【第3回の趣旨】
デザイン経営モデル研究会では、さまざまな企業・団体の現場を「体験」する機会を提供することで、研究会のテーマである「体験価値」と「自社らしさ」を創る1つの資源であるデザインの力を持って、差別化と高収益を実現するためのヒントを提供している。
2日目は共和鋼業株式会社の代表取締役である森永 耕治氏にご登壇いただき、デザイン経営を基軸にした「ひし形金網」の可能性と、企業らしさの言語化についてご講演いただいた。
自社らしさとは何か、強みは何かなどの企業の根幹となる考えに迫る。
開催日時:2025年1月23~24日(大阪開催)
はじめに
共和鋼業株式会社はひし形金網を専門に製造するメーカーであり、業界においてトップクラスの生産量を誇っている。ひし形金網はネットフェンスや落石防止など、いわゆる人々の安心安全を守るために使用されてきた。しかし、同社ではひし形金網の可能性をさらに広げ、デザインや用途を日々進化させている。
「ひし形を編み、心地よい毎日をつくる。」という企業理念のもと、人々の暮らしに寄り添いながら毎日の心地良さをつくり支える存在であるために、これまでにない新しいモノ創りを体現している企業である。今回はひし形金網のワークショップを交えながら、自社の魅力・製品の可能性を広げるために重要となる考え方とその実践方法について、ご講演いただいた。
工場入口の撮影スポット
デザイン思考とアート思考の重要性
同社では、①ロジカル思考、②デザイン思考、③アート思考を次のように定義している。
①ロジカル思考:過去から現在にかけての分析、将来の方向性を導く
②デザイン思考:新しいものを生み出す(他者発)
③アート思考:新しいものを生み出す(自分発)
それぞれ異なる視点と役割を持ちながらも、相互に補完し合う関係にある。ロジカル思考は、客観的思考・分析から将来の方向性を導くための基盤を提供する。一方、デザイン思考とアート思考は未来志向であり、新しい価値を創造するための手法である。これら3つの思考はどれが優れているというものではなく、状況に応じて組み合わせることで、具体的な方向性が導き出せる。3つの思考の交点にある「ビジョン・アイデンティティ」を明確にすることがデザイン経営を実現する上で重要な鍵となる。
デザイン思考の変容
(出所:森永氏講演資料より)
デザイン・ロジカル・アートの関係
(出所:森永氏講演資料より)
アイデンティティとビジョンの再定義
同社は、自社のアイデンティティーとビジョンを明確にすることが企業の成長にとって重要であると提言している。アイデンティティーは「自分たちは何者か?」という問いに対する答えであり、企業の存在意義や価値観を示すものである。これを明確にすることで、社員は自社の方向性を理解し、組織として一体感を持って業務に取り組むことが可能となる。また、ビジョンは「目指すべき未来」を示し、企業がどのような方向に進むべきかを示す羅針盤となる。これらを再定義することで、企業は自社の強みを深堀りし、顧客や社会に対してどのような価値を提供できるかを明確にすることができる。
以前から、同社においてはひし形金網の可能性を信じ、新しい技術や用途開発に挑戦する姿勢を見せていたが、アイデンティティーとビジョンを再定義したことで、企業の戦略的な方向性を決定付け、社員のモチベーション向上や顧客の信頼獲得につながり、最終的には企業の持続可能な成長を支える基盤となったのである。
従来のひし形金網の用途
「ネットフェンス(夢洲)」
従来のひし形金網の用途
「落下防止網(箕面)」
オープンイノベーションの推進
同社では、オープンイノベーションを通じて新たな協業やチャレンジを推進している。
オープンイノベーションとは、社内外の知見やリソースを活用し、新しい製品やサービスの開発を行うアプローチのことを指す。特に、異業種との連携や産学連携を通じて、社内外の知見を活用することが重要である。同社は、「チーム東大阪オープンイノベーション」や「X-lab」の設立など、地域の企業や大学との協力を強化することで、ひし形金網の新たな用途やデザインの可能性を広げている。これにより、企業は新しいアイデアや技術を取り入れ、迅速に市場の変化に対応することができる。また、オープンイノベーションは、企業の成長だけでなく、地域経済の活性化にも寄与する。つまり、地域の企業や大学との連携を通じて、地域全体の競争力を高めることが可能となるのである。このような取り組みは、企業の持続可能な成長を支えるだけでなく、社会全体に対してもポジティブな影響を与えることが期待される。
新しいのひし形金網の用途
「amiMono 収納ラック」
新しいのひし形金網の用途
「展開例 JAPAN SHOP 2022」

代表取締役