【第1回の趣旨】
ビジネスモデルイノベーション研究会では、「両利きの経営」における「知の探索と深化の融合・結合の実践」をテーマにさまざまな分野における秀逸なビジネスモデルを構築し、成功している優良企業を視察訪問している。
第12期のテーマを「The Intersection of Business Sense ~ビジネスモデル イノベーションを実現するための感性を磨く交差点~」とし、ゲスト企業の視察を実施した。
研究会参加者は、カーツメディアワークス、アール・エフ・ヤマカワ、マネーフォワードの講話・現場視察から、「コ・クリエーション戦略(企業と利害関係者(ステークホルダー)が協働して新たな価値を創造する戦略)」について学んだ。
開催日時:2025年3月4日(東京開催)
はじめに
カーツメディアワークスは、テレビ業界に勤めていた代表取締役社長CEOの村上崇氏が立ち上げた、戦略PRとデジタルマーケティング戦略を得意とするPR会社である。2023年にタナベコンサルティンググループに参画し、さらなる顧客価値の最大化を目指している。
古巣であるテレビメディアとの強固なリレーションや、海外プレスリリース掲載・配信数ナンバーワンの発信力、グッドデザイン賞を多数受賞している「インフォグラフィック」の国内制作実績ナンバーワンなど複数の強みを保有している。
同社は、より多くのマスメディアに報じられるように情報を設計するPR戦略構築から、デジタルメディアとSNSを活用したデジタルマーケティング戦略まで一気通貫で提供している。また、海外向けPRや海外デジタルマーケティングを通じて、顧客のグローバル化を支援している。今回は、国内のみならず海外にも視野を広げた世界共通の「広報・PR戦略」の重要性について学んだ。
カーツメディアワークス、同社代表取締役社長CEOである村上氏の著書
報道が報道を呼ぶ「報道連鎖」の重要性
ブランディングには、よく用いられる手法として「広報」と「広告」がある。
広報とは、報道機関などの第3者評価を元に発信される無料の媒体である。広告とは異なり、自発的な発信ではないためコントロールできないという点があるが、信頼性は高い。中には、広告に頼らず広報のみで知名度を高めた企業も多く存在する。
しかし、「広報のみでブランディングを成功させるのは難しく、稀有なパターンである」と村上氏は語る。自発的にSNSやプレスリリースで情報を外部に発信し、魅力的な内容であればウェブメディアや新聞などが報道し、さらにそこからテレビ、ラジオ、口コミで瞬く間に情報が拡散される。この「報道連鎖」こそがブランディングを成功に導く方程式であり、広告と広報を組み合わせ、シナジーを生み出すことが鍵となる。
海外向けプレスリリース配信サービス「Global PR Wire」
報道価値を高め、報道の目にとどまるための戦略
広告やプレスリリース記事を発信したとしても、報道されなければ社会の目にとどまることはない。報道関係者に対して、「ネタになる」「新しい」「ニーズに合っている」と思わせることが、情報発信を打ち出す際に重要な要素となる。
自社製品に関連するキーワードを洗い出し、季節性(シーズナル)・トレンドに合わせた情報を発信することが、広報に対して有効な手段と言える。また、意外性や逆張りに対して興味が引かれやすい傾向が強いため、そういった情報発信を行うことで、面白半分で拡散される可能性もある。例えば、ネスカフェの「眠るためのコーヒー(カフェインレス)」などが分かりやすい例である。
外部・内部環境を整理し、自社の事業や製品・サービスに関連するキーワードを洗い出すことで、逆転の発想を生み出すことができる。
食品関連企業における重要な広報活動は「体験機会・体験価値」の創出
広報において、ウェブメディアや新聞、テレビ、ラジオ、口コミなどが主流の媒体やツールであるが、食品関連企業においては「メディア関係者を試食会やイベントに招待し、実際に匂いを感じ、味わってもらう『体験の創出』が重要な広報活動である」と村上社長は語る。
カーツメディアワークスが支援した酒造メーカーの事例では、試飲会とプレスツアー、その他メディアへの情報発信を複合的に実施した結果、テレビ掲載2件、新聞雑誌掲載83件、ウェブメディア掲載585件と、幅広い媒体での露出を獲得した。
資料やプレゼンだけでは伝わらない業界特性や商品性能を考慮し、それに適した戦略・戦術でブランディングをより効果的に進めていくことが重要である。
