【第1回の趣旨】
タナベコンサルティングの第1回ナンバーワンブランド研究会では、独自のブランディングの先進事例を学ぶため、化粧品の製造販売を行うポーラと、飲食店を運営するトリドールホールディングスにご講演いただいた。
ポーラは、ブランドの可能性を広げるべくインナーブランディングの取り組みを大切にしている。2024年3月に竣工したポーラ青山ビルディングでは、「もっと豊かに もっと楽しく」をコンセプトに、好奇心や五感を刺激するアートや仕掛けが施されている。
今回は、コーポレート室 室長の佐藤幸子氏に、ポーラブランド確立までの道のりと、社員のエンゲージメントを高める取り組みについて解説いただいた。
開催日時:2024年9月26日(東京開催)
コーポレート室 室長 佐藤 幸子 氏
はじめに
1929年創業のポーラは、2029年に創業100周年を迎える。「美と健康を願う人々および社会の永続的幸福の実現」を企業理念に掲げ、時代とともに変化するお客さまや社会と、「美と健康」の可能性を追求してきた。同社が目指すのは、ビジョン「私と社会の可能性を信じられる、つながりであふれる社会へ」の実現である。
自分自身の可能性を信じて、人・社会の可能性をも信じることができる未来。一人一人がもっと自分らしく社会とつながり、もっと生きることを楽しみ、豊かに、彩り溢れる瞬間を感じる未来の創造を目指している。
「最上のものを一人ひとりにあったお手入れとともに直接お手渡ししたい」という創業の思いを大切にし、お客さまの考える美しさに寄り添う事業を展開する同社は、ホテル、旅館、スパリゾートなど上質な空間をより快適に過ごすためのアメニティ商品の展開も行っている。
ポーラ五反田本社
2024年11月発売予定のホリデーコレクション「B.A プレシャスギフトコレクション L/F」
まなびのポイント1:ポーラ幸せ研究所の取り組み
ビジョン実現に向けた取り組みの1つが、ポーラ幸せ研究所である。ポーラ幸せ研究所では、社員やビジネスパートナー、生活者の幸福度の意識調査や、ポーラオリジナルの「幸せ」を構成する因子の特定、幸せ研究に基づくソリューション開発などを行っている。
ポーラ幸せ研究所の調査研究を生かし、一般向けワークショップやセミナーの企画運営、プロダクトやサービスパッケージの設計、接客コミュニケーションの改革などを行い、関わる人の美しく幸せな生き方、ウェルビーイング実現に向けた仕組みづくりと、社内外への発信を推進している。
及川 美紀、前野 マドカ共著『幸せなチームが結果を出す』(日経BP、2023年)
まなびのポイント2:はじまりは乳鉢のハンドクリーム~妻への愛から生まれた会社~
化学者でもあった創業者の鈴木忍氏は、妻の手荒れを見て独学でハンドクリームを作りプレゼントした。それが、同社創業の原点である。商売ではなく、妻への、1人の人間への愛から始まった。
そのDNAは現在も同社に受け継がれており、研究・開発はもちろん、手に触れるデザインまでを全て自分たちで行う。そして、一人一人のお客さまに寄り添いながら販売していく。この姿勢は、これまでも、これからも決して変わらない原点である。また、鈴木氏の「美しさを販売し、商品を奉仕せよ」は、今も同社で大事にしている言葉である。
まなびのポイント3:つながりで溢れる社会をつくる
研究会の視察先であるポーラ青山ビルディングは、2024年3月竣工。最新鋭のオフィス環境に加え、スタートアップ企業を支援するインキュベーションスペースや多目的ホール、子育て施設や文化研究拠点があり、アート・文化・人・地域がつながる複合型オフィスになっている。
芸術や文化との接点を創出するとともに、地域社会およびコミュニティ形成の活性を促し、つながりで溢れる社会の中心になりつつある。
視察の様子