グループ経営における経営者人材育成の重要性
グループ経営は目的でなく、戦略を推進する手段の1つである。グループ経営を行う目的は、事業ポートフォリオ改革を通じた「事業力の強化」と、持続的に経営者人材を輩出する「推進エンジン」としての役割を本社(ホールディングス)が担い、グループ全体の成長戦略を実現することにある。
グループ経営成功のKFS(重要成功要因)は、「エンパワーメント(権限移譲)」だ。各事業・グループ会社の経営者が主体的に意思決定を行うことで、経営スピードを加速させることが不可欠である。そのためには、大胆な権限移譲が求められる。
しかし、「明日から君が経営者だ」と言われて、即座に経営を担える人材はそう多くない。それは、彼・彼女らに経営視点で判断し、行動を起こした「経験」そのものが不足しているからにほかならない。
「経営者人材」と「経営視点を持った人材」の違い
各事業会社をけん引する経営者人材の輩出に加え、グループ全体最適の視点で経営を推進できる人材の育成が不可欠であることを認識いただきたい。これこそが、グループ経営推進の要となる「グループ経営企画人材」である。
グループ経営と類似する言葉に「分社経営」がある。これは、各社最適の集合体がグループと呼ばれている状態にすぎない。対して、タナベコンサルティンググループが提唱するグループ経営とは、グループ全体最適で戦略施策を検討・推進できている状態を指す。その推進役こそが、グループ経営視点を持った人材なのである。
上場・中堅といった企業規模を問わず、こうした視点を持つ人材が不足しているケースは多い。次の3つに該当する企業は、グループ全体での人材育成体系を再設計することが急務である。
● 創業者や現経営者のセンスに依存したトップダウン経営を実践してきた
● M&Aでグループインした企業の経営者・現場の力に依存し、中核企業との連携やシナジーが発揮できていない
● 階層別研修カリキュラムはあるものの、グループ全体視点での研修カリキュラムが存在しない
単なる経営者育成にとどまらず、グループ経営の推進を前提とした「グループ視点を持った人材育成」へとアップデートすることを、ぜひご検討いただきたい。
グループ経営者人材育成のアップデート
タナベコンサルティンググループは、数多くのグループ企業に対し、グループ経営者人材育成の支援(以降、本カリキュラム)を行ってきた。その本質は、単なるスキル習得ではない。「グループ全体最適」の視点・視座を持ち、戦略立案から判断・推進までを担える人材を輩出し、グループ経営の推進力そのものを高めることにある。
多くの企業が、従来の「経営者育成研修」の延長線上でグループ人材育成を進めようとする。しかし、これでは単一事業の経営者を育てるにとどまり、「グループ視点」が希薄になりがちだ。結果として、個社最適・事業最適を追求する「分社経営」を助長し、日本企業特有の縦割りセクショナリズムを強化してしまう皮肉な結果を招くケースが多い。
そのため、本カリキュラムは単なる研修ではなく、グループ全体のサクセッションプラン(後継者育成計画)の核心として位置付けるべきである(【図表】)。「グループ経営者人材への登竜門」としてインナーブランディングを行い、その意義と目的を社内へ強く発信することが重要だ。
【図表】グループ経営者人材のサクセッションストーリー
出所 : タナベコンサルティング戦略総合研究所作成
本カリキュラムの受講者は、グループ経営者人材と、各社の経営者人材としてのキャリアステップのいずれかを歩むことができる位置付けとしており、これは前述の登竜門としての位置付けであるという側面と、グループ経営者人材の適任者を引き上げていくための仕組みである。
タナベコンサルティンググループは、「経営者には大きく『事業センス』と『経営センス』の両方を身に付けるべきである」と提唱している。
事業センスとは、儲かる事業・商品は何かを見抜き、事業自体を創造、推進できる、いわゆる事業を伸ばすための感覚を指す。一方、経営センスとは、販売・生産(仕入れ)・開発・財務・管理のバランスを見極め、総合的に運営するマネジメントの感覚を指す。
経営センスは、部下育成や業績マネジメント、生産現場での工程管理など、現場で体現しやすい傾向にあるため実行力として定着しやすい。対して事業センスは、マーケットを捉え、戦略を立案するなどの現場で体現する機会が少ないため、実行力として身に付きづらいという側面がある。
本カリキュラムは、グループ全体のサクセッションプランの一部であり、現場での実行力を主眼に置かずとも、グループ経営視点を持ったメンバーを選定し、引き上げていくことが目的である。逆に、現場での実行推進力が高まったメンバーは、グループ各社の事業経営者としてのキャリアステップを歩むことで、グループ全体の事業力強化の役割を担うことになる。
繰り返すが、経営者は事業センスと経営センスの2つを身に付けるべきである。加えて、グループ経営においては、グループビジョンを実現する上での自社ポジションを明確に捉え、事業会社の成長戦略、経営資源をマネジメントし、適時・的確な意思決定を行う「決断力」を持ったメンバーを育成することが必要となる。グループ経営者が身に付ける能力として、大きく次の4つが必要となる。
❶ 自発性の姿勢
強い意志力・行動力で自ら難局に向かって挑戦する姿勢を指す。
❷ 問題を本質から捉え、理解する能力
全体から部分を俯瞰し、全てを事実に即して理解することを指す。推測や抽象論ではなく、実証済みの原理原則に基づいて判断する能力である。
❸ 俯瞰力とバランス感覚
組織全体を眺め、ボトルネック工程を改善し、ビジョン実現に向けて俯瞰的な判断・推進を行うことを指す。
❹ 戦略実行力
小さな勝ちパターン(成功体験)の積み重ねで、戦略を成功へと導く実行力を指す。
これら4つを体得させるためには、単なる座学研修にとどめてはならない。自社の現状を多面的な視点で捉え、改善策を立案・実行するというプロセスや、研修で得た学びを現場で体現するという現場実践主義を取り入れていただきたい。実践を通じて学びの理解を深めることで、経営者としての素養を高める研修を実施することが求められる。
タナベコンサルティング
ホールディングス&グループ経営
ゼネラルパートナー
金融機関の個人・法人営業にて、多くの事業承継・ホールディング化案件に従事後、タナベコンサルティングに入社。「クライアントと共に成長できる会社を1社でも多くつくる」を信条に、グループ経営・事業承継・資本政策・マネジメント改善を中心にファイナンス分野のスペシャリストとして活躍中。顧客に向き合い、課題解決のための熱意あるコンサルティング展開で、業種を問わず幅広いクライアントから高い信頼を得ている。