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研究リポート
ウェルビーイングでビジネスを成長させる研究会
新たな時代で勝ち残るための生活者視点・お客様視点の事業戦略をウェルビーイングの視点から学びます。
研究リポート 2024.07.08

沖縄県から世界へ、オリオンビールのブランディング・商品への思い オリオンビール

【第3回の趣旨】
タナベコンサルティングの「ウェルビーイングでビジネスを成長させる研究会」では、ウェルビーイングを中心としたビジネス展開や、ウェルビーイング視点で価値創造を行っているさまざまな企業の視察を通じて、ウェルビーイングでビジネスを成長させるヒント、あるいは事業構造を変革するきっかけをつかむ機会を提供している。
第3回は、前回に引き続き「ウェルビーイングビジネスを体験・体感する」をメインテーマに、サブテーマを「事業開発×ウェルビーイング」とし、2社のゲスト講師から自社・事業の成長の歴史と成功ポイントを伺うとともに、ウェルビーイングビジネスのターゲットや沖縄県を軸としたブランド、商品開発について学んだ。

開催日時:2024年6月18日(沖縄開催)

 

 

 

オリオンビール
執行役員 生産本部長 工場長 樽岡 誠 氏

 

 

はじめに

 

1957年設立のオリオンビールは、「戦後沖縄県の社会経済復興には第二次産業を興さなければいけない」という創設者・具志堅宗精氏の強い意志が実を結び、今では沖縄県を代表する企業へと成長を遂げた。具志堅宗精氏の「公共性を持たせなければ企業の意義はない」という信念を継承しながら、経営理念に「報恩感謝・共存共栄・地域社会への貢献・文化への寄与」を掲げ、地域に密着した企業として成⾧を続けている。

 

現在は、ミッション・ビジョン・コアバリューを策定し、世界に通用するブランドを展開している。

 

オリオンビールのミッション・ビジョン・コアバリュー

ミッション

沖縄から、人を、場を、世界を、笑顔に。オリオングループ

ビジョン

顧客 :笑顔、Win-Win

社員 :働きやすさ、働きがい

社会 :環境、教育

株主 :成⾧性、持続性、透明性

コアバリュー

なにくそやるぞ、共存共栄、まくとぅそーけーなんくるないさー、
いちゃりばちょーでー、チャンプルー文化、報恩感謝

 

今回は、次の3つをポイントに、ウェルビーイング視点で事業価値を創出するために着目すべきことを学んだ。

 

⑴沖縄県のビジネスから学ぶ貢献価値によるウェルビーングの善循環

⑵Howだけでなく、Whatが大事。「ウェルビーイングで何をするか」「目的は何か」を検討

⑶沖縄県で培われたビジネスを軸にウェルビーイングビジネスをつくる

 


オリオンビールの名護工場「ハッピーパーク」でビールの製造過程を学んだ

 


 

まなびのポイント 1:オリオンビールが考えるウェルビーイング(顧客体験価値の創造と地域貢献)

 

同社のウェルビイーングのポイントは、次の3つだ。

 

⑴大麦の地産地消と完全循環型サイクル

原料の大麦は、沖縄県の特徴を生かした素材を使用するというポリシーのもと、伊江島産の大麦を使用している。この製造過程で出る麦芽粕は、再度大麦をつくるための堆肥にすることで、地産地消、かつ完全循環型のサイクルを確立している。

 

⑵愛されるビールづくり

同社が製造・販売する「オリオン ザ・ドラフト」は、1973年の発売以来沖縄県民に愛されるビールである。オリオン ザ・ドラフト誕生55年目の2015年夏には、さらに磨きをかけた新しいビールに一新した。時代に合わせてロゴ、缶デザイン、味を変え続けている。

 

⑶ビアフェスト開催によるファンづくり

1963年からビールが飲める場所づくりなど、顧客体験価値を高める取り組みを続けている。


1963年から続くビールが飲める場所づくり。顧客体験価値を高めるイベントの1つとなっている
出所:オリオンビール講演資料

 

 

 

まなびのポイント 2:地元に根差した商品開発

 

同社の商品開発におけるポイントは、次の2つである。

 

⑴地元に愛される商品設計

同社は、 2024年にオリオン ザ・ドラフトをリニューアルした際、約1万5000名のユーザーに調査を実施。コンセプト、パッケージ、味わい、コミュニケーション全てにおいて、沖縄県民の意見に耳を傾けて開発を進めた。沖縄県民に愛されるビール=沖縄県民のウェルビーイングにつながる商品開発を実践している。

 

⑵「75BEERプロジェクト」(若手チームプロジェクト)

若手技術者の醸造技術向上チーム主導でクラフトビールづくりが始動。今では、「75BEER」シリーズとして、「CRAFT LAGER」「IPA INDIA PALE ALE」「ALT」などの個性的なビールを製造・販売しており、クラフトビールの市場を開拓している。

 

また、醸造技術向上チームの活動目的として、①視野を広げて通常とは異なる商品を作ることで、醸造技術力の向上を図る、②こだわりのあるビール造りの風土を醸成する、③新たな商品ニーズの模索、データの蓄積、この3つを掲げている。


「75BEER」シリーズ
出所:オリオンビール講演資料

 

 

 

まなびのポイント 3:オリオンビールのブランディング活動

 

⑴オリオンビールのブランドづくり

オリオンビールは、ミッションに「沖縄から、人を、場を、世界を、笑顔に。オリオングループ」を掲げ、沖縄県に根差した同社ならではの、①独自性の追求、②大手企業がやらないことをやる、③自分たちしかできないことをやる、を決めて事業を展開している。

 

⑵イベント「秒で沖縄に行けるバー」の開催

同社は、2024年4月27日~5月6日のゴールデンウィーク期間限定で、東京都・渋谷区に、東洋一美しいとされる宮古島のビーチを再現した沖縄県の空間でオリオンビールが楽しめる新感覚のイマーシブ型バー「秒で沖縄に行けるバー by Orion」をオープンした。

 

イベント認知向上の取り組みとして、①PR:沖縄県の雰囲気づくりを重視することで、イベント参加者の没入度を向上、②SNS:イベント参加者がSNSで投稿することで、ファンづくりを推進、③PR×SNS:2つを掛け合わせることで、オリオンビールと沖縄県をリンク、この3つに注力した。結果として、沖縄県民だけでなく、本土のファンの顧客体験価値向上を実現した。


イベント「秒で沖縄に行けるバー」
出所:オリオンビール講演資料