【第5回の趣旨】
住まいと暮らしビジネス成長戦略研究会では、全国で成長している「住まいと暮らしドメイン」の優良企業を視察訪問している。
第11期のテーマを「事業領域拡大×事業サービス化の視点で挑むハイブリッド経営」とし、第5回では、東急コミュニティー、リコージャパン、Mytepro Technology Japanをゲストに招き、事業戦略についてご講演いただいた。
研究会2日目は、リコージャパンの講演及び、RICOH Smart&Innovation Centerの施設見学から、住まいと暮らし関連企業を取り巻く環境変化や政府の動向を踏まえ、DXとGX(グリーン・トランスフォーメーション)、そしてAIを活用した新しい顧客価値の提供について学びを深めた。
開催日時:2025年5月30日(東京開催)
はじめに
リコージャパンは、さまざまな業種における顧客の経営課題や業務課題の解決を支援する法人向けデジタルソリューション企業である。同社は、長年にわたり培ってきた技術力と業界知識を生かし、企業のDXを支援する革新的なソリューションを提供している。
かつては、プリンターや複合機といった製品(モノ)の製造・販売を主軸としていたが、顧客のニーズの変化や市場環境の進化に対応するため、単なる製品提供から顧客の課題解決を支援(コト)するソリューション企業へと転換を遂げた。
この戦略的な転換により、顧客のDX推進に寄与するICTソリューションサービスを幅広く展開するようになり、企業の業務効率化や競争力強化を支援する取り組みを進めている。本講演では、企業の業務効率化や競争力強化を支援する同社のDXソリューション事例についてご講演いただいた。
出所:リコージャパン講演資料
リコージャパンのICTソリューションサービス
住まいと暮らし関連企業が事業を推進する上での課題として、個々の企業が持つ独自性の重視が挙げられる。特に、DXは単なるコストではなく、競争優位性を確保するための重要な手段として認識することが肝要である。DXを成功させるためには、経営戦略とIT戦略を一体化させ、両者が連携して取り組むことが鍵となる。
リコージャパンは、顧客が抱える業種や業務に特有の課題を解決するため、ソリューションの質と量を拡充し、顧客の収益力強化を支援している。
DX・GXやAI活用を推進するソリューション拠点「RICOH Smart&Innovation Center」
リコージャパンが運営するRICOH Smart&Innovation Center(以降、SIC)は、DXやGXの実現を目指し、AIやデジタルサービスを活用して新たな顧客価値を提供する場である。SICは、同社本社事業所11階に設置されており、顧客と現状の課題を共有しながら、同社が提供するスマートで革新的なソリューションを通じて、課題解決後の理想的な姿を具体的に体感できる環境を提供している。
またSICでは、AIやデジタル技術を活用して顧客の課題を可視化し、解決に向けた方向性を顧客と共に検討する場として機能している。これにより、顧客は自社の課題を深く理解し、同社のソリューションを活用した具体的な解決策を検討することが可能となる。さらに、課題解決後の実現可能な未来像を描く支援を行い、顧客のビジョンを具現化するプロセスをサポートしている。
SICは、単なる技術展示の場にとどまらず、顧客との協働を通じて課題解決を促進する新しい価値提供の拠点として位置付けられている。
リコージャパン本社内のRICOH Smart&Innovation Center
「360°カメラ」の説明を受ける研究会参加者
DXによる課題を成長の機会と捉えた建設業・住宅産業の変革
建設業や住宅産業は、労働環境の改善の遅れ、高齢化・人手不足、資材高騰・賃金増加、技術革新への対応の遅れといった深刻な課題に直面している。このような状況を克服し、法令順守、労働生産性の向上、収益性の向上、企業価値の向上を実現するためには、DXの推進が不可欠である。
DXを通じて、データの分析と利活用を活用し、収益マネジメントを強化することが求められる。また、業務プロセスを再設計することで効率化を図り、価値創出を目指すことが重要である。特に、デジタル技術を活用した事業変革や構造改革を通じて競争優位性を確保することが、持続可能な成長を実現するための鍵となる。
デジタル技術を活用することで、労働環境の改善や生産性向上を実現し、業界全体の課題を解決することが可能となる。例えば、データを活用した業務の効率化や、AI・IoTを活用した現場管理の最適化により、従業員の負担を軽減しつつ、収益性を向上させることができる。デジタル技術を通じて新たな価値を創出することで、住まいと暮らし関連企業は業界全体の発展に寄与するのだ。
住宅関連業者に求められるDXについて理解を深める研究会参加者

執行役員 デジタルサービス企画本部 副本部長