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研究リポート

ナンバーワンブランド研究会

コロナ後の新しい時代に合わせた最新のブランディングを研究し、参加者の皆様が自社で実装するために、コンサルタントがアドバイス・サポートいたします。
研究リポート 2024.07.04

会社にも働く人にもメリットのある働き方を

エス・アイ

【第3回の趣旨】
タナベコンサルティングの第5回ナンバーワンブランド研究会では、インナーブランディングの先進事例に学ぶため、神戸牛専門の飲食店を展開する吉祥吉グループと、「残業のない会社」として独自の取り組みを行っているエス・アイに講話いただいた。
エス・アイの代表取締役・今本茂男氏は、自分の実体験から、残業のない、仕事と家庭を両立できる会社を目指し、時代に合った働きやすい環境整備に日々努めている。今回は具体的な取り組みについてお話しいただいた。

開催日時:2024年6月5日(神戸開催)

 

株式会社エス・アイ
代表取締役 今本 茂男 氏(左)、広報担当 梶原 有加 氏(右)

 

はじめに

 

1991年設立のエス・アイは、システム開発やデータ入力・加工、Web制作・デザインなどのBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を請け負う会社である。同社の特徴は、全社員52名が無期契約で、正社員・パートタイマーの区別がない雇用形態であることだ。

 

1980年代、データ処理会社で100名以上の社員を率いる管理職を務めていた今本氏は、昼夜問わず、休日もなく働いていた30歳の時、1歳半の実子を亡くした。多忙を極めていたため、入院中に見舞いに行くこともできなかった。その時の後悔から、「会社のために家庭が犠牲になるのはおかしい」と猛省した今本氏は、残業のない会社をつくろうとエス・アイを立ち上げた。

 

「自由出勤制」「全社員時間給制」「ワークシェアリング」「エイジフリー」という独自の仕組みを取り入れたことで、同社はワークライフバランスを実現し、結果としてダイバーシティー経営にもつながっている。これらの制度が定着した現在も、より時代に合った働きやすい環境にしようと、今本氏は日々改善に努めている。

 

 


創業当時のエス・アイの社屋(左)と、現在の本社社屋(右)


 

まなびのポイント1:「残業禁止」と「自由出勤」

 

エス・アイは、社是に「残業禁止」を掲げている。今本氏の「本当に必要な仕事だけをして早く帰ることが重要。時間給を高くして、短い時間で働いてもらいたい」との思いからできた社是である。同社では、効率よく仕事を進めて残業をしないよう、社員が自らの業務管理を徹底している。

 

もう一つ、特筆すべき仕組みがある。「自由出勤制度」だ。社員が毎日、出勤と退勤時間を個人で自由に設定でき、1日のうちに何度も出退勤してよいため、子どもの学校行事に参加するためや家事のためにいったん外出し、また仕事に戻る、といったこともできる。育児中の社員はもちろん、働く時間に制約がある社員が仕事を続けやすい制度となっている。

 

 


社内に掲示された標語

 

 

 

まなびのポイント2:「全社員時間給」と「ワークシェアリング」

 

「自由出勤制度」を支えているのが「全社員時間給制度」である。全社員が仕事の成果を反映する時間給制で働いており、給与金額は当初は半年ごと、現在は1年ごとに、個人の実績に基づいて見直している。早朝や繁忙期などに出勤した際はポイントが加算されたり、難易度の高い仕事をするほど高いポイントを得られたりする仕組みになっているため、社員は競って効率よく仕事をしようとするという。

 

もう1つが、ワークシェアリングだ。ある部門で人手が足りない時は、他部門から臨機応変に応援人員を入れている。前述したポイント制があり、異なる業務を行っても給与に反映されるため、社員は進んで応援に入るようになり、ワークシェアがより一層進展する。さまざまなスキルのある人材の雇用により、作業効率を上げる仕組みができ、生産性アップにつながっている。

 

 

 

 


同一労働・同一賃金の仕組みにより、スキルの高い優秀な人材を獲得

 

 

 

まなびのポイント3:「エイジフリー」と「ダイバーシティー経営」

 

どんなに高い能力を持ち、仕事に対してモチベーションの高い人材も、定年退職制度により、一定の年齢を迎えると退職するのが一般的である。しかし、「長年働いた経験や知識を生かさない手はない」と、同社は「エイジフリー制度」を導入している。

 

年齢に関係なく、働く意欲のある社員は、本人が希望する限り働くことができる。実際に70歳を超える方も意欲的に働いているという。

 

また同社は、障がい者や就職困難な若者など、多様な人材を積極的に雇用し、社員にとって働きやすい職場をつくることで、ダイバーシティー経営にも取り組んでいる。2013年には経済産業省「ダイバーシティ経営企業100選」に選出され、2018年には厚生労働省「働きやすく生産性の高い企業・職場表彰」にて「キラリと光る取り組み証(職業安定局長賞)」を受賞している。