担い手不足の解消に向け協力会社を支援
民間調査会社の帝国データバンクによると、2024年における建設業の倒産件数(負債1000万円以上、法的整理)は過去10年で最多となる1890件に上った。特に、中小零細事業者の倒産が増加しており、従業員数「10人未満」が1742件と最も多く、次いで「10人以上50人未満」が143件と続く。
倒産が増加する背景には、建設業界を取り巻く厳しい経営環境がある。倒産理由を見ると、資材価格やエネルギー価格の高止まりを主因とする「物価高倒産」が250件と全体の13.2%を占めたほか、従業員の転退職などによって事業運営が困難となる「人手不足倒産」も99件(全体の5.2%)に上った。
ただ、資材・エネルギー価格の高止まりや技能者の高齢化に伴う人材不足、後継者不在が深刻化する中、より大きな視点で課題の解決に向けた動きも始まっている。大手ゼネコンを中心に建設事業者の人材採用や育成、事業承継を支援する動きが広がりを見せているのだ。
その1つが、大林組が同社の協力会社組織である大林組林友会連合会(以降、林友会)とともに2023年4月に開設した「事業と技能のあとつぎ支援センター」(以降、あとつぎ支援センター)だ。林友会は、大林組の創業者である大林芳五郎氏によって1906年に創設された120年の歴史を持つ組織で、現在は全国約1200の協力会社が所属している。
実際、林友会加盟企業を対象に実施したアンケート調査においても、「後継者の不在」や「従業員、技能者の不足や育成」を課題に挙げる声が多く、事業継続の困難さがうかがえる。協力会社の課題解決や支援を目的とするあとつぎ支援センターでは、これまで会員企業が抱えるさまざまな課題と向き合ってきた。
サポートの流れは【図表】の通りである。林友会に加盟する企業を対象に相談窓口を開設しており、電話または専用メールアドレスを通してさまざまな相談を受け付けている。
【図表】あとつぎ支援センターの相談対応体制
※ 相談企業名は非開示
出所 : 大林組プレスリリースよりタナベコンサルティング戦略総合研究所作成
中でも、経営者や社員、若手技能者の確保・育成は重要な課題と位置付けられている。人材の採用や育成、定着に関する相談をはじめ、M&Aや社内後継者育成も含めた事業承継に関する悩み、さらに、ICTやDXを活用した生産性の向上といった課題に対して、大林組が提携する採用や教育、DXといった各分野の専門コンサルタントと連携しながら、個別に取り組みを進めていく。
また、そのほかの課題についても、大林組の本社管理部門とも連携を図って対応するなど、事業継続に向けた幅広い支援体制を整えている。
加えて、注力するのが協力会社に向けた教育機会の提供だ。動画などの教育コンテンツ(eラーニング)を定期的に配信するほか、経営者や中堅社員、若手社員といった階層別の集合研修「後継経営者研修」「若手社員育成研修」「現場コミュニケーション技術研修」「現場リーダー研修」などの実施を通して、幅広い教育の機会を提供している。
DX、M&Aを通じて協力会社の事業継続へ
大林組は林友会を重要なステークホルダーと位置付け、これまでも二人三脚で事業に当たってきた。大林組の国内調達額に占める林友会加盟会社からの調達額割合は全体の51%と過半数を占める。林友会はサプライチェーンを共に支え、育てていく存在であり、定期的なヒアリングの実施やコミュニケーションの促進を通して信頼関係の構築に努めると同時に、安全衛生管理や次世代の技能労働者の確保や育成、安全・品質に関する技術の研鑽などに共に取り組んできた。
例えば、2011年に導入された「大林組認定基幹職長制度(スーパー職長制度)」は大林組と林友会が共に注力している取り組みの1つだ。同制度は、建設技能者を束ねる職長の中から、特に優秀な職長を認定した上で一定額の手当てを上積みして支給するもの。対象は建築22業種・土木6業種まで広がっており、「大林組認定優良クレーンオペレーター制度(スーパーオペレーター制度)」と合わせた2024年度までの累計認定者数は4888名に上っている。
さらに、2014年には協力会社の技能労働者の育成と次世代への技能伝承を目的に「大林組林友会教育訓練校」を開校。とび工、鉄筋工、型枠工の3つのコースが設置されており、受講者は約1カ月半かけて施工や安全管理、CADをはじめ、建設現場で必要となる知識・技能を習得する。また、一定の認定を受けた修了生が大林組の建設現場に従事した場合、修了生や協力会社には奨励金や報奨金を付与するなど、キャリア形成支援と賃金向上にもつながる仕組みだ。
周知の通り、建設業界における技能者の高齢化や担い手不足は進行し続けている。2023年の建設業就業者数(平均)は483万人と、ピーク時(1997年の685万人)から約3割減少。さらに、1997年に464万人だった建設技能者数は2023年には307万人と3分の2まで減少するなど、人材不足や後継者不在は鮮明化しており、特に専門工事会社の事業継続や人材確保は厳しさを増している(日本建設業連合会「建設業デジタルハンドブック」)。
加えて、建設業の後継者不在率は59.3%(帝国データバンク「全国『後継者不在率』動向調査」2024年)と全産業の中で最も高い水準が続く。中小建設事業者の後継者問題や人材の確保・育成が建設業界全体の課題となる中、大林組は早くからサプライチェーン全体で若手技能職員の育成や次世代への技能伝承に取り組んできたと言えよう。
冒頭で紹介したあとつぎ支援センターのサポートには、DXによる生産性向上やM&Aによる事業承継など踏み込んだ支援も含まれている。特に中小建設事業者の事業継続に向けた大きな一歩になることを期待したい。
(株)大林組
- 所在地 : 東京都港区港南2-15-2
- 創業 : 1892年
- 代表者 : 代表取締役社長兼CEO 蓮輪 賢治
- 売上高 : 2兆3251億円(連結、2024年3月期)
- 従業員数 : 9253名(連結、2024年3月現在)