【第1回の趣旨】
タナベコンサルティングのPR/広報研究会では、多種多様な他企業の成功事例から、自社におけるPR戦略構築~具体的実装力を強化する方法を学び、自社の魅力を最大限に発信する広報・PRのメソッドを提供する。
第2期第1回のテーマは「チャンスを捉えた戦略的コミュニケーション」。目的とターゲットを明確に定め、その機会をしっかりととらえた戦略的コミュニケーションでステークホルダーとの関係を構築した取り組みについて、ゲスト講師2社(サンコー、獨協大学)に講演いただいた。
開催日時:2025年2月17日(東京開催)
大ヒットを飛ばすアイデア家電メーカー
サンコーは、秋葉原を拠点とするアイデア家電メーカーである。生活の小さな悩みを解決するユニークな家電やガジェットを数多く取り扱い、日常に役立つ商品を提供している。これらの「面白くて便利な商品」は、テレビやSNSでもたびたび紹介され、多くの方々に支持されている。
本研究会では、同社の執行役員で広報部の部長でもある﨏(えき)晋介氏が「中小企業がメディアに取り上げられるコツ」をテーマとして講演を行った。講演では、メディアに取り上げられるための具体的な戦略や、企画の重要性、広報活動の意義について詳しく解説。特に、メディアとの関係構築や、視聴者の興味を引く企画の提供が重要であることを強調されていた。
﨏晋介著『年間200回メディア出演を実現させる 広報ekky流「伝わる」の本質』(徳間書店、2023年) 出所:サンコー講演資料
企画の重要性
メディアに取り上げられるためには、単なる商品紹介ではなく、視聴者の興味を引く「企画」が必要である。同社では「料理の鉄人に家電メーカーの料理は勝てるのか」という企画を通じて、同社の家電がメディアに取り上げられたこともある。このように、メディアに取り上げてもらうには、商品そのものの魅力を伝えるのではなく、メディアが求めているニーズに寄り添ったコミュニケーションが必要なのである。
また、企画の内容は視聴者の関心を引くものでなければならない。視聴者が何に興味を持っているのかを理解し、それに基づいた企画を考えることが求められる。例えば、季節や流行に合わせたテーマを設定することで、視聴者の共感を得やすくなる。視聴者が楽しめる要素を取り入れ、エンターテインメント性を持たせることで、メディアに取り上げられる可能性が高まるのである。
自社の強みを生かしつつ、視聴者のニーズに応える企画を提供することが、メディア露出を増やす鍵となる。
サンコー秋葉原総本店の外観 出所:サンコーHP
制作会社へのアプローチ
メディアで取り上げられる「企画」を求めているのは、メディアだけではない。メディアの企画制作会社もまた企画を求めている。制作会社への企画書提出は、メディアに取り上げられるための重要なステップである。制作会社はトレンドやキーワードを重視しており、情報収集を行っているため、企業側も制作会社に対して「企画のネタ」を提供することが重要である。
同社も日常的に企画書を制作会社に送付し、取り上げてもらう機会を増やしている。特に、コロナ禍においては「コロナ禍でも売り上げ244%」などの明るい話題を提供し、制作会社の関心を引いた。制作会社との関係を築き、相手のニーズに応じた企画を提供することが、メディア露出を増やすことにつながる。
コロナ禍でオンライン飲み会が流行した際に、メディアや制作会社へアプローチした企画書 出所:サンコー講演資料
メディアとの関係性を構築
広報活動においては、メディアとの関係性を構築することが重要である。同社では、プレスリリースを分かりやすい言葉で作成し、メディアが理解しやすいように配慮している。特に写真を多用し、視覚的に訴えることで、メディアの関心を引くことを意識している。
また、メディアにとって価値のある情報を提供することも重要である。広報活動は単なる情報発信ではなく、関係性の構築を通じてメディアに取り上げられる機会を増やす重要な手段である。企業には、メディアとの信頼関係を築くために、定期的に情報を提供し、相手のニーズに応じたアプローチを行うことが求められる。
さらに、メディアとの接点を増やすために、イベントや取材の機会を積極的に活用することも重要である。これにより、自社の存在感を高め、メディアに取り上げられる可能性を高めることができる。
このように、広報活動は戦略的に行うべきであり、メディアとの関係性を重視することが、中小企業がメディアに取り上げられるためのポイントである。
