2023年11月、タナベコンサルティングは「2024年度経営戦略セミナー」にて、「クオリティリーダーシップ戦略※1―デフレ経済からインフレ経済へのマインドセット」を提言した。
それから約3カ月後の2024年2月16日、政府は従業員2000人以下の企業を新たに「中堅企業」と定義し、投資やM&A、雇用拡大、賃上げを促進する目的の税制優遇や補助金提供、金融支援を行う「産業競争力強化法改正案」を閣議決定した。全国約9000社が対象となる。
タナベコンサルティンググループ(TCG)のクライアントの中でも多いのが、この中堅企業である。その特徴は、「リージョン(地域)」「独自性と卓越性」「グループ経営」「若く挑戦意欲の高い経営者」と言える。
まず、中堅企業は大企業と異なり、東京に集中しているわけではない。むしろ、各地域にこそ優秀な中堅企業が多い。地域愛が強く、雇用拡大をはじめ地域活性化に貢献する社会価値も高い。
また、歴史の中で培ってきた独自性と卓越性を持ち、グローバルニッチトップなど国際競争力を有する企業が多い。それだけに収益力も資金力も抜群だ。
近年は、M&Aや新しい事業の開発で事業数が拡大したことにより、ホールディングス・グループ経営体制を取り、さらなる成長に向けた経営体制へ変貌を遂げる企業が増えてきた。
若い経営者が多いのも特徴だ。肌感だが、大手上場企業と比べて10歳ほど若いのではないだろうか。挑戦意欲おう盛で、設備やM&Aなどへの投資、デジタルなど新しい経営技術の導入にも積極的である。
私は今回の政策に好感を持っている。なぜなら、中堅企業9000社の成長は、日本経済・地域経済にとってインパクトが大きいからだ。しかも、クオリティリーダーシップ戦略を実践することで、次世代型の成長を実現できる企業が多い。税制優遇面から中小企業※2にとどまっていた企業も経営マインドをリセットし、成長と向き合うことにつながると期待している。
中小企業は中堅企業へ進化し、中堅企業は日本経済の先頭に立ち、クオリティリーダーシップを実現していこう。TCGはそのための支援を使命とし、クライアントの期待に応えていく。
※1 各企業が持つ独創的な強みを磨き上げ、ブランディングすることにより競争優位性を確立する経営戦略
※2 従業員300人以下、または資本金3億円以下の企業(製造業の場合)
北海道支社長、取締役/東京本部・北海道支社・新潟支社担当、2009年常務取締役、2013年専務取締役を経て、現職。経営者とベストパートナーシップを組み、短中期の経営戦略構築を推進し、オリジナリティーあふれる増益企業へ導くコンサルティングが信条。クライアントの特長を生かした高収益経営モデルの構築を得意とする。著書に『企業盛衰は「経営」で決まる』(ダイヤモンド社)ほか。