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モデル企業
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【企業事例】優れた経営戦略を実践する企業の成功ストーリーを紹介します。
モデル企業 2025.02.03

次世代幹部教育研修で若手幹部候補を育成 F&Cホールディングス


企業理念である「徹底したお客様本位の発想」を実現すべく、プレート製造工場の24時間365日稼働を可能にし、受注から平均36時間という圧倒的なスピード納品を実現。寸法・精度、仕上げの仕様に合わせて迅速に、高い技術で加工を行い、確実に納入する実績により、顧客の信頼を得ている

 

 

創業77年目を迎えるFUJIMAKI GROUP(F&Cホールディングス)は特殊鋼プレートにおいて国内シェアナンバーワンを誇るトップランナーだ。急成長を遂げる中、次世代の幹部人材を育成する新たな研修を導入。経営人材の層を厚くし、グループ売上高1000億円の達成に向けてギアを上げる。

 

一体感のある風土醸成が課題に

愛知県名古屋市に本社を置くFUJIMAKI GROUPは、特殊鋼プレートで国内トップシェアを誇るニッチトップ企業だ。

同社は、顧客の要望に応じた完全オーダーメードのカスタムプレート「FFP(FUJIMAKI FREESIZE PLATES)」の製造販売を主力としており、高品質でローコスト、受注から納品まで平均36時間という圧倒的なスピードにより顧客から高い支持を集めている。加えて、近年はFFPに二次加工を施す新事業によって業容を広げ、取引先は1万8000社以上、年間オーダー数は120万件と、特殊鋼プレートにおいて圧倒的な国内シェアナンバーワンを獲得している。

同社は現在、「Provide New Value for Manufacturing Industry」(製造業に新たな価値を提供する)を合言葉に、国内外の生産拠点の拡充と二次加工分野への戦略的投資を進めている。M&Aでグループインした7社を含め、グループ15社、57拠点で国内外に展開し、グループ売上高は2023年8月期に500億円を突破するなど急成長を続けているが、果敢に成長戦略を推進する理由の1つは人づくりにある。グループの中核を担うF&Cホールディングス代表取締役社長兼CEOの藤巻秀平氏は次のように話す。

「企業にとって人は最大の財産です。技術もサービスも経営も、全ての起点は人。その意味で人は企業のアイデンティティーそのものであると私は思いますし、人の力を最大化することこそ当社が活性化する唯一の方法だと考えています。ただ、特に中小企業においては、規模を拡大しなければ、人事が停滞して組織がよどんでしまいがちです。そうならないように会社を拡大してポジションを増やし、新しい仕事やポストにチャレンジできる環境をつくっていこうと考えています」(藤巻氏)

会社を成長させ、分社化してポストを増やすことで、若い世代もチャレンジできる環境をつくっていく。それが、挑戦する企業文化をつくり、人の成長を促し、会社を成長させていくと藤巻氏は考える。加えて、社員一人一人の能力を引き出し伸ばしていくために、同社が力を注いでいるのが社員教育だ。自主性・個性を尊重することを基本的な教育方針として掲げており、個々の成長度合いに合わせた社員教育を実施している。

 

階層別研修とテーマ別研修で人材力を向上

実は、藤巻氏が2002年に入社した当時、同社は従業員数が200名程度と少なく、制度化された社員研修は存在しなかった。

「最初は静岡県沼津市にある拠点に配属され、1日目に先輩から製品に関する資料を渡されて読み、2日目は先輩に連れられてトラックで取引先を納品して回り、3日目には担当を任されて1人で営業に出ましたが、BtoBゆえの専門用語も多く苦労しました。後輩にはそんな思いをしてほしくないという気持ちが、今の研修制度の原点にあります」(藤巻氏)

藤巻氏はまず、新入社員向けに対面式の新入社員研修を導入。そこから、社員の声や社会情勢に合わせて研修を増やした結果、現在のような体系的な社員教育制度が出来上がっていった。

現在の主な教育制度は、新卒社員向けのビジネスマナーをはじめ、製品の基礎知識や専門用語を学びながら配属への土台をつくる「新人研修」、営業職や希望者向けに動画で営業の知識アップを図る「営業教育」、中途入社1年以内の社員を対象に会社の経営理念や歴史、プレート事業に関する知識を深める「ニューカマ-研修」、将来の幹部育成を目指す「若手幹部候補研修」など、階層別やテーマ別の研修をそろえる。(【図表】)

 


出所 : F&Cホールディングスの採用サイトよりタナベコンサルティング戦略総合研究所作成

 

 

中でも、2023年に導入した若手幹部候補研修は、急成長を遂げる同社にとって重要な意味を持つ。導入に至った背景について、藤巻氏は次のように説明する。

「2000年以降、当社は全国に拠点を広げながら会社を大きくしてきました。現在、グループ全体の従業員数は1558名ですが、現役員の多くは従業員数が200名、300名規模の時に入社した人材ですから、私も含めて中小企業の気質を引きずっている部分があります。さらなる成長を見据える上で、規模に見合った幹部人材を育てる仕組みが必要でした。

また、成長に伴ってマネジャー層に登用する機会が増えていますが、これまでは客観的に適性を見極める場がありませんでした。『名選手、名監督にあらず』という言葉がありますが、成績が良いからといって必ずしもマネジメントに適しているとは限りませんし、逆もしかりです。マネジャーとしての資質や成長度を客観的に確認する場が必要であると感じていました」(藤巻氏)

そうした課題を金融機関に相談する中で提案されたのが、次世代の幹部人材を育成する教育研修だった。複数の企業を検討した結果、「次世代幹部教育の実績が一番多かった」(藤巻氏)として、タナベコンサルティングと若手幹部候補研修をスタートさせることになった。