ソニーグループが独自のイノベーション創出と価値創造の基盤に位置付けるのが、新しいことの飽くなき挑戦心と多様性を重んじる価値観だ。多様な一人一人の「異見」を生かす組織へ、文化と制度の両面でダイバーシティを重視し、女性経営人材の育成・登用をはじめとする女性活躍推進も時代や世情の一歩先を進んでいる。
異なる個性を受け入れる企業文化を醸成
ゲーム&ネットワークサービス、音楽、映画、エンタテインメント・テクノロジー&サービス、イメージング&センシング・ソリューションの5つの主要事業セグメントでグローバルに事業展開するソニーグループ。2026年3月期の連結売上高は12兆4796億円、営業利益は1兆4475億円と増収増益を達成した。
同社は、人材と事業の多様性に磨きをかけながら、イノベーション創出を軸とした成長戦略を推進している。その経営哲学の起点となるのが、人材理念「Special You, Diverse Sony」だ。異なる個性を持つ一人一人の成長と挑戦を支援し、力を発揮できる機会・職場・組織風土をつくることで、社員とソニーがともに成長するというメッセージである。
この人材理念に基づく人事戦略のフレームワークは、「個を求む」「個を伸ばす」「個を活かす」の三つで構成される。
さらに、一人一人の異なる意見を意味する「異見」を生かす組織であり続けることが重要と考え、異見を生かす組織であるために必要な要素を、「属性の多様性」「経験の多様性」「異見を活かすリーダーシップ・企業文化」の三つに整理。異なるバックグラウンドを持つ多様な考え方を受け入れる企業文化を醸成してきた。
女性活躍推進の歩み
ソニーグループの女性活躍推進の歴史は長い。1985年の「男女雇用機会均等法」の施行に先立ち、1973年には同社初の女性課長が誕生、1979年には初の女性海外赴任を実現、2003年には女性取締役・執行役が誕生した。取り組み開始以来、採用から定着の全てのフェーズで女性活躍を推進する取り組みが積み重ねられてきた。
これまでの取り組みが評価され、2016年4月に厚生労働省の「えるぼし認定」(採用・継続就業・労働時間などの働き方・管理職比率・多様なキャリアコースの5評価項目全てを満たす女性活躍推進優良企業への最上位認定)を取得。2024年1月には、一般事業主行動計画に定めた目標を達成し、女性活躍推進に関する取り組みが特に優良な企業に与えられる「プラチナえるぼし認定」を取得した。また、企業の成長を見据えた女性の活躍推進を応援する日本最大規模の女性アワード「Forbes JAPAN WOMEN AWARD 2025」(Forbes JAPAN主催)において、企業ランキング1位を獲得している。
ソニーグループの2024年度末時点の女性社員比率は34.2%、女性管理職比率(管理職に占める女性労働者の割合)は31.6%である。同社は、役員(取締役、執行役を含む上級役員およびその他の役員)に占める女性比率および、日本以外の国・地域の出身者比率を2030年までにそれぞれ30%以上にすることを目指しているが、同年度末時点での比率は、それぞれ18.8%、28.1%と大きな開きがある。次世代の女性経営人材を組織的に育てる仕組みの整備が、この差を埋める鍵となる。
求めるのは、それぞれのリーダーシップスタイル
ソニーグループが整備してきた人材育成に関する施策は、女性経営人材の育成にもつながっている。
グループ横断ネットワーキングイベント「Sony Women Leaders Forum(SWLF)」は、女性経営人材育成の中核的な取り組みだ。2023年9月、国内ソニーグループの第一線で活躍する部長層以上の女性を対象に第1回を開催。翌年の2024年3月には、「国際女性デー」(3月8日)に合わせて、担当部長・課長相当職の女性にまで対象を広げ、キャリアやリーダーシップの共有と事業横断のつながりを創出した。2025年10月には、「Diversity Month」(多様性・公平性・包括性への理解を深めるために設けられた啓発期間)に合わせて開催し、ソニーグループ21社から対象者が参加。「EQ(Emotional Quotient:感情的知性)リーダーシップと対話の重要性」をテーマにグループワークを実施し、男女の統括部長が参加するなど活発な意見交換が行われた。
同社のグループ企業であるソニー・ミュージックパブリッシングでは、高い潜在能力やパフォーマンスを発揮する女性の育成に投資し、公平な機会を創出する「Women's Leadership Program」を米国を中心にグローバルで実施している。女性管理職とのつながりやリーダーシップの実践や戦略など、学びの場の提供を通じて女性の能力開発を行っている。
女性経営人材の育成につながる最も体系的な仕組みが、グループ経営をリードする人材の育成を目的として2000年に設立された「ソニーユニバーシティ(Sony University)」だ。「経営ビジョンと戦略を描きリードする人材の創出」「ソニースピリットの継承」「グループ経営を行うための人的ネットワークの形成」という3つのミッションを掲げ、同社の将来の経営幹部候補およびビジネスをけん引するグローバルリーダーを育成する場として継続的に教育プログラムを実施している。
グローバル各社から性別・地域・事業を問わず選抜され、累計参加者は1700名を超える。修了式では、代表執行役社長CEOの十時裕樹氏をはじめとする役員との対話セッションが設けられ、経営トップが直接経営人材の育成に関わる構造になっている。2011年に5%程度にとどまっていた女性の参加者比率は、2021年には28%まで増加するなど、女性経営人材の育成にもつながっている。
人材育成を支える土台として、妊娠・出産・育児や介護、不妊治療などさまざまなライフイベントに対応する両立支援制度「Symphony Plan(シンフォニー・プラン)」を整備し、女性がキャリアを途切れさせず経営人材への道を歩み続けられる環境を整えている。
これらの取り組みが実を結んだ象徴的な成果が、2025年4月1日のCFO(最高財務責任者)就任だ。ソニー・インタラクティブエンタテインメントで代表取締役副社長を務めてきた陶琳(タオ・リン)氏が、ソニーグループ創立以来初の女性CFOに就任した。陶氏の登用はグループ内外に大きなインパクトを与えた。
一方、同社は前述の通り、役員に占める女性比率および、日本以外の国・地域の出身者比率を2030年までにそれぞれ30%以上にすることを目指しているが、道のりはまだ険しい。
同社は2021年に経団連「2030年30%へのチャレンジ」※に署名し、2030年に向けた女性活躍推進に関する行動計画も公表している。同社にとって女性CFOの誕生はあくまで通過点であり、SWLFやソニーユニバーシティを通じた継続的な人材育成が、経営層の多様性という次の扉を開く鍵となる。
「人のやらないことをやる」。創業時のソニースピリットは、「多角的な事業×多様な人材」であらゆる境界を超越していく競争力の源泉となっている。同社が人事制度で大事にしていることがある。それは、「使われない制度はつくらない」だ。また、社員の声を取り入れて、絶えず制度そのものを成長させることも大切にしている。女性経営人材の育成もその例外ではなく、アップデートし続けている。
※ 経団連が掲げる「2030年までに役員に占める女性比率を30%以上にする」という数値目標
ソニーグループ(株)
- 所在地 : 東京都港区港南1-7-1
- 設立 : 1946年
- 代表者 : 代表執行役 社長 CEO 十時 裕樹
- 売上高 : 12兆4796億円(連結、2026年3月期)
- 従業員数 : 9万4900名(連結、2026年3月現在)