【第2回の趣旨】
タナベコンサルティングの企業価値を高める戦略CFO研究会の第2回テーマは「企業価値を高める成長戦略・M&A戦略」。
企業価値を高める上で、M&Aがいかに重要であるかについて、実際にM&Aを通じて成長を遂げたペプチドリームとフジトランスポートの講義を通じて学んだ。これにより、M&Aを活用した成長戦略の描き方とそのポイントを明らかにする。
開催日時:2025年4月23日(東京開催)
M&A強化で事業を拡大
まず、フジトランスポートの代表取締役社長である松岡弘晃氏より、フジグループの成長過程について説明いただいた。フジグループが年商700億円に達するまでの主な要因として、2009年以降に実施した計24社のM&Aが挙げられる。一方で、全てのM&Aが成功したわけではなく、多くの失敗を経て現在の成功があるという。
本講演では、過去のM&Aにおける失敗例を紹介しつつ、運送会社が成長するためのポイントや、最小限の投資で会社を拡大・成長させる方法についてお話しいただいた。
2009年に初のM&Aを実施した後、成長が加速 出所:フジトランスポート講演資料
逆張りの戦略
フジグループでは、新型コロナウイルス感染症の流行により世の中が自粛ムードに包まれていた2020年に、「自粛禁止令」という独自の方針を打ち出した。世間が停滞している時期をチャンスと捉え、流れに逆らう形で積極的に行動を起こしたのである。
具体的には、営業活動を強化するとともに、コロナ禍で業績が悪化した企業を積極的にM&Aすることに成功した。
当時は、急激な事業拡大により社員への負担が一時的に増加したものの、最終的には売上高700億円を達成したことで、社員のモチベーションも向上した。
コロナ禍期に出したフジグループの方針 出所:フジトランスポート講演資料
投資を最小限にするM&A
フジトランスポートでは、投資額を含め、いかにリスクを最小限に抑えるかを重視している。そのため、リスクの少ない事業譲渡形式でのM&Aを多く採用している。
具体的には、会社全体を買収するのではなく、従業員やトラックなど、必要な資産のみを譲り受けることで、リスクを抑える手法を取っている。
また、投資額を抑える観点から、仲介会社には極力依存せず、買収を検討する企業の経営者と直接会うことを重視している。これまでに24社をM&Aしたが、松岡氏自身がトップ面談を行った企業は100社以上に上る。松岡氏は、直接的なコミュニケーションを通じて、多くの経営者と信頼関係を築いてきたのである。
出所:フジトランスポート講演資料
グループイン企業をなじませる方法
グループインした企業の社員に対しては、まずフジグループのビジョンを丁寧に説明する。その後、全社員との個別面談や懇親会を実施し、信頼関係を構築している。
運送業界では「人」が最も重要な資産であり、いかに人材を確保するかが事業戦略の鍵を握る。そのため、グループインした企業の社員がフジグループになじめるよう、きめ細かい対応を行っている。
さらに、フジグループでは「お客様より従業員を大切にする」という方針をホームページ上で掲げているほか、自社公認のYouTuberを雇用するなど、アウターブランディングにも力を入れている。採用活動においても、ホームページの充実がとても重要であるため、さまざまな情報を公開している。
出所:フジトランスポート講演資料
