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コラム 2024.02.28

DXフォーラム2024(キタムラ、リコージャパン、リーディング・ソリューションのデジタルトランスフォーメーション)

DXフォーラム2024(キタムラ、リコージャパン、リーディング・ソリューション)    
タナベコンサルティングは2024年1月18日、「DXフォーラム2024」を開催。「戦略的デジタル実装で、DX(デジタルトランスフォーメーション)を自社に落とし込む」をテーマに、事業ポートフォリオの再編と組織構造改革、それに伴う人事制度の統合や運用を重点テーマに、DXを企業価値を高める手段として活用している3社の取り組みと、タナベコンサルティングによる講演をリアルタイムで配信した。

※登壇者の所属・役職などは開催当時のものです。

   

キタムラ:デジタル経営で業績UP~DX人材の育成から活躍まで~

  キタムラ:デジタル経営で業績UP~DX人材の育成から活躍まで~キタムラ・ホールディングス 上席執行役員 CDO 柳沢 啓 氏  
株式会社キタムラ・ホールディングス 上席執行役員 CDO 株式会社キタムラ 取締役 常務執行役員 株式会社しまうまプリント 取締役 株式会社ラボネットワーク 取締役 柳沢 啓 氏 1997年新卒として入社後、店舗運営やバイヤーを経験。Eコマース事業に着手後は、オムニチャネル戦略によりキタムラのネット事業を急拡大させた立役者。現在は、挑戦を続けるキタムラの一翼を担う、デジタル推進本部長を務めている。
   

DXを進める重要な視点とは?

 

当社が高知県で「キタムラ写真機店」として創業したのは1934年。当時から街の「カメラ屋」はさまざまな進化を遂げてきた。ビックカメラやヨドバシカメラが家電量販店として進化したのに対し、当社は「カメラ専業店」として全国展開する道を歩んできた。その後、カメラ・写真を取り巻く環境は大きく変化し、フィルムカメラが長く市場を独占していたが、2000年代に入るとデジタルカメラが登場。2010年代にはスマートフォンでの撮影が圧倒的に増加した。

 

そうした変化の中、当社は2007年にECサイトを開設し、その後、DXに力を注いできた。DX推進に当たっては、推進力となる人材育成と戦略が重要になる。

 

まず当社がDXを進める上で重視したのが、「攻めと守り」を明確にすること。「守り」では、「効率性と品質の重視」「顧客満足度とロイヤルティーを高める」「経験と知識の活用」の3点を実践する。つまり、既存の製品・サービスをより安く、より良く提供する工夫をはじめ、顧客のニーズに応え続け、信頼関係をさらに深めること、さらに自社の強みや長年培ってきた経験、知識を生かして解決策を見つけることをポイントとした。

 

一方の「攻め」では、「実験的で学習的な姿勢を持つ」「多様性・自律性を尊重する」「内外部から情報・知識を収集する」ことを重視。特に、失敗を恐れずにアイデアを試して改善することが大切で、そのためには異なるバックグラウンドや視点を持つ人々が自由に発想・提案できる環境をつくることが重要である。

 

「攻めと守り」の明確化と併せて、重要な視点として挙げたいのが「知を深めるサイクル」である。顧客・従業員・事業を知る「知識化」、フレームワークにする、関係性を創造する、在るべき姿を定義するといった「構造化」、素早く市場に出す、何を得て何を捨てるのかを決める、連続性を意識するなどの「試作化」、完全ではなく7割を目指す、完成はない、顧客が答えを出す「本番化」というサイクルをPDCAで回して、DXを推進していくことを定めた。

  DXを進める重要視点「知を深めるサイクル」  

DX人材の育て方

 

こうした環境を創出するためには「DX人材」が不可欠になる。当社の場合、初めからDX人材が在籍していたわけではない。なお、DX人材とはデジタル技術や知識、リテラシーに精通した人材ではなく、デジタルを活用してビジネスや業務の在り方を変えられる人材を指す。

 

では、どのように「DX人材」を育ててきたのかというと、2通りの方法で実践してきた。1つ目は、もともとデジタルの知識を持った人たちを社外から採用し、当社のビジネスやサービスの在り方について理解してもらう、「D(デジタル)→A(アナログ)→DX(デジタルトランスフォーメーション)」というアプローチである。そして2つ目は、店舗接客などを経験してきた従業員にデジタル知識を身に付けてもらう「A→D→DX」というアプローチである。

 

その際、2つの「壁」が立ちはだかる。まず、「D→A→DX」では「合理と情理の壁」がある。デジタルの合理性だけでなく、当社で脈々と継続してきた店舗ビジネスを把握し、その立場を理解し、「情理」という側面を大切にしないと社内に軋轢(あつれき)が起きやすく、結果としてデジタル化が進まないという事態に陥る。

 

一方の「A→D→DX」では、「データの壁」がある。これまで店舗スタッフも売り上げなどのデータを扱ってきたとはいえ、不慣れなため徹底したデータ活用できる知識や発想に乏しい。そこで、データからさまざまな付加価値を創出するという発想を身に付けることが不可欠になる。この2つの壁を乗り越えることで、真の「DX人材」が生まれる。

 

当社のDXの取り組みのきっかけになった2007年のECサイト開設時は、店舗スタッフ7,000名に対し、デジタル担当はわずか5名だった。その後、ECサイトと店舗を連携させたオムニチャネルを構築するため、店舗にタブレット端末を導入するなどの施策を順次行うことで人員を拡大。随時、社内公募した結果、現在では120名のデジタル担当スタッフが在籍している。

 

また、自社ECサイトを立ち上げ本格参入した2007年の売り上げに対するEC関与率は11%だったが、店舗にタブレット端末を導入した2012年には37%、そして新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年が55%、2022年には60%まで増加。今や当社にとってECは事業を支える大きな柱になっている。

 

オムニチャネル戦略のポイントは、リアル店舗とECの優位点を融合させること。ECサイトにより来店する顧客が増え、単価がアップすると、店舗スタッフも協力してくれるようになり、相乗効果が見込める。品ぞろえ、価格、コミュニケーションなど、それぞれの良さを生かし、補い合うことができたことが、当社EC事業成長の要因である。まずは1人からでもAtoDへの挑戦を始め、仲間を増やしながらデジタル人材を増やし、DXの流れを伝播させていくことがポイントとなる。

  リアル店舗とECの優位点を融合  

AtoDへの挑戦事例~デジタル活用で業績を向上~

 

次に、当社の具体的なデジタル活用について触れたい。当社が事業展開する写真スタジオの「スタジオマリオ」では、衣装のマスター管理などにデジタルを活用している。スタジオマリオでは、以前からスタイリング撮影が増えることで単価が上がることを把握していた。さまざまな衣装を着て複数の撮影をすることで、単価が上がるというわけだ。ところが、衣装のマスター管理がされておらず、顧客が欲しい衣装が店舗にあるのかが分からない状態だった。

 

そのため、「どの店にどの衣装があるのか」「どの衣装がどのくらい利用されているのか」を把握することを目指した。全ての衣装に手作業でタグを付けて管理する方法も考えたが、それでは店舗の業務が増えてしまう。そこで考えたのが、撮影したデータを基にマスター管理するという方法。店舗で撮影したデータを転送し、AIが自動でタグ付けを行い、それを集計することで、どの店舗にどんな衣装があり、どの時期にどの衣装が利用されているのか、自動で管理することが可能になった。

 

撮影データを1年間収集することで、どの店舗でどの衣装が、どの時期に利用されているのを把握でき、人気の衣装と在庫の充足率の可視化に成功。人気衣装と在庫保有数の比較ができるようになったので、店舗ごとにどの衣装を仕入れればいいのかが把握でき、衣装の補充発注額が3分の2に減少した。

    スタジオマリオはデジタル活用により全店の衣装管理を見える化。単価アップだけでなく、衣装補充の費用を従来の3分の2に削減できた スタジオマリオはデジタル活用により全店の衣装管理を見える化。単価アップだけでなく、衣装補充の費用を従来の3分の2に削減できた  

同様に、カメラのキタムラでもAIを駆使し、他事業へDXの流れを伝播させていった。カメラ市場では、新品カメラの売り上げが下がる中、中古カメラ市場は拡大している。しかし一方で、中古カメラを査定できるプロフェッショナルの数は限られている。当社でも店舗スタッフが6,000名弱いる中、わずか50名しかいない。そのため、買い取りをしたくても700店舗全店での買取ができないというジレンマに陥っていた。

 

「機種が分からない」「査定結果がばらつく」という課題の解決策として、査定の経験がないスタッフでも的確な査定ができるようAIを導入した。査定判定となるカメラの撮影データを各店舗で撮影し、それを集めて精度の高い教師データを生成。加えて、当社で築いてきた査定ノウハウのデータも組み込んで、正確に査定できる仕組みを構築した。

 

このAI査定の導入で、査定経験にない店舗スタッフも臆することなく買い取りができるようになり、全国の店舗で「買取キャンペーン」を実施するCMを打って買取数が大幅にアップ。しかも査定にかかる時間が短縮されて業務効率が飛躍的に向上した。

 

現在着手しているのが、AIによる自動査定の仕組みやノウハウの横展開である。その手始めが中古時計の買い取りだ。中古カメラと同様、中古の高級時計もリユースが活発な市場で売買のニーズは高いが、こちらも目利きのできる人材が少ない。

 

そこでAIによる自動査定を導入し、すでに成果を上げている。リユース事業が拡大していることを考えると、いち早くDXに取り組んだことが、大きな成果となって売上拡大に貢献している。

   

リコージャパン:“バックオフィスから始めるDX”と“経営の可視化”の同時実現への挑戦

  リコージャパン:“バックオフィスから始めるDX”と“経営の可視化”の同時実現への挑戦 リコージャパン 執行役員 デジタルサービス企画本部 副本部長 服部 伸吾 氏  
リコージャパン株式会社 執行役員 デジタルサービス企画本部 副本部長 服部 伸吾 氏 1986年リコーグループ入社、20年余りをシステム営業部門で従事。2009年にリコージャパンの中小企業向けITサービス「ITKeeper」、2019年には「スクラムアセット」を責任者として立ち上げる。2022年に執行役員に就任し、リコージャパンのSEサービス全般を担当。2023年からはRDPSおよびマネージドサービス全般を担当。
   

経営の可視化とDX推進は表裏一体

 

経営戦略とDXの推進は、表裏一体で切り離せない関係にある。経営にITを使い自社のビジョンや目的、あるべき姿を可視化することが、DXに向けた戦略になる。経営戦略の立案、年度別計画・方針の策定・立案(Plan)が重要であるとともに、計画の実行(Do)をチェック(Check)しながら改善(Action)のサイクルが回っているか、適正化する外部からの評価も大事である。デジタルがなければ戦略を実行できないから「使いこなす」、あるいはデジタル「だからこそ」可能な戦略によって、新たな顧客価値を提供できる。

 

従来のITは業務の改善・改革ツールだったが、DXは企業の圧倒的な生産性向上を狙った投資であり、狙い通りの生産性向上が見られなければ、投資に見合わない。生産性向上には、成果物の最大化と投入資源の最小化の両方が必要である。ITにつぎ込むリソースを最小・最適化し、最大の成果を得る視点が重要で、経営機構がビジネス主体で推進すべきである。

 

一方で、業務効率化は成果よりも投入資源を減少する視点で、IT部門主体でも推進可能になる。2つの視点と主体の違いを頭に入れ、生産性向上を狙うDXを進めることが重要である。

   

リコージャパンのデジタルサービスとDX

 

リコーグループはシステムインテグレーターとしての歴史は長く、独自のオフコンをつくった時代から、中堅・中小企業の課題解決のサポートを続けてきた。現在は、データドリブン経営を支援するソリューションモデル「スクラムアセット」、クラウド型のアプリケーションのベースとなる「Empowering Digital Workplaces(EDW)プラットフォーム」などのデジタルサービスを、100万事業所の顧客に寄り添いながら、約350拠点・約1万8500人の従業員が提供している。

 

リコージャパンは、ITのエンドポイント(デジタル機器)、アプリ、インフラにサポート&サービスを組み合わせ、企業規模ごとに最適な業種・業務課題解決モデルを展開。近年は、インボイス制度や改正電子帳簿保存法などの法律対応、企業間取引や現場のデジタル化、社内ビジネスプロセスの効率化など、多様なDX推進を支援。新たに、タナベコンサルティングとの協業により、システムにとどまらず経営そのものを変えるソリューションも展開している。

 

リコージャパンのDX推進体制としては、経営機構のDX委員会とIT部門主体のDX推進センターの両輪を回して運用している。DX委員会は社長がトップの直轄組織で、DXに関する全社活動方針の策定、顧客へのDX提供価値の創造など、デジタル化の大方針を決める。

 

その方針に基づき、DX推進センターは社内システムの企画及び構築システムの運用改善を担う。

 

DXの実現に向け、4つのフレームで戦略テーマを設定する。特に重要なのは「顧客」「価値創出」の2軸である。顧客により多くの価値を迅速に届け、満足いただけるかを視野に、顧客に向かうプロセス改革である。

   

リコージャパンのDX実現に向けたテーマ設定

リコージャパンのDX実現に向けたテーマ設定

DX時代にふさわしいシステム構築・開発としては、4つの基本方針を設定している。

 

① BizDevOps:ビジネス部門とIT部門が一体となって事業方針、システム化方針を理解し事業目標を達成する。

 

② Cloud First/Fit To Standard:クラウドを活用し、カスタマイズではなく標準システムに運用を合わせ、効果をいかに早く出すかを重視する。

 

③ アジャイル:反復型開発で、戦略KPI(重要業績評価指標)のPDCAサイクルを回すまでを迅速化する。

 

④ UI/UX:エンドユーザーである社員が心地良く直感的に使えることを重視し、日常に溶け込むことを目指す。

   

戦略の評価指標は、戦略に基づくKGI(重要目標達成指標)・KPIを設定し可視化する。職種ごとに、セールス(営業)はアポ獲得数や受注数、平均利益率、マーケティングはページビュー数、コンバージョン率、リード数、システム開発やカスタマーサクセスもそれぞれにKPIを設定する。ROIC(投下資本利益率)をはじめとする財務指標のKGIにどう関与し、連動しているのかが分かるKPIを設定することも重要になる。

 

評価指標の可視化フローについては、戦略・方針からPDCAを回していく。日々発生するデータを収集、統合・加工、蓄積し、可視化・分析、チェックまで回す。また、策定した戦略・計画やKPIが本当に正しかったのか、分析結果をモニタリングすることで、新たな戦略に反映する。

 

特に重要なのは、データを正しく集めること、正しいサイクルでチェックを行うこと。必要な時に必要なサイクルで分析できる正しいデータ収集・チェックを目指し、普遍なサイクルとして理解しながらDXを進めることである。

   

評価指標の可視化フロー

評価指標の可視化フロー    

評価指標の可視化基盤として、さまざまなデータ生成元が企業内に散在している。バックオフィスシステムには結果データが集まり、SFAは契約管理、各部門システムはプロセス中心のデータになる。それらのデータをETL・EAIなどのデータ連携ツールやRPAを利用して収集から活用までを構造化し、必要なKGI・KPIを、経営・事業・担当レベルがそれぞれに、適正なサイクルで、必要な人に必要なカタチで見せられることが重要である。

   

課題創造型へ変革し、生産性を向上

 

リコージャパンの方針・戦略は、課題創造型体質へ変革し、生産性を上げながら業績を高めること。また、顧客の理解を深め、課題を深掘りして新たなニーズも発掘し、事業成長に貢献することである。そのために、価値づくり、顧客づくり、人づくりという3つの方針を掲げている。

 

価値づくりは、顧客価値が高く競争力ある事業・ビジネスモデルの強化・創出。顧客づくりは、市場・顧客を重点化した高効率な顧客接点体制の構築。人づくりは、顧客接点で価値を創造できるプロフェッショナル人材の育成である。

 

特に、顧客づくりに向けて「顧客数・取引量を増やす」「課題創造力を上げる」「さらなる生産性向上に向けた取り組み」という3つの施策を進めている。財務計画や取引事業所数、案件(成約数、単価、事業所単価)のKGI、そのプロセスとなる面談件数などのKPIも設定している。

 

指標に対する社員の行動評価のフレームワークも確立している。営業担当者の場合、顧客との面談の質を測る「面談レベル」を6段階で指標化。顧客のニーズを聞き出し、ビジネスにつながる面談を行う「レベル4」が個々の成長目標となり、営業活動の量と質を高める工夫も各拠点でマネジメントしている。

 

社内で顧客づくりを推進するプログラムのポータルサイトも開設している。拠点・個々のレベル別面談件数や推移をグラフチャートで公表し、自他の達成度合いを可視化・共有して、スキルアップや次なるアクションにつなげている。また、マネジャー連携・支援による面談の獲得にも役立てている。属人的な営業活動から、数値でパフォーマンスやプロセスを管理する事業展開へのシフトを進めている。

 

また、生産性向上に向けて、セールスの接点活動情報の共有を進めてきた。今後はさらに、カスタマーエンジニアやシステムエンジニア、コールセンターなど、全職種の顧客接点活動の情報共有を進める。データを一元化し、リアルタイムで顧客の現状や課題を蓄積し活用を迅速化して、案件の発生率・成約率、顧客づくりの活動量・質をさらに高めていく。

   

リアルタイムのデータ共有で組織生産性向上と案件創造力の強化へ

 

リコージャパンは、デジタルサービス企業として「モノ軸」から「課題軸」に変革していくために、顧客接点活動の量と質を高め、組織生産性の向上と案件創造力の強化を目指している。そのためにいま、プロセスマネジメントとプロセスデータの見える化を強化している。スマートフォンでさまざまな活動情報をデータとして入力・登録・閲覧できる環境を提供し、顧客情報の一元化や顧客課題を可視化していく。

 

リコーグループには、セールス活動のさまざまなデータが各システムに記録保管されている。基盤となる同社の保管データは、顧客データ、企業データで数百万レコード(データベースを構成する単位の1つ)および売上明細は億単位のレコードと非常に多い。それらを連携させて蓄積、分析、可視化すると同時に、顧客接点の現場で正しいデータを正しいタイミングで入力・登録してもらい、効率も向上させていく。社員の入力・登録のモチベーションが上がり、円滑に日々の活動を登録できる環境を整えることが重要になる。

 

世界的な紛争や天災など予測不能なことにも対応が求められる時代になっている。物流や拠点の見直し・分散など、企業が置かれる環境は複雑・高度化していく。だからこそ、リアルタイムでデータを把握し、次の一手を迅速に意思決定することが重要になる。

 

データを蓄積・分析・活用する経営の可視化とDX化を両輪で進めることが望ましい。2020年からIT導入補助金政策が始まっている。リコージャパンは中堅・中小企業のデジタル化支援に、今後もしっかりと伴走していく。

 

※図表などのデータは各社講演資料より抜粋したものです。

 

リーディング・ソリューション:デジタルマーケティングで「新規開拓力」を向上させた5つの事例

  リーディング・ソリューション:デジタルマーケティングで「新規開拓力」を向上させた5つの事例  
株式会社リーディング・ソリューション(タナベコンサルティンググループ) 代表取締役 中田 義将 氏 経営コンサルティング会社入社後、グループ会社設立に参画。グループ会社役員を経て、2004年に株式会社リーディング・ソリューションを設立。BtoB企業を中心にマーケティング活動全般の支援を行い、案件発掘力向上のための戦略立案、マーケティングモデル設計、Webサイト設計を得意とする。上場企業・有名企業を中心に、多数のコンサルティング実績、マーケティング支援実績がある。
   

BtoBデジタルマーケティングは本当に成果が出るのか?

 

今回の講演では、次の3つについて説明したい。

 

1. BtoBのデジタルマーケティングは本当に成果が出るのか?

2. BtoBデジタルマーケティングで成功している5つのケースの考え方と事例

3. BtoBマーケティングの成功要因

   

まず、「BtoBのデジタルマーケティングは本当に成果が出るのか」について、支援先であるA社は、BtoBデジタルマーケティングにこれまで取り組んでいなかったが、4年前から1つの事業分野だけ取り組み、年間約13億円の新規売り上げを創出している。またB社は、約6年間、全事業分野でデジタルマーケティングを取り入れ、年間約7億円を売り上げている。

 

成果を上げる企業が増えた要因として、的確なデジタルマーケティングを実施している、という企業側の要因のほか、「コロナ禍による買い手企業の情報収集のオンライン化加速」「ITリテラシーの高いミレニアム世代の台頭」といった環境変化が挙げられる。

 

注目すべきは、デジタルマーケティングによる売り上げの大半が新規顧客からだということ。一般的にBtoBの新規開拓は難しいが、デジタルマーケティングでは顧客と新しい接点をつくり、そこから売り上げを創っていくことができる。

   

成功するBtoBデジタルマーケティングの5つのポイント

 

次に、実際にBtoBデジタルマーケティングで成果を上げるポイントについて、5つのケースから考察する。

 

ケース1:営業力が強い企業のデジタルマーケティング

ケース2:成長期商材のデジタルマーケティング

ケース3:成熟業界におけるデジタルマーケティング

ケース4:高額商材のデジタルマーケティング

ケース5:デジタルマーケティングでビジネスインパクトを出す

   

ケース1:営業力が強い企業のデジタルマーケティング

 

前提として、見込み客がウェブに来てから受注につながるまでの確率を押さえておきたい。業界や商材特性などによって数字は変わるが、目安としてウェブサイトに来訪し、個人情報などを入力してもらってCV(コンバージョン)を獲得できるのは0.5~1.5%。ここから商談につながる確率は、問い合わせの場合60~80%、サービス資料のダウンロードの場合は5~20%程度。そこからさらに受注につながるのは10~20%程度という狭き門である。

 

BtoB企業のWebサイト・リード獲得率の実態

BtoB企業のWebサイト・リード獲得率の実態  

つまり費用をかけて集客しても、全体の98.5%~99.5%は問い合わせをせず、ウェブサイトから離脱してしまっているのが現状である。しかし、打ち手がないわけではない。当社も活用しているのが、企業のIPアドレスから、サイトに来訪した企業と閲覧履歴を割り出すという手法である。

 

例えば、A社から複数名が見に来ている、B社からは2回以上来訪があった、C社からは最近急にアクセスが増えている、D社は価格表をたびたび閲覧している、などを把握することができる。

 

匿名見込み客が可視化されることで、興味や関心の高い新規企業に絞った電話やDMでのアプローチ、案件化のタイミングやニーズの把握、特定規模・業種企業に対する再来訪の広告配信など、打つ手が広がり、プロモーション活動の効率化、成果向上を図ることができる。こうした手法は特に、営業力の強い企業において有効となる。

   

ケース2:成長期商材のデジタルマーケティング

 

自社の事業や商品が、製品ライフサイクルのどのあたりに位置付けられているかを把握することは、デジタルマーケティングで成果を出すために非常に重要である。特に、市場ニーズが伸びている「成長期」の商材はデジタルマーケティングと相性が良い。成長期の商材を探す見込み客は検索で情報収集を行う。既存取引先もいないのでウェブ上で取引企業を選定するケースが多く、アプローチしやすい。

   

製品ライフサイクルとデジタルマーケティング

製品ライフサイクルとデジタルマーケティング  

成長期商材にはいくつかの特徴がある。1つは「検索ボリュームが多い」こと。まだ世の中に浸透していない商材のため、買い手側が情報収集の目的でネットを活用することが多く、検索数が増える。

 

2つ目は「情報収集意欲が高い」こと。自ら情報収集し、判断する層を「アーリーアダプター(早期採用者)」と呼ぶが、そうした学習意欲の高い人たちが購買の決裁権を持っていたり、社内で意見が重視される立場にあることも多い。こうした層にリーチができるのも、デジタルマーケティングで成果が出る要因の一つである。

 

さらに、競合企業・製品が急増し、各社が見込み客との接点づくりへ投資する段階であるため、見込み客へのリーチをいかに高め、自社や自社製品を知ってもらうかが鍵となる。この段階ではウェブコンテンツのクオリティー以上に、検索ユーザーにいかにリーチし、見込み客の学習ニーズに応えるさまざまな情報発信を行えるかが、成果創出の重要ポイントになる。

 

また、成長期のデジタルマーケティングでは「キーワード戦略」も重要になる。さまざまな検索をしながら情報収集を行う見込み客の検索行動中に、何度も自社のサイトを表示し、来訪してもらえるようにすることで、信頼を獲得できる。デジタルマーケティングの観点では「検索攻略」が成長期の重要テーマであり、そのためには、検索キーワードに応じたコンテンツを準備することが重要になる。

   

ケース3:成熟業界におけるデジタルマーケティング

 

成熟期商材のデジタルマーケティングは、成長期より難しくなる。より保守的で慎重な購買行動を行う「マジョリティー層」が対象になるためだ。社内説明が必要で、問題があったら責任問題になるからである。

 

そうした人たちに購買行動を起こしてもらうには、「実績」や「事例」の訴求が適している。とにかく実績を出し、安心感や信頼を伝えていく。また、アーリーアダプター層ほど情報収集力が高くないので、分かりやすくピンポイントで情報を伝えることも大切。「業種別」「課題別」などに情報を細分化し、「あなたの会社にぴったり」であるというメッセージを伝える必要がある。

 

さらに、他社との差別化を訴求すること。比較・検討が慎重に行われるため、他社との違いを整理して分かりやすく伝える。そういう意味では商材や競合に精通した営業担当者にも、コンテンツ開発などに参加してもらうようにしたい。

   

ケース4:高額商材のデジタルマーケティング

 

1000万円以上の高額商材の場合、ここまで説明してきたデジタルマーケティングでは開拓が困難である。高額商品は購買行動が極めて慎重で、どれだけウェブサイトやコンテンツを作り込んでも、広告や検索で知った初見の会社に問い合わせることはない。ウェブに呼び込んでもすぐに購入には結び付かないという特徴がある。

 

高額商材では「認知」が非常に重要になる。もともと知っていた企業や、あらかじめ接点のあった企業に問い合わせする傾向が強いため、認知度を高めるデジタルマーケティングをしていく。

 

また、高い費用を払うので専門性や知見が問われる。さらに「安心・信頼できる企業」かどうかも重視される。そのため、顧客接点の「量」を確保し、「よく知っている相手」に位置付けられるようになることが重要だ。「メールもよく送られてくるし、ウェビナーにも参加した。電話も何度ももらった。資料ももらった」という状況を創り出して、見込み客の信頼を獲得することが最優先である。

   

ケース5:デジタルマーケティングでビジネスインパクトを出す

 

ここまで紹介した取り組みをすることで、ある程度の成果を出すことができる。しかし、単発では大きな成果を出しづらい。デジタルマーケティングで何十億円もの成果が出ているケースでは、積極的な社内横展開を行っていることが多い。

 

まず、特定の商材カテゴリーで成功パターンを作って標準化する。成功パターンをもとに、活用できそうな分野に転用していく。さらに転用先で一定の成果が出たら、他の事業部にも導入していくことで大きなビジネスインパクトをもたらす。

 

実際に横展開している例では、「パッケージ」「ノウハウ」「施策」「組織」「マネジメント」という5つの観点から標準化し、これら一式を各事業分野にインストールしていくことで横展開を推進している。

 

デジタルマーケティングの社内横展開でビジネスインパクトを出す

デジタルマーケティングの社内横展開でビジネスインパクトを出す    

デジタルマーケティングの成功要因

 

最後に、デジタルマーケティング成功をしている会社の要因についてまとめたい。ポイントとして、「商品知識」「デジタルマーケティングの知識」「顧客・競合知識」の3つの知識をそろえながら展開している点が挙げられる。当然、「デジタル知識」「テクノロジー知識」「オペレーション知識」を持つ人材は不可欠だが、成果を出すためには、「商品知識」「顧客・競合知識」の知識がより重要になる。

   

デジタルマーケティングの成功要因

デジタルマーケティングの成功要因  

つまり、「商品知識」「顧客・競合知識」をデジタル手段に落とし込む時にデジタルマーケティングの知識が必要になる。この3つを持つ人材を社内外から集め、知識を集約し、方向付けを行うことのできるリーダーがいる会社は、うまくデジタルマーケティングを展開しているケースが多い。

 

もう1つのポイントは、デジタルマーケティングが「案件発掘」「顧客接点強化」の仕組みづくりという点である。短期目線での費用対効果判断では、十分に仕組みを作り上げることができないため、3~4年程度の期間を見据えた投資と位置付けを行うことが、デジタルマーケティングの成果創出には不可欠だ。投資回収を長期間で考える会社ほど成果が出やすく、すぐに回収したいと考えている会社は、十分な投資対効果が得られない傾向がある。

 

分岐点になるのがデジタルマーケティング開始して半年後ぐらいで、その時点で効果が出ていないので投資を減らしたり、リソースを減らしたりすると伸びない。逆に3年ぐらいで成果を出せばよいという心持ちで取り組んだ会社は、どんどん投資を進め、3~5年ぐらいで大きな成果が出ている。これは20年間、BtoBマーケティングを支援してきた私が実感していることである。

 

※図表などのデータは各社講演資料より抜粋したものです。

   
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