メインビジュアルの画像
研究リポート
物流経営研究会
”物流は世の中を支えている”にもかかわらず、他業種と比較して長時間労働、低賃金です。第7期は高収益ビジネスモデル、人財確保・デジタル化への取組を全6社と参加企業から学びます。
研究リポート 2025.05.16

小売業の物流グループ会社が果たすべき役割 ~ サプライチェーンの全体最適を目指す ~ ロジディア

【第3回の趣旨】
物流は社会インフラとして重要な役割を担っているにもかかわらず、その位置付けが十分に高まっていない。このため、物流事業従事者の不足が深刻化し、「運べなくなる」という問題が指摘されている。
さらに、カーボンニュートラルへの対応や自然災害を含むBCP対応、原料高騰といった経営課題の解決にも物流は大きく関与している。しかし、物流機能や物流事業者だけでは単独での改善には限界がある。そのため、物的流通、ロジスティクス、サプライチェーンと視点を広げ、着荷主を含む荷主や荷主も一緒になって、それぞれの立場で担うべき役割を再考し、過去からの商慣習を見直すことが、持続可能な物流の実現に必要不可欠である。
第9期物流経営研究会は「商習慣の見直しは待ったなし」をテーマに、視察企業や講義を基に「ビジネスモデルの変革」に対するヒントを提供。また、「デジタル化」「環境対応」「採用」「育成」などの課題解決の糸口となるよう、参加企業が学び、高め合う場としている。
第3回はサプライチェーンの全体最適を目指す株式会社ロジディア様より、小売業の物流グループ会社が果たすべき役割についてご講演いただいた。

開催日時:2025年2月6・7日(九州開催)

 

はじめに

 

大手ディスカウントストアである株式会社ミスターマックスを中核とする、株式会社ミスターマックス・ホールディングス。同社が2022年11月に設立した、グループの物流事業を担当する子会社が株式会社ロジディアである。ロジディアは、既存の取引先に加え、他社の商品集荷や在庫管理などを行うことで、物流支援サービスの充実を図り、業容の拡大を目指す。

 

社名には「物流(Logistics)をロジカル(Logical)に考え、新たなアイディア(Idea)を創造する集団でありたい」という思いが込められている。

 

今回は、サプライチェーンの全体最適を目指す小売業の物流グループ会社が果たすべき役割について、元ミスターマックス物流部長であり、現在は株式会社ロジディアの代表取締役社長である守矢尚之氏にご講演いただいた。

 


「価値ある安さ」を提供することを目指す企業グループをロジディアは物流領域で支えている。
(出所:講演資料)

 


 

ロジディアの設立経緯

 

ミスターマックス内で物流プロジェクトが発足し、物流センターの設立やベンダーサポートを推進する中、2012年にベンダーサポートの収益化を達成。これを契機にサポート項目の拡大を進め、2019年には事業利益が1億円を突破した。しかし、さらなる事業拡大を目指す上で、小売業の物流部門としての枠組みではさまざまな制約が生じていた。この課題を解決するため、物流会社の設立が検討されることとなった。

 

同時期、守矢氏は、当社が主催するサクセッションプランに関する講義を受講。そこで物流会社設立の意志を固めたという。退路を断って挑む覚悟を示した守矢氏は、ミスターマックス・ホールディングスを退職し、物流会社の社長を任せてほしいと自ら手を上げて株式会社ロジディアを設立した。

 

「持続可能なEDLP(Every Day Low Price)・EDLC(Every Day Low Cost)」の実現を目指すロジディアは、ミスターマックスサポート事業の他に、ベンダー物流コストの抑制を通じてミスターマックスの原価低減に貢献。さらに、新たな外貨獲得のスキームを構築し、「価値ある安さ」を提供を目指す企業グループを物流領域で支えている。

 


小売り物流のノウハウを活かし、『商流』& 『物流』の連携により「シナジー効果を創造する」ことを目指しているという。
(出所:講演資料)

 

ミスターマックスサポート事業

 

ロジディアは、ミスターマックスサポート事業とベンダーサポート事業を展開している。ミスターマックスサポート事業では、ローコスト運営とサービスレベルの向上をミッションに掲げる。センター業務を委託する物流会社とは作業単価制の契約を結び、ものの流し方や動かし方を工夫することでコストメリットを創出し、効率的な運営を実現している。

 

小売業の物流企業としての課題は、店舗ニーズと物流コストのバランスを保つことにあるという。ロジディアの社員は全員が店舗での勤務経験を持ち、物流現場と店舗運営の双方を理解している。この経験が「部分最適」から「全体最適」へのポイントを見極め、店舗が求める物流サービス品質と物流コストの効率化を両立させるバランス感覚を持つことにつながっている。

 


小売店舗、物流会社の双方の立場に立ち、部分最適から全体最適への意識改革を推進している。
(出所:講演資料)

 

ベンダーサポート事業

 

ベンダーサポート事業では、約350社の取引先に対しローコストな物流サービスを提供している。ロジディアの強みは、ミスターマックスの取引先をメインターゲットとすることで顧客開拓のハードルを下げ、大規模な顧客基盤を確保している点にある。

 

さらに、ミスターマックスサポート事業とベンダーサポート事業の2軸を連携させ、シナジー効果を創出する仕組みを構築している。ロジディアはベンダーと連携し、物流コストの抑制を通じてミスターマックスの原価低減に寄与している。物流コスト削減を目的とした20項目のサポートを展開し、小売物流のノウハウを生かして「商流」と「物流」の連携を強化することで、独自のシナジー効果を生み出している。

 

現在、事業構成比はミスターマックスサポート事業が約85%、ベンダーサポート事業が約15%となっているが、将来的には5:5の構成比を目指している。今後は一括物流センター向けに商品を供給する拠点「センター前センター」の導入による効率化や、他小売業への輸送を拡大する計画だ。ロジディアは「やれること」を増やし、「協同」による物流領域の拡大を通じて、サプライチェーン全体の最適化を目指す。

 


店頭では競争、物流では協同を掲げ、SCMの全体最適をこれからも狙っていくという。
(出所:講演資料)

PROFILE
著者画像
守矢 尚之 氏
株式会社ロジディア 代表取締役社長