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コラム
イベント開催リポート
タナベコンサルティンググループ主催のウェビナーやフォーラムの開催リポートです。
コラム 2024.10.16

BCP物流を通じて企業を支え、人々の生活を守る AZ-COM丸和ホールディングス株式会社

FCC(100年先も顧客から真っ先に声をかけられる会社)実現を支援する、経営者のための戦略プラットフォーム「トップマネジメントカンファレンス」(タナベコンサルティング主催)。第3回(2024年8月開催)は、「BCP物流を通じて企業を支え、人々の生活を守る」をテーマに、AZ-COM丸和ホールディングス株式会社の取締役常務執行役員BCP事業推進グループ長 小倉友紀氏に講演いただいた。

 

AZ-COM丸和ホールディングス株式会社 取締役常務執行役員 BCP事業推進グループ長 小倉 友紀 氏

AZ-COM丸和ホールディングス株式会社 取締役常務執行役員 BCP事業推進グループ長
小倉 友紀 氏

 

物流事業の進化とBCP物流の本格始動

 

AZ-COM丸和ホールディングスは、1970年に創業者である和佐見勝(現・代表取締役社長)がトラック1台で創業。運送事業から始まり、その後は物流の委託を受ける3PLへ業態を進化させてきた。時流に合った事業で小売業の経営戦略に貢献し続け、2014年に東証2部上場、2015年には東証1部上場、2022年には丸和運輸機関を中心とする持ち株会社体制へ移行した。

 

当社はBCP物流事業において、災害時に安全・安心・安定した物流を提供する機能を強化。2015年創設の「一般社団法人AZ-COM丸和・支援ネットワーク」とともに、ライフラインの確保に貢献してきた。

 

これまで、阪神・淡路大震災(1995年)の際に現地でボランティア活動を行ったり、東日本大震災(2011年)の際には発災3日後の3月14日に仙台市へ駆けつけて支援活動を実施したりしてきた。

 

被災地のスーパーマーケットやコンビニエンスストアで品切れが生じ、避難所に「必要なものが必要な時に、必要な場所に届いていない」現状に直面したこときっかけとなり、2019年にBCP物流事業を本格的に稼働することとなった。

 

AZ-COM丸和ホールディングス沿革
AZ-COM丸和ホールディングス沿革
出所:AZ-COM丸和ホールディングス講演資料

 

 

急成長を遂げるAZ-COM丸和ホールディングスの歩みと挑戦

 

AZ-COM丸和ホールディングスの2024年3月期の売上高は1985億円。売上高、利益とも、上場以来2ケタ成長を継続中である。業界全体の課題である人材確保については、2023年3月期から2027年3月期の5年で毎年新卒600名、中途400名を採用すべく、全社を挙げて取り組んでいる。

 

急成長のきっかけとなったダスキンとの取り引きが始まったのは1991年。「繁忙期に車両が確保できない」との理由で当社が声をかけられ、取り引きが拡大していった。

 

当初は配送サービススタッフの教育や夜間配送の提案、加盟店の配送を管理する運行指令室の役割を担当。また、ダスキンのフード事業「ミスタードーナツ」の運送にも対応していた。

 

東日本大震災では、ミスタードーナツの物流を担う東北物流センターが被災。当社はのちのAZ-COM丸和・支援ネットワークの会員企業の協力も得ながら、その支援を実施した。

 

その後5年間にわたり、ダスキンとともに被災地でボランティア活動を継続。「ミスタードーナツカー」というトラックで、温かい作りたてのドーナツを仮設住宅へ配達する活動も行った。

 

 

桃太郎文化の誕生と進化:企業成長を支える「報恩感謝」の精神

 

創業以来、当社は「桃太郎文化」と呼ぶ企業文化を育んできた。パート社員から役員に至るまで、全員がこれをまとめた「桃太郎カード」を携帯しており、会議や朝礼は桃太郎カードの振り返りから始まる。

 

桃太郎文化は「報恩感謝」を根本とし、挑戦、成長、貢献し続ける文化である。社員に道標を示すことで成長を助け、利他の心を育む文化でもある。

 

変化の激しい現代において、顧客の役に立つ仕事をするには、学び続けなければならない。そうした中、当社は「人の成長は企業の成長につながる」と考え、「人と人との接着剤の役割を果たす」桃太郎文化に沿って人材育成を行っている。

 

1983年、社内に「早期幹部大学校」という学びの場を開設。管理職からサービスドライバー職まで参加し、毎週日曜日の朝5時から勉強会を行っていた。

 

1997年には3PL業界ナンバーワンの物流人材を育てる場として、社内大学「丸和ロジスティクス大学」を開設。当初は社外コンサルタントを招いて運営していたが、現在では同大学を卒業した人材が若手人材の育成に貢献している。

 

 

AZ-COM丸和グループの3つの事業領域

 

① EC物流事業
2017年、人材不足などに起因する物流業界の問題は「宅配クライシス」と呼ばれ、世間で騒がれていた。例年にない緊張感の中、当社は1年間で約60カ所の配送センターを開設し、不在の配送先に何度でも配送できる体制を構築。大手ECサイトでセールが始まると物量が急増するという課題についても、全社を挙げて対応を行ってきた。

 

当時、大手EC通販会社の期待をはるかに上回る車両供給量で要望に応じるなど、顧客の戦略に寄り添った臨機応変な対応が奏功。当社との取引は現在も続いている。首都圏を中心としていたラストワンマイル展開は、その後、全国へ拡大していった。

 

現在はECラストワンマイル事業だけではなく、EC3PL事業や大手EC通販会社の物流センター運営、自社物流センター間の幹線輸送などへ事業領域を拡大している。

 

② 低温食品物流事業
2013年、物流センターが構築されていない「地域密着型のスーパーマーケット」をターゲットに新しい分野での事業開発を行った。お客さまの無理や無駄をどのように軽減できるかをスーパーに提案し、今では売上1000億円企業以上のスーパーマーケットで低温物流を展開している。

 

コロナ禍においては、航空貨物運送事業を担うANA Cargoと提携し、産直事業を始めた。北海道帯広市にある農家が未明に収穫した野菜をANA Cargoのコンテナに積み込み、当日の夕方には首都圏に住む人々に朝採れの野菜を届けるものである。

 

③医薬・医療物流事業
1995年にマツモトキヨシが500店舗構想として、埼玉県越谷市でTC(トランスファーセンター)をスタートした。

 

当時は多様なメーカーが納品のため来店することで、店員が納品に追われ、入出庫が大変だった。その中で画期的な方法として、ノー検品・在庫ゼロ・納品率100%、という提案が採用される運びとなる。物流の領域は年々広がっており、2023年には中京、2024年には九州に物流センターを開設した。

 

AZ-COM丸和グループの事業領域
AZ-COM丸和グループの事業領域
出所:AZ-COM丸和ホールディングス講演資料

 

 

BCP物流事業の発展と災害対応体制の強化

 

2019年にスタートしたBCP物流事業は、ダスキンの業務を開始した頃からの課題であった「車両・人手不足で悩むお客さまに対し、できることはないか」といった考えがきっかけとなっている。

 

2024年1月1日に発災した能登半島地震の際にも、AZ-COM丸和・支援ネットワークが政府指定公共機関として緊急物資輸送を実施。石川県産業展示館(金沢市)への飲料水や非常用トイレなどの物資搬入など、約200台以上の車両を導入して支援した。災害は休日や夜中に発生することが多いが、AZ-COM丸和グループでは日頃から提携地域へ駆けつけられる体制を整えている。

 

当社は東京都、福井県、兵庫県、大阪・枚方市など、75の自治体と災害時支援協定を締結。約2000社が加盟するAZ-COM丸和・支援ネットワークでも、地域貢献への意志が強い社長が多く、そうした企業とタイアップし災害時の対応を進めている。

 

現在、中央防災会議が対象とする大規模地震は日本全国に大きく広がっている。その中でAZ-COM丸和グループは、365日24時間体制し、さまざまな分野の教授と打ち合わせを重ね、活動を続けている。

 

 

成長を支えるBCP事業と防災の未来

 

和佐見には、「人なし・金なし・物なし」という苦難を乗り越えた経験がある。この経験から、上場後も社会貢献の一環として、成長を目指すパートナー企業に対してどのような支援ができるか模索し続けてきた。

 

現在は和佐見自ら、パートナー企業で後継者育成プログラム研修を行ったり、AZ-COM丸和・支援ネットワークの会員と勤労奉仕を行ったりしている。こうしたBCP物流事業はグループだけではできず、AZ-COM丸和・支援ネットワークの会員と手を取り、連絡を取り合った上で成り立っている。

 

2023年6月にはAZ-COM丸和・支援ネットワークが災害対策基本法に基づく指定公共機関に指定された。現在、緊張感を持って内閣府や国土交通省からの連絡に迅速に対応できる体制を整えているところだ。同ネットワーク会員は2000社ほどだが、2040年には1万社まで拡大を計画中である。

 

BCP物流事業に関しては、2019年の立ち上げからさまざまなことを勉強し、やっとここまで来たかという心持ちだ。現在、これから生じ得る大規模災害を見据え、万全な体制を築くべく、内閣府と連携している状況である。将来的には「AZ-COM丸和グループに頼めば防災に関するすべてに対応できる」という事業の在り方を目指している。

 

2025年春には埼玉県松伏町に「AZ-COM Matsubushi」という免震構造・3温度帯の物流センターを竣工予定。日本最大の災害時の物流拠点にすべく、備蓄ビジネスなどを展開できるよう進めている。

 

AZ-COM Matsubushi概要
AZ-COM Matsubushi概要
出所:AZ-COM丸和ホールディングス講演資料

 


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