【第5回の趣旨】
PR/広報研究会では、クロスメディア時代の経営モデルに不可欠な本質的価値と最先端事例を学び、メディア・ステークホルダーを戦略的に動かして物やサービスを売る方法や、自社の魅力を最大限に発信する広報・PRのメソッドを提供する。
第5回のテーマは「ブランドのファンを生み出し継続的なコミュニケーションでLTVを向上させるファンマーケティングの手法について」。ゲスト2社(西日本旅客鉄道株式会社様、亀屋良長株式会社様)による「PR/広報」についての講演を配信。魅力を発信し続けるコンテンツ活用とPR戦略について深く考察した。
八代目当主 吉村 良和 氏
はじめに
1803年創業、今年で221年目となる老舗企業である。誰に懐を見られても恥ずかしくないという意味の「懐澄」が家訓であり、高水準の和菓子作りを行っている。
和菓子の顧客層が高齢化する中でも時代に合わせた商品開発を行い、若年層にも人気の和菓子ブランドとしての地位を確立している。
現在は店頭販売以外にもSNSを活用したネットでの販売、他業種とのコラボ、和菓子の手作り体験会等さまざまなチャネルでファンを増やしている。
今回は、コロナ禍でも利益を伸ばし続けた伝統×トレンドの商品開発とSNSを活用したファンを絶やさないブランディング・コミュニケーション戦術について、八代目当主の吉村良和氏と女将の吉村由依子氏に学ぶことができた。
商品のパッケージや和菓子自体のデザイン性にこだわり日々開発をしている。リアル・デジタル共に亀屋良長の商品を見た際に足を止めてもらう、記憶に留めてもらうためにはどんな要素が必要かを若い世代のアイデアも取り入れながら製品開発に注力している。
まなびのポイント1:知らないことは、無いこと
知られていないことは存在していないことと同義だと考え、若い年齢層へのアプローチを強化。伝統にとらわれすぎず、今求められているものは何かを探求した。その結果、和菓子のおいしさを生かしつつ、目を引く見た目とパッケージのデザインを一新することやコラボ商品の開発につながり、売上増加と若い年齢層の顧客獲得に成功した。
認知獲得のポイントは以下の3つである。
1.記憶に留めてもらうための洗練されたパッケージの開発
目を引く、足を止めてもらうにはどんなデザイン性がターゲットに受けるかを精査
2.コラボ商品
ホテルやミュージアム等の他業種とのコラボを積極的に実施し、オリジナル商品を開発。コンセプトにマッチしたデザインの和菓子を作り話題性を生む。
まなびのポイント2:トレンドを捉えた新商品の創造
顧客の声や時代に合わせた新商品開発に注力している。ヒット商品でもある「スライスようかん」は子どもがスライスチーズをのせてパンを食べているところから着想を得て、家で手軽に小倉バタートーストを食べることができるよう商品開発に注力。
また、10代~30代の若手スタッフによる新しいお菓子創造の場である「かめや和菓子部」を発足。新商品が生まれやすく、風通しの良い環境を整備し、PRしている。かめや和菓子部の成功は以下の6つである。
1.若手のスキルアップ
2.社内コミュニケーションの向上
3.脱マンネリ化(新たな視点からのアイデア)
4.若年層へのアピール
5.SNSフォロワーの増加
6.求人応募者の増加
「身体にも心にもやさしい京菓子を」をテーマにした新ブランド
まなびのポイント3:SNS活用の強化
コロナ禍で売上が6割減少したことがきっかけでSNSの活用を強化。
拡散力のあるX(旧Twitter)とInstagramで商品のビジュアルを生かした投稿やコラボセットの案内をした結果、経営状態も回復。SNS運用の成功の秘訣は以下の3つである。
1.ビジュアルにこだわったクリエイティブの投稿
統一感のあるクリエイティブは見る人を楽しませ記憶に残る
2.裏側を見せる
制作の裏側を見せることでフォロワーに非日常を感じてもらう
3.伝統にとらわれすぎない
「先人たちの知恵の結晶」と考え、今の人に幸せになってもらうためのありがたい道具として活用していく。
SNSはクリエイティブにこだわった投稿を心掛けている。
制作動画のリールなど、裏側が見れるような投稿で話題性を生み出しフォロワーを増やしている。