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研究リポート
デザイン経営モデル研究会
経営に『デザインの力』を活用して、魅力ある自社らしいブランドづくりを実践している素敵なデザイン経営モデル実践企業の取り組みの本質を視察先講演と体験で学びます。
研究リポート 2024.09.10

「What’s Ethical Design」-Good Ethical Company- 船場

【第6回の趣旨】
デザイン経営モデル研究会では、デザインの力を「体験価値」と「自社らしさ」を創る資源の1つとして捉え、他社との差別化や高収益を実現するためのヒントを探ることを目的とする。
秀逸なデザイン経営モデルを持つさまざまな企業・団体の現場を「体験」する機会を提供しており、第6回の2日目は、船場上席執行役員EAST事業本部本部長エバンジェリストの神戸暁氏に登壇いただいた。内装・建築デザイナーが推進するエシカルデザインモデルの取り組みと事例についてひも解いた。

開催日時:2024年7月23日(東京開催)

船場
上席執行役員 EAST事業本部 本部長 エバンジェリスト 神戸 暁 氏

 

 

はじめに

 

船場は1947年に大阪の船場で陳列ショーケース店として創業し、商業施設をはじめとする空間創造事業をグローバル展開している。

 

2021年には、「地球や⼈・社会に優しいグッドエシカルなオフィス」をテーマにオフィスを全面リニューアルし、働くシーンを自由に選択できる「ABW(Activity Based Working)」を導入し、自社オフィスを人と人、人と組織、組織と社会、リアルとバーチャルの「つなぎ目・起点」の役割を担うハブオフィスと位置付けて新たな価値を提供している。

 

変わり続ける時代に試しながらつくり上げる「Hackable Design(ハッカブルデザイン)」をコンセプトに、船場の推進する「Ethical Design(エシカルデザイン)」の考え方に基づいた資源循環型リノベーションに取り組み、ビジョン「Good Ethical Company」を体現をしている。

 

 




全面リニューアルしたオフィス内観
※船場ホームページより抜粋

 


 

まなびのポイント1:業界トップランナーの社会価値デザイン

 

同社は空間創造事業を通じて、「どのようにサーキュラーエコノミーや生物の多様性、ダイバーシティ&インクルージョンに貢献できるのか」を模索している。

 

サプライチェーン上のさまざまな産業では、個々に先端テクノロジー・サービスを取り入れていることから、これらの活動をつなぎ「未来にやさしい空間」を共創することが、同社が目指すエシカルデザインである。

 

エシカルデザインとは、サプライチェーン全体で未来にやさしい空間を共創していくことである。人の暮らしはもちろんのこと、その先にある地域社会や自然環境まで想像し、「つくり方、つかい方、すて方まで含んだ循環をデザインすること」、と定義している。

 

 

まなびのポイント2:事業戦略の構築

 

同社は、短期間で大量の廃棄物が排出される内装業界の課題に着目し、地球に負荷をかけない本質的な価値を提供するため、内装業界におけるサーキュラーエコノミー「Circular Renovation®︎(サーキュラー・リノベーション)」を提案している。

 

Circular Renovation®は、サプライチェーンを再構築し、「つかう資源」と「すてる資源」を循環させて新たな価値を生み出すエシカルデザインのフレームワークである。

 

自然環境への配慮に加えて、多様性や少子高齢化への対応、地域エコシステムの再生、ICT・AIなど先端テクノロジーの実装など、社会課題に向き合う「未来にやさしい空間」を提供している。

 


「Circular Renovation®︎(サーキュラー・リノベーション)」の考え方
※船場講演資料より抜粋

 

 

まなびのポイント3:共創パートナーが集まる仕組みづくり

 

同社は、「Ethical Design Lab.」というエシカルデザインの活動の輪を広げ、エシカルなパートナーと持続可能な社会を共創するプラットフォームを展開している。

 

都市開発や施設の運営、地域コミュニティ形成など、行政や企業団体、教育機関が抱える課題に向き合い、業界を超えた多種多様な分野の専門家とオープンイノベーションによる課題解決を目指している。

 

約100社の建材・原材料メーカーから情報を収集し、使い終わった後のリサイクル方法や、再生資源の活用方法を研究する活動を行っている。マテリアルを「地球環境」「資源循環」「人・社会」「意匠・経済」の4つの視点で研究し同社のオフィスで常設展示している。

 


「Ethical Design Lab.」の内観