ICTの活用で発注主と工事会社のマッチングを展開:ユニオンテック
ICT(情報通信技術)を活用して、発注主と工事会社とのマッチングビジネスを展開するユニオンテック。工事の直接受発注を可能にすることで、双方にとってメリットのある革新的な取り組みに関心が高まっている。
市場規模が50兆円超に達する日本国内の建設業界。そこで深刻な問題となっているのが職人の不足である。明日、工事に入るのに人員がそろっていなかったり、そろえたはずの人員が当日になって現れなかったりといった事態が、そこかしこの現場で起こっている。
その背景について、ユニオンテック代表取締役社長の韓英志氏は「半世紀以上にわたって非効率な状況が続いていて、改善がほとんどなされていない業界。そして、ICTの導入も一番遅れている業界」と厳しく指摘する。しかも、下請けによる多重構造が解消されていないことから、人手不足が慢性化しているにもかかわらず、工事を担う職人の待遇は不十分なままで、担い手が減る一方だ。
しかし、見方を変えると「ICTを活用して業界の透明化を図ることで、極めて大きなビジネスチャンスを得られる」と韓氏は予測している。
同社が立ち上げた、建設工事マッチングプラットフォームの「SUSTINA(サスティナ)」は、建設業界に特化したマッチングサイトである。発注主(施主や元請け業者)と工事会社(主に専門工事業者)を直接つなぐことで、業界の透明化という革新を急速に進めつつある。
サービス開始から約3年。すでに1万社を超える工事業者が登録し、月間3億円以上の案件が掲載され、工事の受発注が行われるまでにプラットフォームが拡大している。
主な登録対象は、業界全体の約70%を占める中小工事会社(従業員数10名未満、売上高1億円未満)だ。「従来、工事の受発注は電話やファクスといったオフラインで行われてきました。そのため、工事の当日に人が集まらず、電話で緊急手配するといったことが、今なお行われているのです。こうした現状をSUSTINAで打破し、中小工事会社の成長を支援していくのが当社の使命」と韓氏は抱負を語る。
ユニオンテックは、2000年にクロス職人だった現代表取締役会長の大川祐介氏が、クロス内装仕上げ会社として設立した。2002年に施工管理業を、2005年には設計デザイン事業を開始し拡大。2016年4月には先述したSUSTINAの前身となる事業「TEAM SUSTINA(チームサスティナ)」を、その年の11月には、企業のオフィスや店舗の内装の設計や施工などを手掛ける空間創造事業ブランド「UT SPACE(ユーティースペース)」を立ち上げるなど、着々と事業を広げていった。
同社が現在の経営体制となったのは、2018年に韓氏が社長に就任したのがきっかけである。1979年、大阪に生まれた韓氏は、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻を修了した後、「SUUMO(スーモ)事業の仕事がしたくて」(韓氏)、リクルートに入社した。同事業部で営業や事業戦略の策定の業務を経験した後、国内での新規事業の立ち上げに携わったという。
2011年以降、リクルートホールディングスの現社長、峰岸真澄氏の下で海外事業を立ち上げ、2015年には、ドイツにおける飲食店予約サービスを手掛けるQuandoo GmbH(クアンドゥゲーエムベーハー)を買収して完全子会社化した。そして、マネージングディレクターとしてベルリン本社に赴任し、経営が軌道に乗った2017年に退職。半年間にわたって育児休暇を取った後、2018年1月にユニオンテックの株式の一部を取得して、同社の経営に乗り出したのである。
リクルートでの華々しい実績から一転、中小企業の経営を始めた理由とは何か。その一つが、ドイツでの経験を踏まえ「ICTの活用が遅れている業界を革新していくことにやりがいを感じたから」(韓氏)だという。人の紹介を通じてユニオンテックの存在を知った際、「建設業界は日本国内で2番目の産業規模であるにもかかわらず、業界の構造改革が遅々として進まない現状を変えたいと思った」と韓氏は話す。
「このままでは工事の担い手が減る一方で、業界が成り立たなくなっていく恐れがあります。これに対して、ICTを活用することで、情報の非対称性による人手不足や下請けによる多重構造など、業界が抱える課題を根本的に変えていくことに新たな使命を感じたのです」(韓氏)
【図表】SUSTINAユーザーと建設業界の比較