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研究リポート
住まいと暮らしビジネス成長戦略研究会
人口減・高齢化・住宅への価値観の変化など「住まいと暮らし」領域を取り巻く環境は著しく変化しています。強みを明確にし勝ち続けるためのヒントを事例企業より学んで頂きます。
研究リポート 2024.10.21

「くらしまるごと」を支えるヤマダホームズの成長戦略 ヤマダホームズ

【第1回の趣旨】
タナベコンサルティングの住まいと暮らしビジネス成長戦略研究会(第11回)は、「事業領域拡充×事業サービス化の視点で挑むハイブリッド経営」をコンセプトに掲げ、全国の各エリアで成長・成功している「住まいと暮らしドメイン」の優良企業を視察訪問している。

第1回はゲスト講師にヤマダホームズを迎え、その事業戦略について研究を行った。研究会参加者は群馬県前橋市においてヤマダホームズのスマートハウスを視察し、ヤマダホームズの代表取締役兼社長執行役員・清村浩一氏の講話を傾聴。「家電」というドメインから「暮らし」というドメインへビジネスモデルを転換した変遷や、グループシナジーの発揮による事業領域の拡大など、ドメインを再定義して成長し続ける同社の戦略を知り、学びを深めた。

開催日時:2024年9月18日(群馬開催)

 

株式会社ヤマダホームズ
代表取締役 兼 社長執行役員 清村 浩一 氏

 

 

 

はじめに

 

ヤマダホームズは、ヤマダホールディングスグループの事業領域の1つである「住宅セグメント」の中核をなす総合ハウスメーカーである。同社は、グループが掲げるコンセプト「くらしをシアワセにする、ぜんぶ。」のもと、住まいづくりを中心に、顧客の豊かな暮らしの実現をサポートしている。

 

1951年設立で70年以上の歴史を持つ同社は、デザイン力と信頼、コストパフォーマンスを融合し、高級注文住宅から普及帯の住まい、リフォーム、不動産仲介まで幅広く対応する会社に成長。生活の基盤となる住まいに寄り添うサービスの提供で、暮らしの価値の向上とサステナブルな社会づくりに貢献している。

 


出所:ヤマダホームズ講演資料


 

まなびのポイント1:ヤマダホールディングスの「くらしまるごと」戦略

 

2009年から2011年にかけて、省エネ家電を推奨するエコポイント制度が実施され、家電ブームと地デジへの転換期が訪れた。この時期、ヤマダデンキ(当時)は最大の売り上げを記録し、家電の年間需要は例年の8兆円から15兆円規模にまで拡大した。しかし、翌年には需要のピークを超え、市場規模は6兆円に縮小した。

 

この厳しい環境下で、創業者(現・代表取締役会長兼社長CEO)の山田昇氏は、従業員を守るため、主事業である電気と「衣食住」の中で親和性のある「住」に注目し、新たに住宅事業への展開を進めた。シンボル的なブランドを構築し、売るものを限定し、効率を追求して新事業を拡大した。その後、「デンキセグメント」を中心に「住」に親和性のある事業領域でM&Aを繰り返し、「住建・金融・環境・その他」とセグメントを拡大した。

 

これにより「くらしまるごと」戦略を推進し、人々の暮らしを支える体制を整備している。

 

 


ヤマダホームズの前橋吉岡展示場(群馬県)のスマートハウス

 

 

 

まなびのポイント2:くらしまるごとを実現するグループシナジーの発揮

 

ヤマダホールディングスは、2011年にハウスメーカーであったエス・バイ・エルと資本・業務提携し、家電オンリーから新領域への挑戦を始めた。2018年には同社を完全子会社化し、同社を含む4社を合併してヤマダホームズを設立。他にも総合住宅設備メーカーのハウステックや、「Z空調」でブランド認知度の高い住宅メーカーのヒノキヤグループなどをグループに加え、2022年には大塚家具(IDC OTSUKA)をM&Aした。

 

これにより、住宅のハード(建物)だけでなく、住宅設備、家電、家具、カーテン・インテリアに至るまで、消費者の望む暮らしを「まるごと」提案・実現することが可能となった。

 

 

 

まなびのポイント3:ヤマダホールディングスが描くスマートシティ構想

 

ヤマダホームズが年間500棟から1000棟の販売を目指すのは、「ヤマダスマートシティ構想」を実現するためである。住宅で発電した電気を、電気が足りない家庭に直接供給できるVPP(バーチャル・パワー・プラント)社会は目前に迫っている。

 

ヤマダホールディングスグループは、自社が手掛ける住宅が日中に蓄えた電力を、遠く離れた街とも供給し合える仮想電力会社の役割を担うことを目指している。

 

現在は、スマートハウス1000棟分のネットワークで小水力発電所1基分を補うことができるようになっている。ヤマダホールディングスグループのスマートハウスが生み出した余剰電力を足りない家庭に回すことで、再生可能エネルギーを循環させるまちづくりを目指している。

 


出所:ヤマダホームズ講演資料