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経営メソッド
女性経営人材

女性活躍推進が広がる一方、日本企業で女性役員・社長の登用が十分に進んでいるとは言いがたい。本特集では、「女性社員が活躍する会社」から一歩踏み込み、女性を役員・社長へ育成し、登用する会社は何が違うのかを探る。女性のトップ登用を、DE&Iや理念の実践にとどまらないテーマとして捉え直し、経営人材育成、事業成長、次世代経営体制づくりに直結する経営課題として考える。

経営メソッド 2026.07.30

多様な女性経営者と創る均質化しない組織 コラボラボ

3400名を超える女性経営者と企業のマッチングに取り組むコラボラボ。常識にとらわれない外部の視点で組織にしなやかさをもたらし、多様な知性を組織に引き込む「実験」を20年にわたって続けてきた。人材獲得競争が激化する今、その実験から学べることは多い。


全国の女性経営者や女性の個人事業主を対象とした、3000名を超える日本最大級のデータベースサイト。現役女性経営者に特化し、会員情報が集まる「女性社長一覧」のほか、編集記事やイベント・セミナー開催を通じ、日本全国の女性経営者の情報を発信している

全国の女性経営者や女性の個人事業主を対象とした、3000名を超える日本最大級のデータベースサイト。現役女性経営者に特化し、会員情報が集まる「女性社長一覧」のほか、編集記事やイベント・セミナー開催を通じ、日本全国の女性経営者の情報を発信している



企業の「外」にいる女性経営者を発掘

文部科学省によると、大学進学者数が現在の約64万人から2040年には40万人台まで減少し、企業間の人材の奪い合いはますます激しくなることが予想される。言うまでもなく、大学進学者の約半数は「女性」である。そして、出産・育児や家族の介護・看護を理由に離職している人の大半も「女性」だ。


しかし、その多くは離職したからといって「働いていない」わけではない。時間的に厳しい制約がある中、家庭や地域でマルチタスクをこなし、艱難辛苦かんなんしんくを乗り越えながら大小さまざまなプロジェクトを動かして人間力を磨いている女性たちが、至るところで日本の社会を支えている。中には、無理なく働き続けられる会社を自分の手でつくり、経営者として、自分らしいライフスタイルを実現している女性も無数にいる。


2026年に創立20周年を迎えたコラボラボは、まさにそのような女性経営者と企業・自治体をつなぎ、常識にとらわれないビジネスマッチングを実現している日本最大級のプラットフォーム企業だ。メディアでは、「ユニコーン」「スタートアップ」と呼ばれるような、億単位のビジネスを動かす華々しい経営者ばかりにスポットライトが当てられるが、数万円から数百万円といったスモールビジネスを地道に続けている女性経営者や個人事業主も少なくない。コラボラボはその豊かな人生経験に光を当て、交流・相談の場や、法人企業と取引をするための環境整備、認知拡大の機会などを提供し、双方にとって実りあるビジネスチャンスを創出してきた。


同社が2007年から運営している「女性社長.net」は、全国で活躍する約3400名の女性経営者・個人事業主が登録する日本最大級のデータベースサイトだ。同社はこの女性社長.netをプラットフォームとして、地域密着型の中小・中堅企業からグローバルに展開する大手企業まで、規模を問わずきめ細やかなBtoBマッチングに取り組み、組織やビジネスにおける多様性の向上に大きく貢献している。また、リーマン・ショック直後の2009年から、300名の女性経営者・個人事業主が一堂に集うビッグイベント「J300」を毎年開催。各地の信頼できるパートナーとタッグを組んで、知る人ぞ知る女性経営者の魅力を広く発信し続けている。



先入観を覆す堅実で小回りの利く経営

新卒で就職した企業を28歳で退職し、フリーランス経験を経て、30歳でコラボラボを起業した代表取締役の横田響子氏は、これまでの20年を次のように振り返る。


「私自身、家族の病気がきっかけで、フルタイムでバリバリ働いていた会社員生活に終止符を打ち、起業してフレキシブルに働く道を選びました。幸い、当時勤めていた会社は入社1年目から自分の頭でキャリアを考えるよう若手に促し、独立起業を奨励する風土があったのです。ただ、当時は明確なビジネスモデルもなく、ひたすら女性経営者にヒアリングを重ねるところからのスタートでした」(横田氏)


横田氏は、同じ「女性経営者」でもリーダーシップスタイルやビジネスとの向き合い方は十人十色であり、想像とは全く違ったと強調する。


「女性経営者に対して『強そう』『頑固そう』という先入観を抱いている方は少なくないかもしれませんが、実際にお会いしてみると、皆さん、ごく普通の人なのです。むしろ、大風呂敷を広げ過ぎず、堅実なビジネスをしていて、小回りの利く女性が非常に多い印象ですね。ヒト・モノ・カネ全てないところから小さく始めて事業を育ててきた方や、不況の波が押し寄せても軽やかに方向転換して生き延びてきた方の事例は、枚挙にいとまがありません」(横田氏)


横田氏が特に注目するのは、常識や体裁にとらわれず、自分の置かれた状況やライフイベントに応じて仕事量を柔軟にコントロールしている女性経営者の姿だ。その柔軟性にこそ、これからの企業経営にとって最も重要な示唆が含まれていると指摘する。



女性経営者をサポートし活躍の場を広げる

コラボラボが手掛ける事業のうち、全体の約6割を占めるのがビジネスプロデュース(協業創出)だ。女性社長.netに登録している女性経営者は20歳代から50歳代まで幅広く、経験や専門性は多岐にわたる。そのネットワークをフルに生かして、女性経営者が陰に陽に支え合うプロジェクトを育ててきた。


例えば、2016年にFacebook Japanとのコラボレーションでローンチした「#起業女子」は、女性起業家や起業を目指す女性に向けて、SNSを活用したマーケティングセミナーを全国各地で開催するプロジェクトだ。また、2020年からエヌエヌ生命保険と共同運営している情報サイト「女性社長のココトモひろば」は、夫や父など先代の他界によって突然事業を承継することになった女性経営者が不安や悩みを共有できる支え合いの場で、安心のよりどころとなっている。


また、2018年からは、女性の社外取締役を必要としている企業に向けて人材紹介サービスを展開。単なる「数合わせ」にとどまらず、経営経験のある人材を紹介している。


「女性経営者の中には、経営経験やリーダーシップを持つ人、実務に長けた専門家もいます。本気で多様性を高めていきたいのであれば、タイプの異なる女性の役員を2人以上登用することをお勧めします。マジョリティーとは異なる『亜流』が35%以上を占めると、既存の文化に飲み込まれることなく発言しやすくなる傾向にあるからです」(横田氏)


内閣府男女共同参画局によると、上場企業における女性役員比率は14.0%(2025年7月末時点)で、10年前の約5倍に増えている。また、帝国データバンクの調査では、全国の企業における女性役員比率の平均が13.8%と過去最高を更新した(2025年)。女性活躍・男女共同参画の重点方針の打ち出し(2015年)や取締役会における多様性の確保を重視したコーポレートガバナンス・コードの改訂(2018年)など、国の主導で推進されてきた経緯もあるが、この潮流が高まっていくことに疑いの余地はないだろう。


2026年4月からは女性管理職比率の公表義務が101人以上の企業に拡大されたこともあり、中堅・中小企業においても女性役員を育成・登用する動きは加速するとみられる。女性役員の登用を「義務」ではなく「自社の成長に不可欠な一手」として再定義できるかどうかが、まさに今、問われている。


しかし、いかに経験豊富な女性であっても、男性が圧倒的多数の取締役会で意見を差し込むのは容易ではない。


「社外取締役は『外部の人間』ですから、ただ正論を伝えるだけでは、目先の事案が優先され、内部の役員に提案を流されてしまうことが少なくありません。そこをどう乗り越えるのかが重要です」(横田氏)


そこで、コラボラボでは、初めて取締役や社外取締役になった人を対象に少人数制の研修サービスを提供している(年10〜12回)。参加者は、秘密保持契約を結んだ上で、現在進行形で直面しているリアルな悩みを持ち寄り、議論を重ねていくのだという。


「3名のプロフェッショナルなファシリテーターの下、参加者たちが互いの課題に対して、社内・社外、異なる立場の方との対話を重ねていきます」(横田氏)


女性社長300人が集まる女性起業家の祭典「J300」。内閣府や大学とも連携して2014〜2021年まで開催し、毎年多くの「コラボ」を実現した

女性社長300人が集まる女性起業家の祭典「J300」。内閣府や大学とも連携して2014〜2021年まで開催し、毎年多くの「コラボ」を実現した



人材を奪い合う時代を生き抜くには

副業の解禁やAIの急速な普及により、人々の働き方は根本から変わりつつある。いつも同じような顔ぶれで、自分たちにしか通じない共通言語でコミュニケーションをしていると、どうしても考えが狭まり、組織が均質化していってしまうと横田氏は警鐘を鳴らす。


「経営層が古い考え方だと、良い人材が組織を離れる要因になります。また、人は関係性の弱い人(ウィークタイズ)から示唆を得て大きな転換を遂げると言います。違う言語・文化・価値観・経験を持つ人から情報をインプットすることが良い製品・サービスを作ることにもつながるはず。多様性をいかに高めていけるかが経営者の腕の見せどころになっていくでしょう。まずは、若手の女性に小さなプロジェクトを任せることから始めてみてほしいと思っています」(横田氏)


コラボラボでは、スキルセットをパッケージ化するなど新しい試みもしながら、女性経営者と企業との新たなコラボレーションを創出していく方針だ。


(株)コラボラボ

  • 所在地 : 東京都千代田区神田錦町3-2 千代田印刷会館5F
  • 設立 : 2006年
  • 代表者 : 代表取締役 横田 響子
PROFILE
著者画像
横田 響子 氏
Kyoko Yokota

コラボラボ 代表取締役

お茶の水女子大学卒業後、1999年リクルート入社。営業・新規事業および事業企画を経験後、2006年コラボラボ設立。女性社長.net、J300など女性社長を応援する企画に注力。約12年、お茶の水女子大学にて女子学生のアントレプレナーシップ教育を担当(2017-23年 客員准教授)。Forbes Japan「未来を創る日本の女性!フォーブスが選ぶ10人」等選出。総務省自治体戦略2040構想研究会、第32・33・34次地方制度調査会、財務省財政制度等審議会など男女共同参画、行財政改革・地方自治分野まで多数委員を歴任。グッドデザイン賞審査員。他、上場企業の社外取締役を務める。