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研究リポート
人的資本研究会
人材を投資により生産性を高められる「資本」として捉え、人的資本と活育サイクル(採用・育成・活躍・定着)の視点で事例研究を進めます。
研究リポート 2025.04.10

第一生命のダイバーシティー、エクイティー&インクルージョン 第一生命保険

【第5回の趣旨】
人的資本研究会は、「人材こそ“資本”! 人への投資がこれからの企業価値を決める!」をテーマとしている。今回は、ダイバーシティー経営の視点や人的資本経営推進の指標となるISO30414認証取得、人材を資本と捉えて企業価値の向上につなげる手法についてご講演いただいた。
ゲスト企業2社の講演を通して、取り組みの意義や成果、多様化する時代の中で「人を大切にする経営とは何か」を学んだ。
開催日時:2024年10月11日(大阪開催)

 

はじめに

 

1902年、日本初の相互会社として創業した第一生命保険。生命保険事業がグループの核であるものの、近年では非生保事業の展開に力を入れている。「共に歩み、未来をひらく多様な幸せと希望に満ちた世界へ」をグループパーパスに掲げ、一生涯のパートナー「お客さま第一主義」を目指している。また、全ての人々が安心に満ち、豊かで健康な人生を送れるWell-being(幸せ)に貢献し続け、多様な個性を生かし、最大限に能力を発揮することで、持続的成長を実現したいと考える。そのような観点からダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(以下、DE&I)の推進に注力しているという。DE&Iを推進する意義と、客観的数値による取り組みの成果、女性社員比率9割の組織が取り組む女性活躍推進のノウハウをお話しいただいた。

【図表1】グループ人財戦略キーメッセージ

グループ全体での人財メッセージを発信


 

DE&Iは、あった方がよいものではなく、なくてはならないもの

 

組織の在り方を根本的に変えていくためには、少数派が30%以上になる必要がある(黄金の3割)。同質性が強いとバイアスがかかり、組織を成長させられない。

多様性のある組織は、①新しいアイディアが生まれる ②業務の効率化を図れる ③リスク管理能力が向上する ④優秀な人財が集まる。

つまり、DE&Iは、組織の持続的成長、企業価値向上においてなくてはならないものである。

トップからの発信を社内へ浸透させ、共通認識を持つための取り組みも参考にすべき点である。

 

多様な人財の活躍

 

女性活躍のため、2009年に人事制度を大きく変革。職掌を一本化し、全員が適材適所で活躍できる仕組みに変えた。教育も同時に見直し、女性管理職の比率は右肩上がりに増加している。ロールモデル交流会を行ったり、社内コンシェルジェが伴走・フォローをしたりして、女性が活躍できる環境をエクイティの観点でサポートする。

男性育休は、2022年度より「累計1か月以上取得100%」を目標に掲げる。当初は組織内での抵抗感もあったが、各種の不安感を1つずつ取り除くことで大幅に進展した。上司・職場での理解、取得者も周囲に配慮する相互理解・協力が成功の鍵だという。長らく新卒採用を基本とした同社だったが、キャリア採用の強化にも取り組み、基幹総合職のうち49%がキャリア採用者となったことは驚くべき変革であり、企業風土への影響も大きい。

【図表2】女性管理職数と比率の推移

管理職の女性比率は右肩上がりに推移しており、現在は約3割に到達

 

自律的なキャリア開発は組織風土づくりから

 

手上げ式のキャリア公募制「Myキャリア」を通年で実施し、社員一人一人が自身のキャリアについて自律的に考えている。フルリモート、社外副業、社内副業、社外へのキャリアローテーションを導入し、自分らしさとは何かを考え、自らの意志を持って活躍できる環境を整えている。その土台には「1for1」(それぞれの成長に向けての意味を込めてforとしている)という考えがあり、継続的に対話をしながら、個人と組織の価値観や、個人と組織の成長を結び付けている。社員一人一人の活躍に向き合うことで、組織の文化が変わり、働きやすく働きがいのある職場ができ、これが組織・会社の成長を生む。取り組みはまだ道半ばであり、真のDE&Iの実現を目指し続けるという同社の姿勢から学ぶべき点は多い。

【図表3】年代別Myキャリア制度利用状況

公募職務数が年々増加し、年齢問わず応募者・合格者が出ている

PROFILE
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猪平 徳子 様
第一生命保険株式会社
人事部 DE&I・人権啓発室長