レンタルグリーン分野で圧倒的なナンバーワン企業・ユニバーサル園芸社。東証スタンダード市場に上場し、売上高168億5900万円、経常利益25億1000万円、経常利益率約15%(連結、2024年6月期)、という高い収益率を創造し続ける強靱な企業体質はいかにつくられたのか。持続的成長を続ける経営の秘訣について、創業者・代表取締役会長の森坂拓実氏に伺った。
「人生二度なし」。理想を追って20歳で独立
若松 ユニバーサル園芸社は、2012年に東証スタンダード市場に上場され、レンタルグリーン事業を中心に幅広い事業を展開されています。売上高168億5900万円、経常利益25億1000万円(連結、2024年6月期)と、優良中堅企業として持続的な成長を実現されています。 私はあらゆる業種の約1000社にコンサルティングをしてきましたが、園芸関連企業でここまでの収益力を持ち、成長を続けている企業は珍しいです。実は、タナベコンサルティングもユニバーサル園芸社のレンタルグリーンサービスを利用しています。 大阪本社にある「CROSS LAB(クロスラボ)」と呼ばれるミーティング兼カフェスペースや、東京本社のミーティングスペースなどに観葉植物を置いていますが、とても居心地の良い空間になり、多くの社員がリフレッシュしています。 また、社長室の植物を定期的に手入れしてくださるユニバーサル園芸社の社員は、その植物を「この子」と呼んで手入れをしています。その丁寧な姿に植物への愛情や知識を強く感じています。なぜ、レンタルグリーン事業を創業されたのかお聞かせください。 森坂 ありがとうございます。高校時代によく山登りをしていました。植物が好きだったこともあり、18歳で造園業界に入って20歳で独立したものの、当時は造園業に必要な土地や設備、技術などを持っていませんでした。 そこで、休日に植木の路上販売をしながら、平日にレンタル植物の営業を始めました。営業先は小さな商店やホテル・医院・飲食店など。取引相手はほとんどがオーナーだったので、20歳そこそこの元気の良い青年が「こんにちは!」と入っていくと話を聞いてもらえます。毎日、1件ずつコツコツと営業に回りながら顧客を積み上げていきました。 若松 植物レンタルというのは、路上販売と違って自ら営業活動ができますからね。似ているようで違います。しかも20歳で起業されたのは決断と行動力があります。 森坂 本当は尊敬できる社長の下で一生懸命に働いて会社を大きくしたいと思っていましたが、いざ就職してみると社長が朝10時に重役出勤してきたり、転職した園芸会社の社長も毎日夕方5時ちょうどに退勤したりと、思っていた社長像とは違いました。まだ、18歳で理想に燃えており、それならば「自分でやろう」と決意しました。 若松 理想の会社を自分でつくる決断をされた。高い志をお持ちだったのですね。 森坂 そうした理想を持っていたのも、私の死生観が大きく関係しています。変に思われるかもしれませんが、私は幼いころから「死」をとても怖いものだと感じていました。人はいつか死ぬ、人生の時間は限られている。そうした恐怖から逃れようと常に行動していましたし、ボーッとしていたらすぐに死んでしまうと思うから、とにかく動く。それが普通の人との行動量の違いにつながりました。 若松 優秀な経営者には、人生観・死生観をしっかりと持っている方が多いです。創業の背景をお聞きし、「人生二度なし」という座右の銘や並外れた行動力、会社の成長スピードにも納得できます。レンタルグリーン分野で圧倒的なナンバーワン企業へ
若松 現在はレンタルグリーンを中心に、イベント会場や店舗ディスプレー、ランドスケープ(造園)、生花店やカフェの運営、ギフト事業など、レンタルグリーン事業を幹に枝葉となるグリーン事業の多角化を展開されています。 森坂 顧客をコツコツと増やしていった結果、日本一になり高収益体質になりました。 十数年前まで室内園芸が全体の7割を占めていましたが、今はギフトや生花店など小売事業など枝葉となる事業が成長したのでその比率は半分以下になっています。 若松 ニッチマーケットでもナンバーワンになると収益率は高まります。小さくても唯一無二の存在になることが重要です。 森坂 小さな業界だから日本一を狙えました。ただ、国内のマーケットは東京と大阪、名古屋ぐらい。福岡や仙台のマーケットはさほど大きくありませんし、競合も多いため、室内園芸中心で成長を続けるには限界があります。そうなると、やはり海外市場を攻めるしかない。今は中堅企業もM&Aを成長戦略に使える時代になりましたので、当社も取り入れています。 若松 おっしゃる通りです。2015年には米国のRolling Greens社をグループ会社化するなど積極的にグローバル展開されています。タナベコンサルティンググループ(TCG)でも、クロスボーダーM&Aを支援しており、中堅企業や中小企業の案件が増えています。 ユニバーサル園芸社は、「世界一の園芸会社」を掲げて国内外でM&Aを積極的に実施されていますし、新規事業の開発にもスピード感があります。国内は三大都市圏を中心にサービスを展開されており、各分野でブランド事業も育ってきています。エリアごとに必要とされる事業を開発されている点が特徴と言えます。 森坂 新たなビジネスのきっかけは、お客さまとの会話の中から生まれることが多いですね。はじめはレンタルグリーンで入りますが、社長室などで親しく声を掛けていだくうちに、造園やギフト、小売りといったビジネスにつながっています。 例えば、机の上に住宅のパンフレットが置いてあれば「ご新居を建てられるのですか?」という会話になり、そこから造園のご提案につながるなど。お客さまの情報からビジネスの芽が出るのです。 若松 潜在的なニーズを掘り起こして新規事業という枝葉を伸ばしていくのは理想的な形です。そうした展開につながるのも優秀な社員が育っているからでしょう。人材育成に対する考え方や社員教育についてお聞かせください。 森坂 当社では、他社と差別化するために少し変わったことをしています。一例を挙げると、毎年10月に社員が渾身の作品を発表する「文化祭」を開催しています。40年以上続けていますが、毎回、新入社員からベテラン社員まで多くの時間と労力を掛けて作品を制作してくれるので見応えがあります。日々腕を磨きながら、プロフェッショナルとしてクリエイティブな空間をご提案できるよう努めています。 若松 40年以上続けているとは驚きです。最近は社員の生産性向上やよりクリエイティブな仕事をしてもらうため、オフィス環境を重視する企業が増えています。私は仕事柄、国内はもちろん海外も含めて多くのオフィスを訪問しますが、緑があふれる公園のようなオフィスだったり、グリーンを使って居心地の良いカフェのような雰囲気にしたり、キャンプ場のような遊び心のある空間をつくっています。 森坂 当社でも設計事務所と一緒にグリーンを活用した空間づくりを提案する機会が増えています。背景にあるのは、目的の変化です。バブル経済時代はリクルートのためにレンタルグリーンを利用される企業が多くありましたが、バブルが崩壊すると契約も切れてしまいました。 そうした経験があったため、コロナ禍でテレワーク導入やオフィス縮小が進むとレンタルグリーン事業は大きな打撃を受けるだろうと懸念しましたが、それは杞憂に終わりました。ここ10年で、社員が快適に働けるようオフィス環境を工夫する流れが確実に広がっています。
大人から子どもまで全ての人が植物を楽しむことができるガーデンセンター「the Farm UNIVERSAL(ザ ファーム ユニバーサル)」(左)。タナベコンサルティングの大阪本社では、ユニバーサル園芸社の植物を取り入れたワーキングスペース「CROSS LAB.(クロスラボ)」を設置し、働きやすい職場環境を整えている(右)
さらなる高みを目指して業界では異例の上場を果たす
若松 人的資本経営が注目されていることもあり、追い風が吹いています。国内のレンタルグリーン市場では断トツのナンバーワンを獲得するなど地位は盤石です。ライバルが存在しないようにも見受けられます。 森坂 実は、この業界には住友や三井、西武といった大手企業の系列会社が参入しており、そうした親会社が運営するビルと取引するのは簡単ではありません。一方、かつての当社のような創業10年、20年ぐらいの企業が必死になって市場の切り崩しを図っており、両方の強敵に挟まれている状況です。 そもそも、ビルの建て替えや事業所の引っ越しは定期的に発生するので、取引期間は平均5、6年。ですから、10年後はどうなっているか分かりません。今もライバルだらけですから、コツコツとお客さまをつくり続けないといけません。 若松 常に顧客創造が求められる業界において、ナンバーワンであり続けるのは並大抵のことではありません。そうした中、2012年に東京証券取引所JASDAQ市場(現スタンダード市場)に上場されました。造園や園芸の業界で上場するのは、とても珍しいように思いますが、決断された理由は何ですか。 森坂 いまだに同業の経営者からは「なぜ上場したのか?」と聞かれますが、小さな業界で自社がそれなりの規模になり、社員にちゃんと給料が払えて、私自身も自動車や家が買えるようになると満足します。そして怠け者になる。そうならないために、外圧を期待して上場したというのが1つ。 もう1つは、優良企業であっても中小企業の認知度は低く、正当に評価される機会が少ないからです。客観的に評価される場所に出たいと思い、上場しました。 若松 より高みを目指すための手段であり、存在を証明するための上場。誰もしていないことに挑むパイオニアスピリッツを感じます。 森坂 今でこそ世界一の園芸会社を目指していますが、実は昔は税金を払いたくないと思っていました。一生懸命に働いても利益の半分が税金に持っていかれるのは納得できなくて。しかし、今は税金を引いた残りが本当の利益だと考えています。納税は最高の社会貢献であり、誇るべきこと。私の場合、そのように意識を変えるのに10年掛かりましたが、その山を越えると中小企業は大きく伸びていくと思います。 若松 その通りですね。会社は「生業、家業、企業」と成長していきますが、意識改革が企業化の1つの鍵になります。節税は大切ですが、経営者がその対策ばかりに励むようになると企業は成長しません。創業10年、年商10億円が会社の“成人式”。そのあたりで意識を変えないと、家業の域を出ることはできませんからね。会社は世の中に貢献するために存在する
若松 経営理念を拝見して非常に共感しました。世界一の園芸会社を目指す理由や人材育成、利益などについても考え方を明確にされており、どのような会社かよく分かります。(【図表】) 【図表】ユニバーサル園芸社の経営理念と展開事業
出所 : ユニバーサル園芸社ホームページを基にタナベコンサルティング戦略総合研究所作成
森坂 「世の中」とは誰を指すかと言えば、社員であり、お客さまであり、周りの人々であり、国家であり、最終的には植物を通して世界に貢献していくことが使命です。きれいごとになってしまいますが、一本の植物に真心を乗せて一歩ずつ努力していくことが地球のためになると信じていますし、この思いに社員も共感して頑張ってくれています。
若松 森坂会長の思いがしっかりと届いていることは、実際に私が接した社員の方からも感じました。誇りを持って仕事をされていると。
森坂 ありがとうございます。もともと当社ではチームで動いており、設計者や営業担当者も複数の役割をこなしています。例えば、契約が取れたらチームでグリーンを飾りに行きますが、植物を入れると空間がパッと華やかになり、お客さまがとても喜んでくださいます。その姿を見ている社員もうれしくなるでしょうし、仕事に誇りが持てます。
若松 園芸事業は、お客さまの喜ぶ顔を間近で体感できる素敵な仕事ですからね。今後の会社としてのビジョンや目標について、どのようにお考えですか。
森坂 「世界一の園芸会社」の実現に向けて、グループ売上高300億円を1つの目標としています。ただ、規模に合わせて会社の形を変えていく必要があるかも知れません。
若松 TCGが提言している「1・3・5の壁」を乗り超える必要があります。中堅企業は売上高100億円、300億円、500億円、1000億円と、いわゆる「1・3・5」で成長の壁に当たります。それを超える経営環境の整備が必要です。例えばホールディングス化は、M&Aでグループインした会社も含めてバランス良く経営しやすい側面はあると思います。規模が大きくなるほど海外を含めた事業を1人で見るのは難しくなります。個々の事業は各事業会社の社長に任せて、全体をホールディングスで見ていく方法です。
また、事業承継をどう考えるかによって変わってきますが、ホールディング会社と事業会社の承継を分けて考えられる点もメリットの1つです。
森坂 なるほど。今でも事業会社や拠点はそれぞれの責任者に任せていますが、視野に入れておくべきですね。まずは、売上高300億円を目指して一歩一歩、社員と積み重ねていきたいと考えています。
若松 遠くない未来に必ず実現されると確信しています。今回は経営理念や人材育成、事業戦略を通して森坂会長の経営哲学を伺い、大変勉強になりました。ありがとうございました。
ユニバーサル園芸社 代表取締役会長 森坂 拓実(もりさか たくみ)氏
1948年福井県生まれ。1968年ユニバース園芸(現ユニバーサル園芸社)創業。
(株)ユニバーサル園芸社
- 所在地 : 大阪府茨木市佐保193-2
- 創業 : 1968年
- 代表者 : 代表取締役会長 森坂 拓実、代表取締役社長 安部 豪
- 売上高 : 168億5900万円(連結、2024年6月期)
- 従業員数 : 1350名(連結、2024年6月期)