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コラム
トップマネジメント変革
経営者は、持続的成長を実現するため「変化を経営するリーダー」でなければなりません。トップ自らが変化を起こす主役であるための着眼点について提言します。
コラム 2025.03.28

Vol.6変化を経営するリーダーシップ

本連載では「チームコンサルティングバリュー クライアントを成功へ導く18のブランド」(ダイヤモンド社、2023年)から抜粋したメソッドをご紹介します。Vol.6は、持続的な成長を支える経営者の姿勢について提言します。

 

変化を経営し企業の成長を導く

 

「あなたの会社の事業セグメントは変化しているか」。変化を経営してきたリーダーシップの証しの一つがこれである。戦略とは経営資源の再配分である。事業ポートフォリオ、バリューチェーン、そしてビジネスモデルが変革すると必ず事業セグメントに表れる。先に述べたように、会社は一〇〇年経営の間に創業三〇年、五〇年、七〇年の節目に、少なくとも三回は事業のトランスフォーメーションのタイミングが来る。事業センスの欠如でそのタイミングを逃すと会社の生存率が低下する。私は以前、「変化を経営するリーダー」である三人の経営者とご一緒する機会があり、大いに学びを得た。一人目は、大和ハウス工業の最高顧問・樋口武男氏(当時会長兼CEО)である。

 

樋口氏からは、事業セグメントの変革について話を伺った。二〇〇〇年代初め頃の同社の事業セグメントは住宅、ホームセンター、ホテル経営であった。だが、その後の一〇年で物流、不動産、介護、ロボットなどが新たに加わった。祖業の住宅はあるのだが、一〇年で大きく変化したのだ。これは同社の創業者・石橋信夫氏の志である「世の中の多くの人の役に立ち、喜んでもらう」事業、すなわち「明日不可欠の」事業をやろうと誓って取り組んだ結果だという。
 

〝明日不可欠の〟とは、「ア(安全・安心)、ス(スピード・ストック)、フ(福祉)、カ(環境)、ケ(健康)、ツ(通信)、ノ(農業)」のドメインを示している。当時、樋口氏は二兆円を超える会社を経営しているにもかかわらず、多くの時間を割いて創業者の話をされた。私はそのとき、「樋口会長は変化の名人ですね」と申し上げたことを覚えている。

 

二人目は、学研ホールディングスの代表取締役社長・宮原博昭氏である。学研は学習教材会
社から、ライフステージビジネスへと大転換を果たした。その結果、連結売上高が七七八億円(二〇〇八年度)から、一五六〇億円(二〇二一年度)にまで伸長し、事業の再構築に成功した。

 

M&Aで加わった企業の売上高がグループ売上高の約四割に上る。

 

宮原氏が向き合ったのも「創業の原点」であった。まずは既存事業の立て直し、社内改革から始めたのである。その後、M&Aを活用し、既存事業から枝を伸ばして事業領域をつなげる成長戦略をとった。今、最も事業セグメントの構成比が高いのは「医療福祉事業」である(次いで「塾・教室事業」「出版コンテンツ事業」「園・学習事業」が続く)。この変革は、宮原氏が祖業の教材事業と向き合った結果であると分析できる。当時薄れかけていた創業者スピリッツを組織へ再定義して成功を収めた。

 

そして三人目は、カルビーの代表取締役社長兼CEО(当時)・伊藤秀二氏である。伊藤氏も、変化を経営するリーダーシップを発揮された経営者である。創業期に生み出した、同社の原点とも呼べる商品「かっぱえびせん」が超ロングセラーであることを語りながら、自らリーダーシップを発揮してヒット商品を重ね合わせ、同社の事業開発の文化を地に足のついたものへと昇華させた。グループ戦略の変革や、創業の地・広島への最新工場の投資を決断した生産戦略など、過去と正しく向き合い、現実を直視し、未来を創造することにまい進した経営者は強い。

 

先に述べたように、ある意味で「創業者を丸呑み」する気迫すら感じさせた。彼らはまさに「変化を経営してきたリーダー」である。
 

ちなみに、私自身もTCGの創業者が掲げた志「企業を愛し、共に歩み、繁栄に奉仕する」ことを実現するため、トップ就任後に、東証一部(プライム)市場上場(二〇一六年九月二八日)、新中期ビジョンの策定(コンサルティング多角化戦略)、二本社組織体制への移行(大阪本社・東京本社)、M&A(五社)によるグループ経営、ホールディングス経営への移行、五五年ぶりの社名変更(タナベコンサルティンググループ)、新しいセグメント&リージョン組織と人事制度の刷新、ERPシステムやCRMシステムの導入によるスマートDX戦略、ダイバーシティー&インクルージョン制度、アカデミー(企業内大学)&ジュニアボード、初のテレビCMなどのブランディング活動といった変化を、TCGトップマネジメントや社員の皆さんと実行してきた。そして、その変化と成長は今も続いている。

 

リーマン・ショック、東日本大震災、新型コロナウイルスパンデミックなど、短期間に多くの有事を経てきた「新時代」においては、経営センスの発揮も容易ではなくなった。「新しい経営技術」を駆使しなければ、トランスフォーメーションという事業戦略を経営面からサポートできない時代になってきた。それらを高度に融合させるのが〝事業経営〟なのだ。