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研究リポート
企業価値を高める戦略CFO研究会
経営者・経営幹部は、事業価値・企業価値を見極め、事業ポートフォリオを最適化する必要があります。会計ファイナンス思考による戦略的意思決定を学びます。
研究リポート 2024.09.18

新しい時代の経営者のマインド・リセット タビオ

【第4回の趣旨】
企業価値を高める戦略CFO研究会第4回テーマは「M&Aによる企業価値向上」。M&A戦略への投資は企業価値向上に向けた重要課題であり、「攻めの戦略」として、人材投資・DX投資・設備投資に次ぐ重要事項という認識が広まっている。そのような現状を踏まえ戦略立案からPMIまでの全体像、M&Aを実行するまでの各過程におけるポイントをいくつかの業種の事例を踏まえて学んだ。M&A実施後、早期にシナジーを創出するため、戦略CFOは経営者のビジネスパートナーとして企業価値を高めることが役割である。

開催日時:2024年8月21日

タビオ
代表取締役社長 越智 勝寛 氏

 

 

はじめに

 

登壇者である越智氏は、1997年にダン(現タビオ)に入社。商品本部長、営業本部長を経て2008年より代表取締役社長に就任した。同社はさまざまな層に合わせた複数の靴下専門店ブランドを国内に展開し、その中の「Tabio」は海外(中国、韓国、イギリス、フランス)へも展開している。

 

海外製品の増加により、品質よりも価格を重視する消費者が増えている中で、Made in Japanのものづくりとともに、国内の靴下産業の永続、発展に尽力している。


タビオが展開するブランド

 


 

まなびのポイント1:不易流行

 

企業には企業価値を守るために「変えなければならない」ことがある一方で、 「変えてはいけないこと」も多く存在する。同社の変えてはならない物として、理念や商品の品質、あいさつによる自然なコミュニケーションといった文化、工場を含め、タビオ本部と店舗をダイレクトにつなぎ、全体で商品を適時に調達する生産管理体制などがある。これらの変えてはならない物により、店頭の動きに連動した仕組み作りや社内の雰囲気が作られ、取引先や消費者から信頼を得ている。パンデミックを経て世界のコミュニケーションの形態や価値観に変化が起こる中で、マーケットインの考えで時代に合わせた商品開発や新たな販売方法を取り入れ業界のトップ企業として発展している。

 


靴下専門店ブランド「Tabio MEN」の店舗

 

 

まなびのポイント2:時代に応じたマインドリセット

 

過去の出来事が掘り起こされ、企業が予期せぬタイミングでバッシングを受けることがある。同社では現在、基本的に靴下に対して強い思いがあり、就任前から商品を通して親交のあった人物とアンバサダー契約をしている。これは、著名人を起用した後に、実は普段は当社の製品を着用していないといったことが起こらないためのリスク対策である。

 

新しい物事の選択が本当に正しいのかの判断は、経営陣が率先して行い、リスク対策や消費者のニーズに合っているかを見極める必要がある。変化の激しい現代では時代に合わせたマインドリセットが求められている。

 


 

まなびのポイント3:サッカー経営

 

企業に起こり得る問題の事例として、企業の弱みを克服するための人事異動が社員の活躍につながらないことが挙げられる。サッカーの戦略において、長所に合ったポジションへ各人を配置するのと同じように、同社では、個人の趣味や得意分野に合った仕事を社員に任せている。そして、各部署を1つのサッカーチームのように捉え、チーム力の最大化のために人の入れ替えを行い、働き甲斐やモチベーションの向上を図っている。

 

各チームで社員それぞれの長所を生かした自由度の高い仕事を任せる一方で、CFOの観点から数字で業績を伝えることや、創業者の思いや社長の考えを社内に発信している。引き締めなければならない箇所は引き締めることで、経営陣は会社全体をマネジメントしているのだ。


ファッション性や機能性を訴求した広告