【第1回の趣旨】
タナベコンサルティングの第1回ナンバーワンブランド研究会では、独自のブランディングの先進事例を学ぶため、化粧品の製造販売を行うポーラと、飲食店を運営するトリドールホールディングスにご講演いただいた。
今回は、ビジネスと企業価値をグロースさせ続けるマーケティングの革新と拡張について、トリドールホールディングス執行役員CMO兼KANDOコミュニケーション本部長兼丸亀製麺取締役マーケティング本部長の南雲克明氏から学んだ。
開催日時:2024年9月27日(東京開催)
執行役員 CMO 兼 KANDOコミュニケーション本部長 兼 株式会社丸亀製麺 取締役 マーケティング本部長
南雲 克明 氏
はじめに
丸亀製麺やコナズ珈琲など、28カ国・地域で1988店舗を展開するトリドールホールディングスは、「本能が歓ぶ食の感動体験を探求し世界中をワクワクさせ続ける」をミッションに掲げ、飲食チェーン業界では後発企業でありながら顧客をKANDO(感動)させ続けるブランディングによって独自のポジションを築いている。
同社では、KANDO(感動)を起点に感性とデータサイエンスの両側面から持続的に選ばれる確率を高める「KANDOドリブンマーケティング」を推進している。
丸亀製麵やコナズ珈琲、ずんどう屋などを運営・展開するトリドールホールディングス。顧客をKANDO(感動)させ続けるブランディングで独自のポジションを築いている
まなびのポイント1:「KANDOトレードオン戦略」の推進
同社は、自社を「KANDO(感動)創造企業」と定義している。そして、これを実現する経営戦略が「KANDOトレードオン戦略」である。
Anywhere(世界中どこでもできる体験)×Only(そこでしかできない体験)と、Craft(手間暇かけてこだわって展開する)×System(スピーディーに効率的に展開する)、という常識を超えたトレードオンを実現する戦略で、これを可能にするためのコミュニケーション戦略が「KANDOクローバー戦略」である。
同社は、パートナー・社員・カスタマーのエンゲージメントとコーポレートブランディングが感動体験につながると考え、4つを統合したコミュニケーションを推進している。
まなびのポイント2:丸亀製麺のマーケティング戦略
事例として、丸亀製麵のKANDOドリブンマーケティングをご紹介する。丸亀製麺のKANDO(感動)体験をつくりだす生命線は、①一軒一軒が製麺所、②手作り・できたてのおいしさ、③人の力、この3つの掛け合わせである。
非効率と言われることがあっても、全国約850店舗に麺職人を配置し、粉からうどんを作っている。また、讃岐の製麺所を彷彿させる風景とライブ感を実現するなど、効率よりも感動を重視した戦略によって構造的優位をつくっている。
さらに、二律両立を重視し、①本質的価値の追求・磨く×新たな価値の創造、②プロダクトアウト起点×消費者起点、③感性×データサイエンス、という3つの視点で戦略を打ち出している。これにより、CX(顧客体験価値)とEX(従業員体験価値)がスパイラルアップする構造を生み出している。
丸亀製麺は、KANDO(感動)体験を重視した戦略で世界中から愛されるうどんチェーンとなった
まなびのポイント3:強いブランドをつくるために
強いブランドの要素は、①期待や想像を超える底にしかない高い体験価値、②独自性(唯一無二)、③共感、この3つである。
同社では、理想のブランド像を確立するためにブランドエクイティ(ブランドの設計図)をつくっている。WHO(ターゲット)×WHAT(ブランドがターゲット消費者に提供する一番大切なもの・こと)×HOW(ターゲットがブランドの約束したことを実際に体験するために最も重要と思われる活動をまとめたもの)というピラミッドを各ブランドごとに作成し、ブランドをつくる全ての人がこのピラミッドをもとに共通認識を持つことで、ぶれずに価値を創造し続ける好循環を生みだしている。