【第6回の趣旨】
企業価値を高める戦略CFO研究会第6回テーマは「企業価値を高めるCFO思考・CFO機能」。企業価値を向上させるためには、CFOの思考と担う役割が重要である。従来の金庫番的な役割ではなく、ビジネスパートナーとしてのCFOが持つべき思考と知識は何か。それをもってどのような成長戦略を描き、企業価値を向上させていくのか。具体的な事例を通じて学びを深めた。
開催日時:2024年12月12日(東京開催)
はじめに
アトラエは「テクノロジーによって人々の可能性を拡げる事業を創造する」をミッションに掲げ、IT業界に特化した求人メディア「Green(グリーン)」や、ビジネスパーソン向けのマッチングアプリ「Yenta(イェンタ)」などを運営している。同社の主力サービスは組織のエンゲージメントを可視化する「Wevox(ウィボックス)」で、さまざまな業界の企業・組織へ導入されており、その実績は3530を超える。
同社は2016年にHR Tech銘柄として初のIPOを実現。2019年以降、毎年新たな資本業務提携を実施しており、同社は今日に至るまでの成長過程で、コーポレートチームの統括や出資業務、キャッシュマネジメント、子会社設立などさまざまな経験をしてきた。今回の講演では、それらを通して培ったCFOの役割と考え方についてお話しいただいた。
社名の「atrae」とは、スペイン語で「魅了する」「引きつける」を意味する
財務戦略×事業戦略の両輪を実現するCFOチームの構築と強化
CFOとは、単にファイナンス領域に強みを持つだけではなく、経営チームの中にいる人であることが望ましい。また、CFOは経営チームの他のメンバーと対等な関係に位置付けられる。CFOが適切に機能するためには、事業部門とコーポレート部門が対等な関係にあることも重要である。エクイティーバリューを上げるという観点では、 CFOはトップセールスであるべきであり、財務戦略と事業戦略の両輪で企業価値を向上させることが求められる。
アトラエの事業(同社講演資料)
事業戦略とエクイティーストーリーのポイント
IRにおけるエクイティーストーリーとは夢を語ることであり、誰に語るかという観点でKPIを開示すべきである。エクイティーストーリーにおけるKPIは、どの指標をどのように開示するかが重要だ。投資家の要請に沿った型通りの開示ではなく、事業戦略や事業特性に応じた開示と、事業フェーズに合わせたメッシュコントロールが求められる。そこでアトラエでは同社の事業の季節変動性を踏まえて、一般的には四半期単位で比較されるKPIの進捗状況を年度比較で示している。
また、IRとは中長期的な期待値を含む情報開示であるため、業績が伸び悩んだ際に投資家が納得できる情報を開示することで企業価値を持続的に向上させられる。
求人メディア「Green」事業のKPI推移(同社講演資料)
エクイティストーリー×バリュエーション×投資家ターゲティング
CFOとしてエクイティバリューを向上させるに当たり、いかに株価のボラティリティを下げるかも重要なポイントである。アトラエではこれを株主構成の観点から検討し、投資行動が異なる国内機関投資家、海外機関投資家、個人投資家の割合がそれぞれ3分の1ずつであることが望ましいと考えている。
このように投資家をターゲティングすることにより、フェアバリューの実現に向けた能動的な活動がCFOには求められる。
アトラエの株主構成(2024年9月期決算説明資料より)