検討が慎重に行われるため、他社との違いを整理して分かりやすく伝える。そういう意味では商材や競合に精通した営業担当者にも、コンテンツ開発などに参加してもらうようにしたい。

 

 

ケース4:高額商材のデジタルマーケティング

 

1000万円以上の高額商材の場合、ここまで説明してきたデジタルマーケティングでは開拓が困難である。高額商品は購買行動が極めて慎重で、どれだけウェブサイトやコンテンツを作り込んでも、広告や検索で知った初見の会社に問い合わせることはない。ウェブに呼び込んでもすぐに購入には結び付かないという特徴がある。

 

高額商材では「認知」が非常に重要になる。もともと知っていた企業や、あらかじめ接点のあった企業に問い合わせする傾向が強いため、認知度を高めるデジタルマーケティングをしていく。

 

また、高い費用を払うので専門性や知見が問われる。さらに「安心・信頼できる企業」かどうかも重視される。そのため、顧客接点の「量」を確保し、「よく知っている相手」に位置付けられるようになることが重要だ。「メールもよく送られてくるし、ウェビナーにも参加した。電話も何度ももらった。資料ももらった」という状況を創り出して、見込み客の信頼を獲得することが最優先である。

 

 

ケース5:デジタルマーケティングでビジネスインパクトを出す

 

ここまで紹介した取り組みをすることで、ある程度の成果を出すことができる。しかし、単発では大きな成果を出しづらい。デジタルマーケティングで何十億円もの成果が出ているケースでは、積極的な社内横展開を行っていることが多い。

 

まず、特定の商材カテゴリーで成功パターンを作って標準化する。成功パターンをもとに、活用できそうな分野に転用していく。さらに転用先で一定の成果が出たら、他の事業部にも導入していくことで大きなビジネスインパクトをもたらす。

 

実際に横展開している例では、「パッケージ」「ノウハウ」「施策」「組織」「マネジメント」という5つの観点から標準化し、これら一式を各事業分野にインストールしていくことで横展開を推進している。

 

デジタルマーケティングの社内横展開でビジネスインパクトを出す

デジタルマーケティングの社内横展開でビジネスインパクトを出す

 

 

デジタルマーケティングの成功要因

 

最後に、デジタルマーケティング成功をしている会社の要因についてまとめたい。ポイントとして、「商品知識」「デジタルマーケティングの知識」「顧客・競合知識」の3つの知識をそろえながら展開している点が挙げられる。当然、「デジタル知識」「テクノロジー知識」「オペレーション知識」を持つ人材は不可欠だが、成果を出すためには、「商品知識」「顧客・競合知識」の知識がより重要になる。

 

 

デジタルマーケティングの成功要因

デジタルマーケティングの成功要因

 

つまり、「商品知識」「顧客・競合知識」をデジタル手段に落とし込む時にデジタルマーケティングの知識が必要になる。この3つを持つ人材を社内外から集め、知識を集約し、方向付けを行うことのできるリーダーがいる会社は、うまくデジタルマーケティングを展開しているケースが多い。

 

もう1つのポイントは、デジタルマーケティングが「案件発掘」「顧客接点強化」の仕組みづくりという点である。短期目線での費用対効果判断では、十分に仕組みを作り上げることができないため、3~4年程度の期間を見据えた投資と位置付けを行うことが、デジタルマーケティングの成果創出には不可欠だ。投資回収を長期間で考える会社ほど成果が出やすく、すぐに回収したいと考えている会社は、十分な投資対効果が得られない傾向がある。

 

分岐点になるのがデジタルマーケティング開始して半年後ぐらいで、その時点で効果が出ていないので投資を減らしたり、リソースを減らしたりすると伸びない。逆に3年ぐらいで成果を出せばよいという心持ちで取り組んだ会社は、どんどん投資を進め、3~5年ぐらいで大きな成果が出ている。これは20年間、BtoBマーケティングを支援してきた私が実感していることである。

 

※図表などのデータは各社講演資料より抜粋したものです。

 

 

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