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研究リポート
人的資本研究会
人材を投資により生産性を高められる「資本」として捉え、人的資本と活育サイクル(採用・育成・活躍・定着)の視点で事例研究を進めます。
研究リポート 2025.07.04

地域課題の解決を理念とした事業成長と人財戦略 クレタ

【第3回の趣旨】
人的資本研究会は、「人材投資は活育サイクルをどう磨くか!人への投資がこれからの企業価値を決める」を今期のテーマとしている。
第3回では、ゲスト2社にご講演いただき、元日本ハムファイターズの村田様からは「野球から得た人生で大事なこと」、株式会社クレタの石亀様からは「地域課題の解決を理念とした事業成長と人財戦略」についてご講演いただいた。

開催日時:2025年6月10日(北海道開催)

 

はじめに

 

株式会社クレタは1998年に設立され、創業30年弱でありながら売上高が50億円に迫る北海道でも有数の急成長企業だ。

 

「軽自動車で北海道を元気に」を企業理念とし、本社のある苫小牧市と札幌市内を中心に「北海道軽パーク(HOKKAIDO K PARK)」というブランド名で軽自動車の販売を手掛けている。

 

現在、同社は長期目標として2035年度までに売上高300億円、長期目標に向けた中期目標として2029年度までに売上高100億円(2025年度の約2倍)を掲げる。目標に向けた事業戦略および人財戦略についてお話いただいた。

 


※同社HPより引用

 


 

一気通貫の人財戦略

 

①成長戦略-②採用戦略-③育成戦略-④定着戦略を一気通貫でデザインする

 

同社では5カ年計画の成長戦略として、「2029年度(2030年5月31日)までに売上高100億円を達成」という目標を掲げている。

 

この目標の達成に向けて販売台数、車検台数についてそれぞれ重点指標を策定。その達成に向けて、出店計画や既存店舗の拡張などの組織戦略を策定している。

 

上記の組織戦略の実行にあたって、重要になるのが人財戦略だ。

 

理想の人財像との量的/質的ギャップを設定し、ギャップを埋めるための採用戦略を立案。また採用後の人財を質的に理想像に近づけるための育成戦略も立案している。

 

さらに、育成した社員が長く同社で働き続けられるような定着戦略まで立案し、各戦略を一気通貫で実行している。

 

これらの施策により、同社は直近10年間で売上高は約4.6倍、従業員数は約2.25倍という高成長を実現してきた。

 

人的資本体系図 ※タナベコンサルティング作成
※タナベコンサルティング作成

 

急成長を支える採用戦略・育成戦略

 

企業ブランディングによる採用強化とスキルマップによる育成

 

前述の成長戦略に沿った中期経営計画では、2027年度時点の従業員数を199名(うち管理職22名)を目標として設定。

 

各年の離職率を考慮に入れつつ、目標達成に向けて、単年度ごとの採用目標数を決めていく。この際、単に総採用人数を決めるのではなく、「職種別(営業職/フロント職/整備職など)」や「新卒/中途採用別」に各年で目標を設定して活動することで、より成長戦略に沿ったものにしていく。

 

具体的な活動については、集客/惹きつけ/応募/面接/承諾/入社という採用プロセスのうち、集客に重点を置いて活動。メディアや書籍などでの露出を増やし、認知拡大に努めた。

 

これらの施策により、現在ではマイナビや日経の就職人気ランキング(北海道エリア)では、それぞれ13位、24位を獲得している。

 

さらに、入社後は各種研修に加えて、スキルマップによる個人ごとの成長のポイントを可視化することで、効率的な育成を可能にしている。加えて、社内外のロールプレイング大会への参加を促し、優秀者は表彰することで、社員の成長意欲を高める仕組みを整えている。

 

メディア露出や書籍を通じた認知拡大、ブランディングの成果もあり、 就職人気ランキングで上位を獲得(画像は講演資料より引用)
メディア露出や書籍を通じた認知拡大、ブランディングの成果もあり、
就職人気ランキングで上位を獲得(画像は講演資料より引用)

 

社員のキャリア設計と対話による定着戦略

 

育成した社員が長く働ける環境を整える

 

同社では、育成した社員が定着できる仕組みを整える定着戦略にも力を入れている。

 

具体的には、「理念と行動指針に沿った評価制度の構築」「職種を跨いだ異動を認める社内転職」「専門スキルを重点とするキャリアかマネジメントを重視するキャリアかを従業員が自由に選択できる制度の整備」などを行ってきた。

 

また、中期経営計画において、年間休日の増加や賃金の引き上げといった待遇改善までを明示することに加えて、これまでの実績を振り返ることで同社での勤続意欲を高めている。

 

これらの施策により、年度別離職率は21.1%(2020年度)から2.9%(2024年度)まで改善することに成功した。

 

クレタの職種一覧(画像は講演資料より引用)
クレタの職種一覧(画像は講演資料より引用)

PROFILE
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石亀 裕晃 氏
株式会社クレタ 代表取締役副社長