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研究リポート

住まいと暮らしビジネス成長戦略研究会

人口減・高齢化・住宅への価値観の変化など「住まいと暮らし」領域を取り巻く環境は著しく変化しています。強みを明確にし勝ち続けるためのヒントを事例企業より学んで頂きます。
研究リポート 2024.08.02

セレンディクスが導く未来社会

セレンディクス

【第4回の趣旨】
日本国内において、人口減少、新築着工棟数の減少など、住宅・リフォーム・建設・不動産をはじめとする「住まいと暮らし業界」にとって厳しい未来が予測される。
だが、当業界は人間の生き方に関わる領域であり、なくなることはない。当研究会では、自社の魅力を最大化し、本質的な価値を提供することで「顧客に選ばれる企業」であり続けるためのヒントを学ぶ。
第4回は、最先端の技術で未来を切り開くセレンディクスより、新たな住まいと暮らしについて学びを得た。

開催日時:2024年3月18日(名古屋開催)

 

 

セレンディクス株式会社
COO 飯田 国大 氏

 

 

はじめに

2018年8月設立のセレンディクス。「世界最先端の家で人類を豊かにする」を理念に掲げ、3Dプリンターで未来の住宅建築を実現するための事業を展開している。2022年3月には、日本初の3Dプリンター住宅をわずか23時間12分で完成させた。この取り組みがきっかけに、世界26カ国59媒体で取り上げられ同社の名が広がった。

 

同社は、「世界最先端の家を創る」をビジョンに掲げている。「車を買い替えるように家を買い替える」という斬新な発想で、将来的には100㎡、300万円の住宅販売を目指している。今回の視察では、3Dプリンターで建設された実際の建物を視察後、飯田氏より3Dプリンター住宅を購入する視点や海外の競合について講演いただき、最先端の家づくりについて学んだ。

 


2018年8月設立のセレンディクスは、ビジョンに「世界最先端の家を創る」を掲げる

 


 

まなびのポイント 1:設計図を無償で提供

2024年2月に東京で開催された日・ウクライナ経済振興推進会議において、両国の政府および企業間でさまざまな協定や覚書が締結された。

 

同社は、日・ウクライナ経済復興推進会議で決まった支援に参画しており、3Dプリンターを動かすのに必要な設計図を無償で提供する。日本の先端技術とウクライナの再建ニーズを結び付ける役割を果たしたのだ。今後、同社の技術やサービスがウクライナの再建プロジェクトにどのように生かされるか期待されている。

 

 

 

 

 

まなびのポイント 2:新たな働き方の提案

住宅の価格が下がったとしても、土地の高騰により住宅を保有できないという課題がある住宅業界において、同社は、顧客に対して政令指定都市から約90分の土地を推奨している。

 

今後は、実測距離ではなく時間距離が重要である。1都3県の平均通勤時間が58分に対して、静岡県沼津市から東京駅まで51分。大切なのは距離ではなく、時間なのだ。飯田氏は、福岡県から大分県の山間集落へ移住した。仕事のデジタル化を推進し、在宅勤務で最先端技術の仕事を行っている。

 

2025年にはミレニアル世代が労働人口の主流となる。生まれた時からデジタルが当たり前にある人々が、「会社に通勤する」昭和の生き方を破壊する時代が目の前に迫っている。

 

 


ミレニアル世代以降の層とミレニアム世代より年配層の推移

 

 

 

まなびのポイント 3:3Dプリンター住宅 世界の競合

世界の3Dプリンター住宅の市場は、2027年に5兆6000億円規模になると予測されており、世界中の住宅や建設分野のカンファレンスでは、3Dプリンターが話題の中心である。世界で初めて3Dプリンターを発明したのは日本人であるが、特許を出願していなかった。日本は特許の出願件数が他国と比較して低い点が大きな課題である。他国は、特許出願に積極的であり新たな技術を多く開発している。

 

米国においても、テキサス州に拠点を置く3Dプリント住宅メーカーのICONなどが3Dプリント住宅の販売を開始している。価格については、一般的な住宅と相違ない水準となっている。自動車業界は40年前、ロボットを活用した生産プロセスの革新により製品価格の下落が始まった。飯田氏は、「3D プリンター住宅が住宅産業の完全なロボット化の始まりである」と提言する。

 


世界の3Dプリンター住宅