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研究リポート
企業価値を高める戦略CFO研究会
経営者・経営幹部は、事業価値・企業価値を見極め、事業ポートフォリオを最適化する必要があります。会計ファイナンス思考による戦略的意思決定を学びます。
研究リポート 2025.03.18

最先端を行く経営管理 一般社団法人 日本CFO協会 FP&Aプログラム運営委員会

【第4回の趣旨】
企業価値を高める戦略CFO研究会の第1回テーマは「ファイナンス思考による企業価値向上とCFOの役割」。CFOおよびファイナンス組織の在るべき姿は企業価値を最大化させるために「経営意思決定における真のビジネスパートナー」になることである。今回は、組織と個人の成長を両立しながら、社会貢献し続ける経営を持続するコーポレート機能とCFOの役割について学んだ。

開催日時:2025年2月14日(東京開催)

 

はじめに

 

一般社団法人 日本CFO協会 FP&Aプログラム運営委員会 委員長の石橋善一郎氏をゲストにお迎えした。海外でのCFOの役割と、日本の経理・財務の延長にあるCFOとの違いに対する問題提起に始まり、会社の計画(中期経営計画や年度方針)に対してどのようにマネジメントを行っていくかや、“経営管理”における本質と実務の要諦についてご講演いただいた。特に「経営管理目的」こそがCFO組織のビジョンとして、「➀真のビジネスパートナーの役割」「➁マネジメントコントロールシステムの設計者および運営者の役割」を担っており、企業価値の最大化に向けた活動をしていくことであると受講者へ熱く伝えた。

 


CFOの役割「FP&A(Financial Planning and Analysis)」
(出所:石橋 善一郎 著「最先端の経営管理を実践するFP&Aハンドブック」
(中央経済社、2024年)より)

 


 

組織と経営管理について

 

中期経営計画や年度方針に基づく予算と実際の業績を経営管理(マネジメント)していくにあたり、営業利益レベルでモニタリングしていくことが重要である。このマネジメントは本社のみが行うのではなく事業部レベルで実施していくことが必要だという。グローバル企業の組織はCFOをトップとした組織が独自にあり、本社・各事業部を担当する“コントローラー”が存在し、業績マネジメントも含めた事業の要の役割を担っている。そしてCFOの役割である、「FP&A(Financial Planning and Analysis)」とは「経営管理」そのものであり、「➀真のビジネスパートナー」「➁マネジメントコントロールシステムの設計者および運営者」として、「長期的な戦略形成と実行」と「短期的な業績向上」を実現していく責任があるのだ。

 


CFOと各コントローラーにおける組織の位置付け
(出所:石橋氏講演資料より)

 

マネジメントコントロールシステム

 

CFOに対する役割の変遷を米国だけでなく、日本におけるFP&Aの歴史も交えてお話しいただいた。米国の会計学者ホーングレンは、マネジメントコントロールシステムの目的を「組織の所与の戦略の実行」ではなく、「組織目的の達成」にあると位置付け、組織の真ん中には人がいるという概念の下に次の4つにまとめた。 ➀組織の目的を明確に伝達する、➁組織目的を達成するために自分たちが要求されている特定の行動について理解する、➂アクションの結果を組織に伝える、➃社員が組織の目的を達成できるように動機付ける。

 

一方で、1960~70年代の米国では、今の日本のCFO(経理部長)としての役割となっており、あくまでも自部門の管理者(コントローラー=経理部長)であり、日本と同等の考えであった。

 


CFOの役割「FP&A(Financial Planning and Analysis)」について話す石橋氏

 

インテルのCFO組織、ビジョン

 

改めて「経営管理目的」がCFO組織のビジョンとして、“CFO”を「企業価値を最大化するための経営意思決定における真のビジネスパートナー」と役割を置いた。一例として、インテルにおける研究開発費の予算編成について、いかにCFOとして経営意思決定に関与したか、当時の実体験を基にお話しいただいた。研究開発費の予算編成・統制において、“販売管理費としての経費計上“や“期内予算の消化“といった消極的な思考ではなく、戦略との紐付けを大前提とすることが必須である。また、3カ月ごとのローリング予測や実行予算プロセスの実施といった細かなモニタリングによる資源配分の再構築や、年単位の財務会計ではなく随時12カ月先の予測を行うことも必要である。結論として、経費感覚の研究開発費とは一線を画した投資活動としての運用を行っていくことで「経営意思決定における真のビジネスパートナー」の役割を果たすことができる。

 


質疑応答の様子

PROFILE
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石橋 善一郎 氏
一般社団法人 日本CFO協会 FP&Aプログラム運営委員会 委員長